あなたは、人工甘味料が入った飲食物や、ゼロカロリーの炭酸飲料などを飲んだりしますか?
- 人工甘味料とは?
- 人工甘味料は、がんリスクを上げる?
- どんな危険があるの?
わたしは、オーガニック食品やコスメが好きな栄養士です。本記事では「人工甘味料とがんリスク」についてご説明していきます。
主な情報源は、2022年3月24日に『PLOS MEDICINE』に掲載された記事です。それに付随して色々と調べた内容や、わたしの見解をまとめました。
【人工甘味料】とは
人工甘味料とは、人工的に作られた甘味料のことで、自然界には存在しない物質です。人工甘味料は、糖質系と非糖質系のものがあり、一般的に危険性が心配されている人工甘味料は、非糖質系の合成甘味料です。
かつては高級品だった砂糖の代わりに使用されていましたが、現在ではカロリー低減を目的として主に清涼飲料や菓子類に使われています。
人工甘味料は、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用される「食品添加物」であり、安全性と有効性が化学的に評価されて厚生労働大臣によって認められています。
人工甘味料は、少量で甘みを付けることができるので、カロリー制限をしている人やダイエットには有効であるといえます。しかし、糖質ゼロだからといって過剰に摂取すると、糖尿病や肥満の原因になるので注意が必要です。
詳しい分類や種類などについては別の記事でご紹介しています。
《参考記事》【人工甘味料とは】種類一覧と危険性、メリット・デメリットのご紹介
主な種類
日本で使用されている主な人工甘味料3種類は、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースです。
アスパルテーム | アステルパームは、糖質ゼロなどの飲料に使われている人工甘味料です。カロリーは砂糖とほぼ変わらないのですが、甘みは約200倍といわれ、糖質ゼロの飲料がしっかりした甘みを感じさせるのは、このアステルパームの特徴ともいえるでしょう。 |
アセスルファムK | アセスルファムKも、アステルパーム同様、砂糖の200倍の甘みを持つ甘味料です。砂糖と同じカロリーを持つアステルパームに比べると、アセスルファムKはカロリーがゼロですから、いろいろな低カロリー食品にも使われています。 |
スクラロース | スクラロースは、人工甘味料の中ではかなり甘みが強いといわれ、砂糖の600倍ともいわれています。動物実験では、腸内細菌を殺してしまうという研究結果もあるので、過剰な摂取はやはり避けた方が無難です。 |
その他の人工甘味料
他には、日本で使用許可が出ている人工甘味料として、サッカリン、ネオテーム、アドバンテームなどがあります。
サッカリンは砂糖の500倍の甘さがあり、濃度が薄くなっても甘みが残ります。人工甘味料の中では最も古いと言われており、第一次世界大戦で砂糖が不足した時に代替品として世界に知られるようになりました。今では他の人工甘味料が主流となっているため使用される頻度は少なくなっていますが、歯磨き粉にはサッカリンが含まれていることが多いです。
血糖値への影響
人工甘味料にはブドウ糖が使われていないため、摂取後の血糖値が急上昇することはありません。摂取しても血糖値が上がらないことで、満腹感がなく、食欲が増してしまうといった結果につながる可能性も指摘されています。
またアセスルファムKは若干の苦みがあるものの、アスパルテームと同じような甘さを備え、グラムあたりのカロリーは驚異の「0」となっており、血糖値にも影響しないと言われています。虫歯の原因にもなりません。
安全性への懸念
人工甘味料は一般に天然に存在しない成分であり、安全性を疑う声は根強く存在していました。
特に人工甘味料が、がんの原因になるとする研究結果がたびたび報告されては公の機関から否定されるといった事例が続いており、人々の不信感を煽る原因にもなっていました。
他にも、味覚障害、糖尿病、依存症などのリスクについても研究結果が出ています。詳しくは下記の記事でご覧ください。
《参考記事》【人工甘味料とは】種類一覧と危険性、メリット・デメリットのご紹介
【人工甘味料】がんリスクを上げる
これまで長年にわたって、人工甘味料が発がんを促し得ることが基礎研究で示されています。これには、人工甘味料が体内の慢性的な炎症をもたらしたり、DNAの損傷を引き起こしたり、腸内細菌叢に影響を与えたりすることが関係すると考えられています。
また、ダイエット飲料を日常的に飲んでいる人たちでは、がんリスクが比較的高いことも一部の研究で示されています。
EUでは、飲食物に使われるあらゆる人工甘味料は事前に安全性評価を受け、合格しなければなりません。同様に、アメリカでは甘味が強くエネルギーが少ない「高甘味度甘味料」は食品添加物として使われる前にアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けなければならないことになっています。
人工甘味料の摂取量が多い人で、がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが新たな研究で示されました。詳しくご説明していきます。
人工甘味料の消費量とがんリスクの関連性の調査
今回の研究は人工甘味料が、がんを引き起こすかどうかを調べたものではなく、人工甘味料の消費量とがんリスクの関連性を調査したものだからです。
同じような内容に聞こえますが、実は大きな違いがあります。人工甘味料をがんの直接的な原因であると断定するには、人工甘味料が細胞に与える毒性を証明しなければなりません。
しかし今回の研究では人工甘味料の消費量とがんリスクの関連性(相関)を示しているのみであり、原因(因果関係)を証明しているものではありません。
太っているほど人工甘味料の摂取が多い
また人工甘味料を消費している人々の生活習慣を調べたところ「女性」「若い」「喫煙者」「運動量が少ない」「糖尿病にかかっている」という偏った特性を持つ人々の割合が大きくなっていました。
パーティー会場でコーラを注文する場合、太っていて糖尿病の人やダイエットに悩む若い女性の場合、人工甘味料入りのコーラを頼む可能性が高く、健康な人の場合は気にせず砂糖入りの普通のコーラを頼むケースが多くなります。
同じような選択はパーティー会場だけでなく日常生活全体にも当てはまるはずです。興味深いことに太っているひとほど人工甘味料の摂取が多いそうです。
喫煙者であり運動量が少なく糖尿病にかかっている人の場合、肥満関連のがんや肺がんになる確率が高くなることが知られています。
研究者たちは「女性」「若い」「喫煙者」「運動量が少ない」「糖尿病にかかっている」といった「上記の要素を統計的に調整した場合でも、人工甘味料の消費とがんリスクの関係が存在していた」と述べていますが同時に「全ての要素が調整できたわけではない」とも述べ、人工甘味料の消費量と生活習慣の関連性を認めています。
ただ、さまざまな人工甘味料の摂取量とがんリスクを直接比較した研究(コホート研究)はこれまでにほとんど存在しておらず、今回の試みが第一段階の研究です。今後、詳しいことは明らかにされていくでしょう。
現在、日本で流通している人工甘味料には目立った健康上の問題はないとされています。しかし、これは全ての人が等しく健康に影響を受けないことを示すものではありませんし、今後なんらかの影響が明らかになってくる可能性も秘めています。
研究結果の詳細
2022年3月24日に「PLOS Medicine」掲載された、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のCharlotte Debras氏らに研究チームによるものです。 Debras氏は、ソルボンヌ・パリ・ノール大学の栄養学者です。
今回の研究は、10万2,865人のフランスの成人(試験開始時の平均年齢42.2±14.5歳、女性78.5%)を対象にしたものです。
Debras氏らは、対象者を中央値で7.8年間追跡し、人工甘味料〔アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース〕の摂取量とがんリスクとの関連を検討しました。人工甘味料の摂取は24時間の食物摂取記録により評価しました。
その結果、人工甘味料の摂取量が多い人(摂取量が中央値より多い)では人工甘味料を摂取していない人と比べて、がんと診断されるリスクが13%高いことが示された。
人工甘味料の種類別に見ると、アスパルテームで15%、アセスルファムKで13%のリスク上昇だった。がん種に着目すると、乳がんリスクはアスパルテームの摂取量が多い人で22%上昇し、大腸がんなどの肥満関連のがんリスクは、全ての人工甘味料の摂取量が多い人で13%、アスパルテームの摂取量が多い人で15%上昇していた。
Debras氏は、「この大規模研究では、アスパルテームやアセスルファムKなどの世界中で多くの食品や飲料に使用されている人工甘味料が、がんリスクの上昇に関連していることが示された」と話しています。
ただしDebras氏は、「アスパルテームやアセスルファムKとがんリスクとの間に関連が認められたものの、この結果は、単にこれらの人工甘味料が最もよく消費されている甘味料であることを表しているに過ぎない可能性がある」とも指摘しています。
つまり、アスパルテームやアセスルファムKが多く使用されている人工甘味料なので、そのような結果になったわけで、他の人工甘味料が安心ということではありません。
いずれの人工甘味料に関しても、直接がんの発症をもたらすことは証明されていないとしています。
カロリーコントロール協議会の見解
今回のDebras氏らの報告を受け、甘味料の業界団体であるカロリーコントロール協議会は、声明文を発表しました。
「甘味料が、がんの原因となることを示した信頼できるエビデンスはない」とした上で、「低カロリーあるいはカロリーが含まれない甘味料は安全であり、体重管理や砂糖の摂取量の抑制、血糖管理において効果的なツールになる」とする見解を示しました。
米国がん協会(ACS)の見解
米国がん協会(ACS)のシニア・サイエンティフィック・ディレクターのMarji McCullough氏は、この研究結果の重要性を主張しました。公衆衛生上、関心の高い領域について検討した研究であり、人々が摂取した砂糖の代用品の種類と量について徹底的な評価が行われた点を称賛しています。
同氏は、「健康上の観点から、果物や野菜、食物繊維の豊富な穀物などの未加工の食品を積極的に摂取し、シュガーフリーか否かにかかわらず、加工食品の摂取を控えるのがベストだ」と助言しています。
がん専門栄養士の見解
米マーシー・ヘルス・ラックスがんセンターがん専門栄養士のAmy Bragagnini氏も、「食事の一つの要素を、がんのような複雑な疾患に結び付けるのは難しい。大事なのは、全体的な食事の質だ」との見解を示しています。
さらに同氏は、何かを食べる際には、本当に食べたいものは何か、どのくらいの量が必要か、などについてもっと考えるべきだと主張しています。
その上で同氏は、「通常のアイスクリームを少しだけ食べて満足できるのなら、その方がシュガーフリーのクッキーの箱を半分食べてしまうよりも望ましい選択だろう」と話しています。(HealthDay News 2022年3月25日)
《参照》@DIME
《参照》ナゾロジー
【まとめ】人工甘味料とがんリスク
人工甘味料は、低カロリーで甘さを感じることができる便利な食品添加物です。
しかし、摂取しすぎると、糖尿病や肥満の原因になったり、腸内細菌を殺してしまう恐れもあるようなので注意が必要です。
また、今回の研究結果で「人工甘味料の摂取量が多い人は、がんと診断される人が多い」ということが分かりました。これは、人工甘味料が直接的にがんを誘発していることを示している訳ではありません。
その他にも、味覚障害やメタボリックシンドローム、糖尿病などのリスクについてもご紹介している記事もあります。
《参考記事》【人工甘味料とは】種類一覧と危険性、メリット・デメリットのご紹介
人工甘味料に限ったことではありませんが、食品添加物や、同じ食品をたくさん摂り続けることは体に良いとは思えませんね。
身体に良い物でも過剰摂取すればマイナス効果が出てくる可能性も秘めています。何事もバランスだと考えています。
オーガニックや無添加の食品をまとめてありますので、良ければ参考にご覧ください。
《オーガニック情報館》オーガニックや無添加の商品一覧