あなたは、「食品添加物」が使用されている実態をご存知ですか。
- ハンバーグ弁当に使われる食品添加物の例
- 激安弁当やお惣菜がつくれる理由
- マヨネーズやケチャップなど、もどき調味料の実態
わたしは、オーガニック食品が好きな栄養士です。ファスティング指導や、食事アドバイスを行っています。
本記事では「食品の裏側」の続編、「食品の裏側2実態編」という著書の内容を要約していきます。
まずは、本記事でハンバーグ弁当に特化して解説していきます。
はじめに
2005年に出版された「食品の裏側」が60万部突破のロングセラーとなり、2014年に「食品の裏側2 実態編」が出ました。本記事は、「食品の裏側2 実態編」の要約です。
「食品の裏側」を要約した記事もありますが、こちらは幅広く全体的な捉え方ができます。ミートボールを良く食べる方はこちらの記事からご覧いただくと良いでしょう。
《参考》【本の要約】食品の裏側(食品添加物の神様、ミートボール事件の内容)
2005年から日本の食品添加事情は変わったかというと、残念ながら全く変わっていないどころか、実態はどんどん深刻化しています。
わたしたちは日常の食生活で、知らないうちにどれだけ大量の添加物を口にし、大量の塩分、糖分、油分をとっているかということを伝えます。
表示を見ても、そこには書かれていない隠れた部分で添加物が使われている現実があります。
添加物は、わたしたちの舌、そして価値観をおかしくさせます。その圧倒的な魔法のような力をご紹介していきます。
添加物は危険?安全?
添加物を推奨される方は「この程度の量をとっても体には問題ない」と言いますが、わたしたちが直面する化学物質は添加物だけではありません。
添加物は「安全だ」「危険だ」という議論がされていますが、ハッキリしないのであれば、できるだけ摂らないに越したことはないと思います。
そのためには、まず添加物がどのように使われているか、少しでも知識を持つことが大切です。
添加物は食い止められる
わたしたちの日常生活を見渡せば、殺虫剤、芳香剤、農薬、化粧品など、実に多くの化学物質に囲まれていることに気づかされます。
こうした化学物質は、生活を便利にしてくれた反面、時と場合によっては健康や環境に悪影響を与えることもあります。
食品添加物は、自分の努力次第で食い止めることができます。
たとえば、放射能が不安だからと言って、みんなが原発のないところに引っ越せませんし、PM2.5が中国から飛んできたからと言って空気を取り替えることはできません。
であれば、せめて自分の力でリスクを減らせるものは減らそうではありませんか。
添加物を自分で食べる・食べないは自分で選択できますね。
「添加物をとっているのか意識したことがないから分からない」という方もいるでしょう。まずは、実態を把握して、選択することができるようになっていただければと思います。
大量の添加物が使われる理由
これから、様々な食品に含まれる隠れた添加物を解説していくことになりますが、先に「なぜこんなにも大量の添加物が使われているのか」という理由をご覧いただけると、その後の話が理解しやすいと思います。
《添加物を使用する理由》
- 「安い」増量、置き換え、フェイク・もどき食品で単価が下がる
- 「簡単」調理の面倒さを解決
- 「便利」保存性と今すぐほしいという欲求を同時に満たす
- 「きれい」見た目を美しくする
- 「おいしい」濃厚な味をつくる
特に、安く仕上げるために添加物が大活躍します。
激安ハンバーグ弁当の裏側
では、本題の「ハンバーグ弁当」についてです。ハンバーグ弁当だけをやり玉にあげたい訳ではありませんが、手作りのお弁当と比較しやすいので取り上げます。
激安ハンバーグ弁当の裏側の一例をご紹介していきます。
《ハンバーグ弁当のラベル表示》
市販のハンバーグ弁当のラベルです。このハンバーグ弁当の内容は、ハンバーグ、スパゲティ、ポテトサラダ、福神漬、白ごはんというものです。
このハンバーグ弁当の食材に実際に使われている添加物はこちらです。
《ハンバーグ弁当の食材に表示されている添加物》
実際に使われている添加物に比べて、「原材料名」で表示されている添加物は明らかに少ないのがご覧いただけると思います。
添加物の表示が少ない理由
このハンバーグ弁当は安く作るために、ハンバーグ・付け合わせのスパゲティ・福神漬などを、それぞれ加工食品会社から仕入れてきて、容器に詰め合わせただけのものです。
仕入れの段階では、それぞれの食品ごとに添加物名が全部書かれているのですが、重複が多く、結果として表示される食品添加物は減るのです。
ハンバーグ弁当の「原材料名」を見ただけでは、実態が読み取れません。
後ほど出てきますが、一括表示やグループ名の表示などもあり省略されているパターンもあります。一括表示などのルールについては別記事でまとめています。
《参考》【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など
手作り弁当
ご家庭で、上記と同じハンバーグ弁当をつくる際、加工用に使われる添加物といえば、ポテトサラダのマヨネーズに入っている化学調味料くらいでしょう。
市販のハンバーグ弁当は、安くて、きれいで、おいしい、そして日持ちもして手間いらずです。こんな便利なものはありませんね。
使用される添加物
ハンバーグ弁当に使われている添加物を各メニューごとにご紹介していきます。
- 「ハンバーグ」
- 「デミグラスソース」
- 「ナポリタン風スパゲティ」
- 「ポテトサラダ」
- 「福神漬」
- 「キャベツの千切り」
- 「白ごはん」
①「ハンバーグ」
《ハンバーグ(仕入れた材料のラベル)》
なんと、ハンバーグに牛肉は使われていません。
原料となる肉は、鶏と豚に牛脂肪を加えたものです。牛脂肪を加えて、やわらかくして、牛肉らしい風味を出します。
やわらかすぎて普通には丸められませんので、型に入れて作ります。手作り感はありませんがコスト優先です。
原材料名に書かれている項目で、なんなのか良く分からないであろう材料を解説していきます。
まず「粒状大豆たんぱく」は肉製品を増量させるための定番です。大豆から抽出したタンパク質を粒状の形に成型したイミテーションひき肉です。カラメル色素でベージュ色に着色されています。
「大豆ミート」といって、肉のように作られた大豆商品は、ヘルシー志向の女性や、ヴィーガン・ベジタリアンの方に支持されていますね。
《参考》【発芽大豆ミートSOYCLEとは】レシピ・作り方・メリットとデメリット
「粒状大豆たんぱく」の他に、「大豆たんぱく」という表示もあります。こちらは粉末状で乳化とつなぎの働きがあります。「乳たんぱく」も同様の目的で使用されます。
「ビーフエキス」は、ビーフの風味をつけるためです。牛肉を使っていないため、こういうもので牛肉のハンバーグらしさを出します。
「たんぱく加水分解物」は、植物や動物のタンパク質を塩酸で分解して作られた強いうまみの天然系調味料です。添加物の扱いではありません。
詳しくは、以下の記事で用語解説しています。
《参考》【食品添加物の用語解説】調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、加工デンプン、増粘多糖類、酸味料など
次に添加物を見てみましょう。
「調味料(アミノ酸等)」は、定番の化学調味料の複数の混合物、「pH調整剤」は、食品を酸性側に保つ保存効果のための添加物の混合体です。
「加工デンプン」は、様々な用途に使われますが、ここでは乳化効果と固める目的で使用されていると考えられます。
調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、加工デンプンの3つは「一括表示」(グループ表示)なので具体的な添加物名は表示されません。一括表示については以下の記事で詳しく解説しています。
《参考》【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など
「リン酸塩(Na)」も多くの用途に使われる添加物ですが、種類が色々あり、略して表示されます。この場合は、肉の結着(つなぎ)効果のために使われています。
成型肉や形成肉と呼ばれる、細かいくず肉や内臓の肉を軟化剤で柔らかくして結着剤で固め、圧力を加えることで形状を整えたお肉のジャンルがあります。成型肉に「結着剤」はよく登場する添加物です。
《参考》【成型肉とは】まずい?表示義務やサイコロステーキの食べ方を解説
「カラメル色素」は、砂糖やデンプンを焦がした後、化学処理された茶~黒の着色料です。砂糖を焦がしてつくるカラメルソースとは似て非なるものです。
「紅麹色素」は、ベニコウジカビから抽出された赤色の着色料です。カラメル色素とあわせてハンバーグに赤茶色のおいしそうな色を付けます。
カラメル色素、紅麹色素は、ともに天然着色料です。
《参考》【天然着色料と合成着色料】使われている食品の種類・表示・使用基準
②「デミグラスソース」
《デミグラスソース(仕入れた材料のラベル)》
デミグラスソースは本来、玉ねぎを炒めてブラウンソースをつくり、トマトや赤ワインで煮込んでつくる手間のかかるものです。
しかし、スープメーカーから仕入れています。仕入れ品は、添加物を駆使して「それらしい味」に仕上げたものです。
ラベル表示をご覧いただければわかる通り、ご家庭の台所にはないものばかりです。
「アミノ酸液」は添加物ではありません。大豆を塩酸で分解してつくる調味液で、しょうゆやソースの増量に置き換えて使用されています。
「キサンタンガム」は増粘多糖類のひとつで、やわらかいとろみとツヤを出すために使われます。長く後を引く粘りで、ドレッシングに良く使われています。
増粘多糖類については以下の記事で解説しています。
《参考》【食品添加物の用語解説】調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、加工デンプン、増粘多糖類、酸味料など
「酸味料」はソースにさわやかな酸味をつけます。一括表示で、酸味のある添加物が複数使われているということです。
③「ナポリタン風スパゲティ」
《ナポリタン風スパゲティ(仕入れた材料のラベル)》
ナポリタンといえばケチャップを使うのが当たり前と思うかもしれませんが、ここではケチャップは使われません。トマトパウダーと酸味料等の添加物で色と味をつけた方がはるかに安上がりだからです。
「しょうゆ」は、丸大豆しょうゆなのか、あるいは添加物が使用されたそれなりのしょうゆなのかは分かりません。
値段から考えると、添加物を使ったしょうゆである可能性が高いと思います。
それなりのしょうゆには、結構な量の添加物が使われているのですが、できあがりのスパゲティの表示には書かなくていいのです。
このことをキャリーオーバーといいます。キャリーオーバーについては以下の記事でもまとめています。
《参考》【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など
「めん」は、小麦粉に増粘多糖類を加え、スパゲティのような固い食感にしています。「トマトパウダー」は風味を出すためで、酸味料と一緒の使い、ケチャップの代わりになります。
「クチナシ色素」「紅麴色素」「紅花色素」は天然着色料です。これらの着色料を調整して明るいオレンジ色のスパゲティに着色します。
④「ポテトサラダ」
《ポテトサラダ(仕入れた材料のラベル)》
ポテトサラダのマヨネーズは、添加物でつくったマヨネーズ風ドレッシングです。家でつくるポテトサラダとは似ても似つかない材料ばかりで作られています。
冷蔵庫で60日は日持ちする2キロの真空パック入りのポテトサラダを仕入れています。
半固体状のドレッシングは、「マヨネーズもどき」の食品です。これには多くの添加物が使われていますが、ここでは表示されていません。
その理由は、キャリーオーバーで表示が不要だからです。
「増粘剤(加工デンプン、増粘多糖類)」は、サラダ全体をやわらかくし、水分の分離を止め、粘りをつけるものです。
市販のポテトサラダを食べるとき、ぬるぬる感が後口に残ることがありませんか?これは増粘多糖類の量が多すぎるために起こります。
「グリシン」は、保存効果のあるアミノ酸です。同様に「酢酸Na」は香辛料抽出物とともに日持ちを向上させるための添加物で、業界では「日持ち向上剤」と呼ばれています。
香辛料抽出物はいくつかあり、たとえば唐辛子から抽出した辛みのない成分などです。傷みやすい弁当のおかずには、保存効果のある添加物が多く使われるのです。
⑤「福神漬」
《福神漬(仕入れた材料のラベル)》
福神漬とはいえ、コスダウンにぬかりがありません。産地にもこだわらず、添加物入りで構わないから、とにかく安くて日持ちがするものをと問屋に要求します。
中国産の業務向け福神漬なら、1キロ200円程度で仕入れることができます。
本来、福神漬は7種類の野菜でつくるので、(七)福神漬というのですが、添加物を使用していない福神漬は、色が悪く味が薄いです。
弁当のアクセントの意味でも、食欲をそそる派手に真っ赤な色がいいのです。味が濃いとご飯も進みます。なにより、安さと見た目優先です。
「サッカリンNa」は、合成甘味料で、砂糖の代替品です。砂糖の500倍の甘味を持つので、砂糖の500分の1の量で済み、安上がりです。
「ソルビン酸K」(カリウム)は、よく知られる合成保存料です。着色料は、タール(石油由来)系の合成着色料を4種類組み合わせて、あざやかな赤色に仕上げます。
「香料」は、福神漬けにシソの香りをつけるものです。シソの合成香料は、ℓ-ペリナアルデヒド、リモネン、α-ピネン、ネギナタケトンなど、様々な化学物質を組み合わせて作られます。
何種類使われようとも「香料」という一括表示でOKです。
他にも、「シソ風味」のひじき、昆布の佃煮、ふりかけなどにもよく使われています。
⑥「キャベツの千切り」
ハンバーグに添えられたキャベツは時間がたってもシャキシャキしていて色もきれいです。それはなぜでしょうか。
キャベツは千切りにカットしたあと、次亜塩素酸ソーダで、何度も洗浄、殺菌します。風味はなくなり、ビタミンCも壊れてしまいますが、黒ずんだりしなびたりするのを防ぐために行われます。
スーパーで売られている千切りキャベツ、カットネギなどのカット野菜に風味がないのは、同様に殺菌を繰り返しているためです。
ただし、ここで使われる次亜塩素酸ソーダは食品に残らない「加工助剤」なので表示されません。加工助剤の詳細については以下の記事でご覧ください。
《参考》【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など
⑦「白ごはん」
《白ごはん(仕入れた材料のラベル)》
驚くべきことに、白米にも添加物が使われています。コンビニ、スーパーのおにぎり、弁当、寿司など、白飯の需要は伸びています。
これらは、大量生産なのでコスト、日持ち、原料、外見(つや・白さ)、食感の向上を考えて複数の添加物が使用されることが普通です。
ただし、たくさんの添加物を使うメーカーもあれば、添加物を不使用で炊きたての配給にこだわるメーカーもあります。
仕入れのごはんには、古米が使われることも多くあります。古米はパサパサしておいしくないので、油や添加物を使ってつやつやを補います。
「新米シール」が貼られたおにぎりキャンペーンがありましたが、逆いうと普段は古米ということです。
原材料名にある「植物油」は、添加物ではありませんが、ごはんにツヤを与えるために入れます。この油には「乳化剤」が配合され、炊飯油とも呼ばれています。
このごはんでお茶漬けをすると、表面にパッと油が浮きます。コンビニおにぎりも同様です。
添加物については「乳化剤」「pH調整剤」「調味料」のほか、表示はされていませんが、甘味、つや、粘りを与えるため、酵素のアミラーゼ、セルラーゼが使われる場合があります。
酵素は加熱した後に働きがなくなるため表示しなくても良いことになっています。
メーカーによっては白米に調味料(アミノ酸等)の表示があります。これは、化学調味料を複数加えたということです。
隠れた添加物
安くてキレイなハンバーグ弁当ですが、その裏側ではこれだけの添加物が使われているのです。
しかも、原材料には表在されない見えない「隠れた添加物」も多くあります。
一括表示や、キャリーオーバー、加工助剤などのルールを駆使して、表示する添加物が少なくて済むように工夫している場合もあります。
隠蔽する気はないかもしれませんが、わたしたち消費者が「隠されてる」と感じてしまうのも無理はありません。とはいえ、国でそのようなルールがあるので、それに従ったまでと言われればそうなのです。
一括表示やキャリーオーバー、加工助剤などの用語解説は別の記事で行っています。
《参考》【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など
表示がない食品
テイクアウトのお弁当や、店内で詰めて販売するスーパーの弁当には、添加物を含めた原材料の表示さえないものもあります。
製造者と販売者が同一の場合には、表示ラベルが不要という法律があるのです。つまり、外食、テイクアウト弁当、店内調理の食品、ホテルのレストラン、デパ地下やスーパーのバラ売りなどがこれに該当します。
持ち帰りのパッケージにシールを貼って表示をしたり、メニューカタログに書いたりすることは可能なので、業者は自主的に表示をすべきだと感じます。
さいごに
まずは「激安ハンバーグ弁当」に含まれる添加物をご紹介していきました。
牛肉が使われていないハンバーグや、ケチャップが使われていないナポリタン風スパゲッティ、マヨネーズが使われていないポテトサラダが存在することに驚きました。
わたしたちが想像している以上に添加物で置き換えられている「もどき食品」「もどき調味料」があるんだと感じます。
続いて、「食品の裏側2実態編」の要約の続きは以下の記事でご覧ください。ハンバーグ弁当以外の食品に含まれる添加物について解説していきます。