【本の要約①】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:老化と腸内細菌

あなたは、若々しく健康でいたいと思いませんか?

  • 健康や老化と「細菌」の関係とは?
  • 細菌が食べたもので、あなたの体ができている
  • 抗生物質は善玉菌も殺してしまうのか?

これらのことが事実だったとしたらどうでしょうか。健康や老化と細菌がどう関わっているのかと疑問に思うかもしれません。

わたしたちの体は、食べたものでできているのではなく、細菌が消化したものでできているのです。

わたしは、ファスティング(断食)や食事指導をしている栄養士です。本記事では、「死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事」という本を要約して紹介していきます。

興味深い内容が多いので、数記事に渡ってまとめていきます。ぜひ最後までお付き合いいただき、若々しく健康に生きる方法をマスターしていきましょう。

「はじめに」

死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事_本の表紙

「死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事」という本は、単に健康的な食事方法をお伝えするのではなく、人間と共に生きている「細菌」や「ミトコンドリア」の話にまで入り込んでいます。

自分の体は、細菌ありきで成り立っているという衝撃の話になりますので、一緒に学んでいきましょう。

「細菌」が人間を作った?

細菌が自分たちを死に追いやる酸素から逃れるため、動物の大腸へを移動をしました。驚きの話ですが、細菌が酸素避けて地球上で安全に暮らせるように、人間を含む動物を作ったのです。

さらに奇想天外な話になりますが、腸内細菌が、その親戚である細胞内の「ミトコンドリア」と密に連絡を取り合い、お互い様子を伝えあっているとしたらどうでしょうか。

ミトコンドリアとは、わたしたちが活動するエネルギーを作っている細胞の中にある重要な器官です。詳しくは本記事の後半で紹介します。

あなたの体は、細菌が棲む家です。あなたに何が起こるかは、細菌に何が起こるかにかかっています。

「あなた」は、実際には全体のほんの一部にすぎません。あなたの細胞の90%は、人間の細胞ではなく、体内や体の表面に存在する細菌、ウイルス、菌類、原生動物などの細胞です。

人間の体に共生するそれら微生物の集合体は一般的に「マイクロバイオーム」微生物叢(びせいぶつそう)と呼ばれます。

あなたの体は、本質的にはマイクロバイオーム(微生物叢)のための分譲マンションということです。

彼らに快適な住居を提供すれば、優良な住人となります。逆に、彼らが苦手とする食べ物を与えたり、土台を腐らせてしまえば、諦めて他の部分も腐らせてしまうのです。

わたしたち人間と微生物叢は、昔も今も変わらず「共生」しているのです。

人間の遺伝子は少ない

あなたを構成する遺伝子の99%は、細菌、ウイルス、原生動物の遺伝子で、人間の遺伝子ではありません。人間の遺伝子は少なく、チンパンジーやゴリラの遺伝子と実質上ほとんど同じです。

実は、トウモロコシには3万2000個の遺伝子があるが、人間にはわずか2万~2万2000個程度しかないとされています。

ミジンコは、あらゆる動物の中で最も多くの遺伝子を持っており、その数はトウモロコシに迫る3万1000個です。

人間の遺伝子は少ないのも関わらず、ここまで複雑になれたのは「細菌」のおかげです。

人間が進化したときに、細菌も変化しました。人間を人間たらしめたものは「遺伝子」ではなく「細菌」だったのです。

あなたの運命を決めるのは、「遺伝子」ではなく体内や皮膚の上で生きている何兆もの細菌なのです。細菌たちの生存は、あなたにかかっているし、あなたの生存も細菌たちにかかっています。

細菌によってわたしたちが構成されているようで驚きますよね。

「無菌マウス」の寿命は短い

では、細菌がいなければどうなるのでしょうか。無菌マウスと、通常マウスの実験をご紹介します。

生まれる際に無菌の状態になるように操作されたマウスは、腸内細菌などを持つ通常のマウスよりも寿命が短く、病気にかかりやすいことが明らかになっています。

これは、細菌からのコミュニケーションがないと、免疫システムが正常に発達しないために起こります。

腸内細菌は行動にも影響を与える

腸内細菌は、健康や年の取り方を左右するだけでなく、行動にも影響を与えています

細菌のゲノムは、ヒトの細胞のゲノムの10分の1にすぎないが、マイクロバイオーム(微生物叢)が800万個の独自の遺伝子を人体にもたらしていることを明らかにしました。

つまり、あなたの中にあるヒト遺伝子を2万2000個とすると、およそ360倍もの数となります。

腸内細菌は、瞬間的に情報処理やコミュニケーションを行い、わたしたちの思考や行動にまで影響を及ぼすことができるのです。

ジャンクフードが大好きな人や肉料理ばかり食べる人が、「長寿パラドックスプログラム」を数か月つづけると「サラダなどを自然と欲するようになった」と言います。

彼らは自分の行動に驚いていたが、その行動は腸内細菌に操られていたのです。わたしたちが自分の意思や好みで選択してきたと思っていたことが、実は細菌の影響があったということですね。

「健康寿命」

わたしたちは、「健康寿命」の大幅な減少を目の当たりにしています。健康寿命とは、人が完全な機能を維持できる期間のことを指します。

現在、多くの医療処置、薬剤、治療によって、寿命を延ばすことには長けていますが、ほとんどの人が50歳を境に健康状態が悪くなっています。

つまり、わたしたちは長生きしているが、より良く生きてはいないということです。大半の人が、人生の後半は着実に衰えて過ごすものだと思い込んでいます。

著者の患者さんたちは、腸内細菌を正しく扱うことで、劇的に寿命を延ばしてきました。多くの医師が手の施しようがないと諦める病気の回復も見てきたそうです。

こうした変化は、高度な血液検査でも確認できるし、患者たち本人も実感をしています。

「長寿パラドックスプログラム」

今回ご紹介する「長寿パラドックスプログラム」は、著者が受け持った患者さんで観察された結果と、腸内微生物叢に関する近年の膨大な研究の分析、世界の長寿社会に関する研究から作られています。

特定の野菜を食べたり、適度に運動したり、適切な睡眠時間をとったりするというお馴染みの要素もあれば、幹細胞を活性化させるために1年中冬だと体に思わせることや、夜に脳を「洗う」ために食事の間隔を空けることなど、新しい要素もあります。

あなたが何歳か、何歳だと感じているか、今まさに病気か健康かは関係がありません。

まさに、住宅を大改造するようなものです。あなたが適切な材料をもっていて、仕事を終わらせる意欲があれば、リノベーションはすぐにできます。

「長寿パラドックスプログラム」のプランに従えば、わずか数週間のうちに腸内の良き仲間たちが増え、不法占拠者が減ります。

そして、活力がみなぎったり、加齢性と言われている疾患の症状が出なくなったり、肌がきれいになったり、体重が減ったりするなどの体の変化を実感することでしょう。

腸内細菌のために、自分の体を最高級スイートルームに変身させましょう。

老ける理由や細菌との関りはいいから、その方法を知りたい!という方は、以下の記事に進んでください。

《参考》【本の要約⑧】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:長寿パラドックスプログラム



老化と腸内細菌

細菌が、わたしたちの体内でどのように機能しているのか、なぜ腸内細菌が健康や長寿に重要な役割を果たしているのかを詳しく見ていきましょう。

同時に、人が年をとる仕組みや理由について、誤った情報を解消していきます。

「遺伝子」よりも「腸内細菌」

自分の健康状態や、老化のスピードを遺伝子のせいだと考えている人も多いでしょう。両親と同じように肥満になって、病気にもなると思っていませんか。

実は、それは大間違いです。同じDNAを持っているから両親の健康状態と似ているのではなく、同じような生活習慣を持ち、同じような環境で生活していたからです。

生活習慣や環境が似ていると、ホロビオーム(腸内微生物叢)を驚くほど似た方法で形成しているのです。

「ネイチャー」の分析

2018年「ネイチャー」誌に掲載された統計分析によると、遺伝子よりも個人の腸内細菌の構成の方が、血糖値や肥満など多くの健康状態の予測因子となりうるそうです。

遺伝的な関係がなくても、同じ家庭で一緒に暮らす人々の腸内微生物叢は驚くほど似ます。

「中国」での研究

細菌の中国での研究では、3歳~100歳以上の健康な中国人被験者1000人以上から腸内細菌を採取し、分析をしたものがあります。

その結果、健康な腸は100歳をこえて生きられる人の重要な指標であると分かりました。

100歳以上の被験者の腸内細菌は、70歳も若い人の腸内細菌と非常によく似ていました。つまり百寿者は、30歳の腸内細菌を持っていたのです。

健康に役立つ「腸内細菌」

一方、2016年に行われた画期的な研究では、105歳~109歳の健康な人に多く存在する特定の種類の細菌「ルミノコッカス」「ラクノスピラ」「バクテロイデス」などの腸内細菌を初めて特定することができました。

こうした健康の維持を助ける特定の細菌群は、ほとんどの人は年をとるにつれて失っていきます。

ところが、105歳まで生きた人は、若さを保つためにこうした特定の腸内細菌を保持しているのです。

「腸内環境」が健康を左右する

「ラット」の事例をご紹介します。肥満のラットの糞を痩せたラットに食べさせると、痩せたラットは太りました

逆もしかりで、痩せたラットの糞を食べると、太ったラットは痩せます。

人間の例もあります。1930年代、重度のうつ状態のある精神疾患者に下剤を投与して大腸をきれいにした後、うつ状態でない人の大便を浣腸しました。その結果、患者の気分は著しく改善されたそうです。

腸内環境を整えることで、痩せて健康になり、さらには死に至る病からも解放されるというわけです。

細菌が食べたもので体ができる

あなたが知らないところで、マイクロバイオーム(微生物叢)の住人は、日夜忙しく働いています。免疫系や神経系、ホルモン系の重要な側面を24時間体制で制御しています。

腸内細菌の最も重要な役割は、消化器系のサポートです。細菌は、食べたものを消化し、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、ホルモン、タンパク質などを産生し、体内で必要とされる場所に運ぶ役割を担っています。

他にも、酵母やカンジタ菌を抑制したり、その他、有害な細菌の増殖を防ぐために戦ったりもします。

また、どの食品や物質が有益、少なくとも無害で、中に入れるべきかどうか、入れないようにするべきか、免疫システムを教育しています。

マイクロバイオーム(微生物叢)が消化にどれほどの重要な役割を果たしているのか、長年わかっていませんでした。

今では、細菌が食べ物を処理できなければ、どんなに体にいい食べ物であっても、その食べ物に含まれる栄養や情報の恩恵を受けられないことが分かっています。これは、すべての動物に言えることです。

2016年の研究では、「栄養分の吸収はマイクロバイオームに依存する」と結論付けられています。

「細菌が消化したもの」

著者の診療所では、一部のビタミンやミネラル、タンパク質が不足している患者の多くを診てきたきたそうです。

ですが、それは患者がそれらを摂取していなからではなく、マイクロバイオーム(微生物叢)がそれらを産生したり、吸収したりしていないからでした。

患者の腸内から悪玉菌を追い出し、周囲を活性化できるように最近に働きかけると、驚くことに栄養不足は解消されました。

つまり、あなた自身は、食べたもので作られるのではなく、細菌が消化したもので作られているのです。

どんなに良い栄養を含むものを食べたとしても腸内細菌が消化できなければ、わたしたちの体には吸収されないということです。

「ミトコンドリア」によって細胞が成長

細菌とミトコンドリアには、古代の細菌から進化したという共通点があります。

細菌が食べたものを消化するのに対し、ミトコンドリアはエネルギーを産生するために栄養素を分解(消化)します。これは、細胞の消化システムと考えることができます。

「ミトコンドリア」は母から受け継がれる

人間は、細胞とミトコンドリアの両方を母親から受け継いでいます。ミトコンドリアはすべての細胞の中に存在する細菌です。

ミトコンドリアには独自のミトコンドリアDNAがあり、細胞核にある他のDNAとは別に分裂しています。

すべてのミトコンドリアのDNAは、女性の卵子を介して母から子へと伝えられます。つまり、ミトコンドリアとそのDNAはすべて雌性です。

同じように、あなたは産道を通って、母の膣内の細菌に晒されたことで、腸内微生物叢には母から細菌を植え付けられたことになります。

母から受け継いだ「細菌」と「ミトコンドリア」は、同じ母から生まれた姉妹のようなものだと捉えています。細菌は、棲みかの一角で起きていることを姉妹のミトコンドリアに報告し、ミトコンドリアはその報告を受けて、いくつかの行動を起こします。

ミトコンドリアは細胞にエネルギーを供給するだけでなく、細胞の信号伝達、細胞の分化、細胞の死や成長などを司っています。

つまり、細胞が急激に成長するのか、ゆっくり成長するのか、あるいは成長しないのかは、ミトコンドリアが決めているのです。

「老化プロセス」

ミトコンドリアは、老化のプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

アラバマ大学バーミンガム校で行われた研究では、ミトコンドリアの機能障害を引き起こす染色体変異をマウスに起こさせたところ、数週間のうちに皮膚がしわくちゃになり、目に見えるほど広範囲の毛が抜けてしまったそうです。

その後、ミトコンドリアの機能を回復させると、なめらかな皮膚とふわふわした毛並みに戻りました。

さらに、新しい研究では、ミトコンドリアの損傷とその修復は、ミトコンドリアが腸内に棲む姉妹である「細菌」から受け取るメッセージに大きく依存していることが示唆されています。

細胞内のコミュニケーション

細胞内のコミュニケーションはすべて細胞核で行われていると考えられていたが、実際には、細胞から核を取り除いても、細胞は正常に機能し、情報に反応できます。

なぜなら、コミュニケーションは細胞核ではなく、細胞膜やミトコンドリア膜で行われているからです。

2017年に行われたセンチュウの研究によって、微生物叢の構成が宿主生物の老化に影響を与える可能性を示しています。

わたしたちのミトコンドリアは、腸内に棲む細菌からメッセージを受け取ると、ミトコンドリアの数を増やして、その機能を向上させるという反応をします。この過程は「ホルミシス」と呼ばれます。

「長寿パラドックスプログラム」においては、長寿のメッセージを姉妹の「ミトコンドリア」に送るような細菌を育てることが重要な要素となります。

あらゆる側面での影響

細菌は、人間の健康と幸福のあらゆる側面に影響を与えます。細菌たちが満足していれば、ミトコンドリアにそのことを伝え、セロトニンなどの気分を良くするホルモンを分泌してくれます。

さらに、動脈を傷つけないように守ってくれ、空腹になったりストレスを感じたりすると、そのことについて警告を発します。

しかし、善玉菌叢を追い出すようなことをしたり、悪玉菌を招き入れすぎたりすると、状況は一変します。

悪玉菌は、自分のためだけに行動します。細菌とミトコンドリアの姉妹間コミュニケーションシステムを乗っ取ります。

すると、彼らが必要とする食べ物、つまり糖質や脂質、ジャンクフードを食べたくなったり、その結果として太りやすく、炎症を起こしやすく、体調を崩しやすく、疲れやすくなり、様々な病気にかかりやすくなります。

老化しない動物

ハダカデバネズミは、その極端かと驚くほどの長寿で科学界の注目を集めています。小さく、醜く、毛のないこのげっ歯類は、老衰で死ぬことはないと考えられています。

もちろん不死身ではないが、年齢のせいではなくランダムに死ぬようです。一見すると、彼らの長寿命は不可解であり、奇妙なものです。

他にも不思議なことがたくさんあります。ハダカデバネズミは18分間も無酸素状態で生きることができ、がんになることもほとんどありません。同サイズの他のげっ歯類と比較すると、平均10~15倍も長生きします。

彼らはどうやって老化のプロセスを回避しているのか?その答えは、彼らが何を食べているか、もっと正確に言えば、細菌に何を与えているかにあると考えられています。

ハダカデバネズミは巨大な地下トンネルの中で生活しており、主に消化の難しい植物の根や塊茎(かいけい)を食べます。

彼らのマイクロバイオーム(微生物叢)はその消化を助け、その結果、短命な穀物食のネズミに比べて寿命を大幅に伸ばす化合物を生成します。

ハダカデバネズミが18分間も無酸素状態でいられるのも、その化合物をミトコンドリアの餌として利用しているからだと考えられます。

ハダカデバネズミは、ヒアルロン酸を非常に多く体に備えており、このおかげで体がとても柔軟になって地下トンネルを移動しやすくなると考えられています。

そのヒアルロン酸は、食べている塊茎から得ています。事実、長生きする人の多くは、サツマイモやタロイモを中心とした食生活で、多量のヒアルロン酸を摂取しています。

ハダカデバネズミの糞

2017年、イタリア、ドイツ、エチオピアから集まった研究グループは、ハダカデバネズミの糞を調べ、その腸内細菌の構成と多様性を人間や他のげっ歯類のそれと比較しました。

その結果、ハダカデバネズミの腸内微生物叢は、人間とほぼ同じで、野生マウスの腸内微生物叢よりもはるかの多様であることが分かりました。

また、この研究に使われたハダカデバネズミが、105歳以上の超長寿の人間にも見られる特定の細菌群モジバクテリアシエを豊富に持っていたことも分かっています。

繰り返しになりますが、超高齢のハダカデバネズミと超高齢の人間は、同じ種類の腸内細菌を持っているのです。



「レクチン」が腸内細菌を傷つける

およそ4000万年前、当時の人間は木の上にすんでいました。主に樹木の葉や、二葉の植物(双子葉植物)、その果実などを食べていました。

もとから存在していた草食動物のマイクロバイオーム(微生物叢)は、草やその種子などの単子葉植物を食べていました。

人間の腸とその中にいる細菌は、草食動物とはまったく異なる進化を遂げたため、わたしたちの食生活の大部分を占める「レクチン」と呼ばれるタンパク質を含む植物化合物に、それぞれ独自の耐性を持っているのです。

4000万年の間に、双子葉植物をやすやすと消化できる細菌が、ある世代から次の世代へと受け継がれていきました。

実は、人間の細菌にとって厄介な存在は、単子葉植物の含まれる化合物「レクチン」です。

「レクチン」とは、植物が食べられるのを防ぐために作る「粘着性のあるタンパク質」の一種です。

あなたと細菌も同じで、植物も長生きして自分のDNAを次の世代に伝えたいと思っています。そこで、植物は生存戦略の一環として「レクチン」を生産しています。

人間が存在せず、注意すべき捕食は主に小さな昆虫だけだった頃、植物は「レクチン」で虫を麻痺させていました。

小さな昆虫に比べれば、人間ははるかに大きくて強いです。そして粘液などの防御システムを備えています。

そのため、「レクチン」を食べれば食べるほど、腸内環境は悪化していきます。腸内環境が悪くなれば、レクチンは腸内細菌の棲みかをより荒廃(こうはい)させていきます。

その結果として、肥満や疲労感、体の痛みや病気が引き起こされます。

マウスやラット

穀物を食べるマウスやラットを見れば、単子葉植物やその種子を食べ続けてきた結果、穀物に含まれる「レクチン」をうまく処理できるように細菌が進化してきたことが良く分かります。

レクチンやその他の穀物タンパク質を分解するプロテアーゼという酵素は、人間に比べてげっ歯類の腸内には数百倍も多く存在しています。

げっ歯類のように、特定の植物レクチンを食べ続けてきた動物ほど、細菌がレクチンを分解する方法を身に着けてきたと考えられます。

人間の細菌や酵素は、草食動物のようなメカニズムを持っていません。しかし、穀物をはじめとする単子葉植物を栽培するようになる約1万年前までは問題がなかったのです。

また、人間は自然界にはないものを食べるようになりました。たとえば、遺伝子組み換え食品(GMO)や、細菌が消化できない食べものや薬で育った動物の肉や乳製品などです。

この半世紀ほどで、人間の食生活は歴史上かつてないほど急速に変化しました。今では、葉野菜や他の野菜類のような未調理の食品よりも、小麦やトウモロコシなどの穀物や大豆を多く食べるようになりました。しかも、多くの場合は加工食品の形です。

今まで食べてこなかったものを食べると、細菌が分解する方法を身に着けるまでかなりの時間がかかるということです。わたしたちの体調は細菌の能力にかかっています。

有害物質の脅威

わたしたちの食品システムは、除草剤や殺生物剤、薬剤、殺虫剤、食品添加物などの猛威に晒されてきました。

また、化粧品などのパーソナルケア製品、工場で生産された家具、家庭用洗剤などに含まれる化学物質も生活を脅かしています。こうした有害物質に晒されることで、人間のホロビオームは困難に陥りました。

わたしたちが食べている健康的な野菜も、土壌細菌の助けを借りて育てられている訳ではありません。

糖尿病やメタボリックシンドロームの予防に効果的な亜鉛やマグネシウムの土壌中の濃度も大幅に低下しています。

こうした変化に細菌がすぐに追いつき、適応することができていません。化学物質の過剰摂取に加え、食生活の大幅な変化により、細菌は次々と逃げ出し、悪者の支配を許すようになってしまいました。

抗生物質は善玉菌も殺してしまう

この50~60年の間に、多くの新薬や医療技術の進歩を目の当たりにしてきました。こうした発見の多くは、人々の長寿に役立っているが、その代償としてマイクロバイオーム(微生物叢)が犠牲になっています。

人間の細菌にとって、こういった抗生物質は、住居が爆発するのと同じことです。

抗生物質は悪者に狙いを定めるのではなく、その場の全てを一掃します。その結果、悪者も殺されるが、善者もほとんど殺されてしまい、体内の細菌群の微妙なバランスが崩れてしまいます。

抗生物質の影響

本当に必要なときは、抗生物質があってよかったと感じますが、あまりにも普及してしまったために、医師は必要のないときでも処方する上、抗生物質では治らないウイルスに感染している場合でも処方するようになってしまいました。

広範囲抗菌スペクトル抗生物質を飲むたびに、腸内の微生物叢は最大で2年間も影響を受けます

これは、おおげさに言っているではありません。研究によると、抗生物質を服用するたびに、後にクローン病、糖尿病、肥満、喘息などを発症する可能性が高くなることが分かっています。

間接的な摂取

たとえ、抗生物質を処方されたことがなくても、細菌を大量に死滅させるほどの抗生物質を摂取した可能性があります。

それは、肉や牛乳などの動物性食品から摂取している場合です。

慣習的に飼育されている家畜は、病気を予防して、食肉用に早く大きく太らせるために、抗生物質が投与されているのです。その肉を食べれば人間も間接的に摂取することになります。

実は動物性食品を食べないヴィーガンの人ですら、たくさんに抗生物質を摂取している可能性があります。

《参考》【ヴィーガンとは不健康?】環境問題・飢餓・動物保護など社会問題

「グリホサート」

除草剤「ラウンドアップ」の主成分であるグリホサートは、農業生化学メーカー大手のモンサント社(現バイエル社)は抗生物質として特許を取得しており、ほぼすべての遺伝子組み換え作物や多くの従来の農作物に散布されています。

《参考》【遺伝子組み換え食品とは】メリット・デメリット・任意表示制度の改正

2018年8月に、末期がんの原告の男性が「がんになった原因は、主成分がグリホサートの除草剤『ラウンドアップ』によるものだ」と訴えました。詳しくは以下の記事でご覧いただけます。

《参考》【世界と逆行】除草剤グリホサートの危険性とは?基準値や人体の影響

そして、グリホサートは処方された抗生物質を飲んだときと同じように腸壁を壊し、マイクロバイオーム(微生物叢)を荒廃させてしまいます。

グリホサートは、穀物や豆類を食べて育った動物の肉やミルクだけでなく、人間が食べる作物やそれを原料とする製品にも含まれています。

2015年、世界保健機関(WHO)のがん研究機関は、グリホサートを「ヒトに対する発がん性がある可能性が高い」と宣言しました。

そこで、米国有機消費者協会(OCA)とフィードザワールドプロジェクト(現デトックスプロジェクト)が協力して、一般の人々に尿中のグリホサート量を測定する機会を提供しました。

すると、はじめに検体を提出した100人以上のグループは、なんと93%の尿検体にグリホサートの陽性反応が出たのです。

続いて、2018年にインディアナ大学ろカルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者が協力して、71人の妊娠中の女性の尿を検査するという史上初の研究を行いました。

その結果、尿サンプルの93%にグリホサートが検出可能なレベルで見つかりました

妊娠中のグリホサート曝露が、妊娠期間の短縮や、子どもの生涯にわたる健康被害と関連していることを考えると、実に憂慮すべきことです。

また、グリホサートを摂取すると、細菌を殺すだけでなく、トリプトファンやフェニルアラニンの産生能力を阻害します。

フェニルアラニンとは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンや甲状腺ホルモンを構成する必須アミノ酸です。

このような理由で「長寿パラドックスプログラム」で従来の動物性食品を避けるのは、こうした理由です。穀物や豆類の栽培には多量のグリホサートが使われているため、多量のレクチンに加えグリホサートが含まれ、2重苦となっています。

食べ物以外の影響

プラスチックや香り付きの化粧品、防腐剤、日焼け止めなど、ほとんどのものにエストロゲン様物質が含まれています。

こういった化学物質への曝露は、肥満や糖尿病、その他の代謝性疾患、生殖障害、乳がんや卵巣がんなどの女性ホルモン感受性がん、甲状腺障害、脳や神経内分泌系の発達障害などと関連していると言われます。

こうした病気や問題の多くは「正常な」加齢と結び付けて考えられているが、実際にはまったく正常とは言えません。

手の除菌用ローションや石けん、デオドラント製品、歯磨き粉など、無数のパーソナルケア製品に含まれるトリクロサンなど抗菌性化学物質は細菌を殺し、前がん細胞を刺激して増殖させ続けることが分かっています。

「ビタミンD」低下

食品に含まれるグリホサートや多くのパーソナルケア製品に含まれる化学物質には、もうひとつ厄介な問題があります。

グリホサートは、肝臓でビタミンDを活性型に変換する能力を低下させます。つまり、カルシウムを吸収して、健康な骨の成長を促すという役割を果たせなくなります。

著者の患者の約80%は、血液中のビタミンD濃度が低く、特に前立腺がんの男性はビタミンD濃度が低いことが分かっています。

「砂糖」も細菌の敵

細菌を増やすには、「多糖類」と呼ばれる複数結合した糖質分子が必要だが、悪玉菌は人間が毎日食べる「単糖」を餌にして増殖します。健康と長寿にとって、砂糖が絶対的な災いとなる主な理由です。

また、砂糖の代用品もおすすめできません。人工甘味料は、減量を助けると思われているが、逆の効果をもたらします。

スクラロース、サッカリン、アスパルテームなどの栄養価の低い人工甘味料は、腸にいる善玉菌を殺し、悪玉菌を増殖させます。

《参考》【人工甘味料とは】種類一覧と危険性、メリット・デメリットのご紹介

なんと、デューク大学の研究では、人工甘味料のスプレンダ1包で正常な腸内フローラ(腸内細菌叢)の50%が死滅するという結果が出ています。

《参考》【人工甘味料】摂取量が多い人は、がんと診断されるリスクが13%高い

甘い物を食べすぎると、腸内の善玉菌は餓死し、悪玉菌は長生きして成長・増殖します。果物の糖である果糖でさえ、ミトコンドリアの毒になることが分かっています。

これは、わたしからの情報ですが、果物は生の酵素を摂れる食材でもあります。「酵素栄養学」の観点からするとおすすめされている食材でもあります。

食べ過ぎは良くないかもしれませんが、バランスが大切かと思います。少なくとも人工甘味料や添加物たっぷりの加工食品を食べるよりは、フルーツを食べる方が健康的です。

《参考》【本の要約③】朝だけ断食で9割の不調が消える!酵素の節約・補い方

さいごに

ここまで「死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事」という本の基礎として、老化や健康に与える腸内細菌の重要性をまとめてきました。

腸内細菌とミトコンドリアは、わたしたちの指示のもとではなく、独自に活動しています。わたしたちは、それら姉妹が快適に暮らせるように環境を整えるマンションのオーナーだと思ってください。

わたしたちの健康や気分、思考までもが腸内細菌の影響を受けますので、自分の体は自分の考えだけではコントロールできないということを自覚しましょう。ちょっと驚きの話なのでまだピンとこないかもしれませんね。

まだかなりの序盤の内容となりますので、続き「要約② 腸で病気予防」を見ていきましょう。

《参考》【本の要約②】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:腸で病気予防

以下の記事では、要約①~⑨までの概要をまとめています。もくじ代わりにご覧いただき、気になる項目から読んでいただくのもおすすめです。

《参考》【本の要約】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:まとめ(目次)

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