【食品添加物の関連用語】一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など

あなたは、「食品添加物」の表示ルールをご存知ですか?

  • 「一括表示」とは?
  • 「キャリーオーバー」とは?
  • 「加工助剤」とは?

わたしは、ファスティング(断食)指導、食事アドバイスをしている栄養士です。

プラスの健康とマイナスの健康を大切にしています。どんな栄養をとるかと同じくらい、どんなものを食べないかという選択も大事です。

本記事では、食品添加物について知るために知っておくべき用語の解説をしていきます。本記事の主な情報源は「食品の裏側2 実態編」という本の内容です。

「食品の裏側2 実態編」という本の要約記事がありますが、その内容をさらに深めるための辞書的にもご覧いただけるものになっています。

《参考》【本の要約①】食品の裏側2 実態編:ハンバーグ弁当に使われる食品添加物

「原材料の表示順」

食品の裏側2 実践編_表紙

加工食品の表示ラベルを見ると、原材料にはたくさんの名前が並んでいます。

かつては、食品も添加物も区別なく含まれている量の多い順に書かれていました。現在では、添加物は食品の後に、多い順に書くようになりました。

これによって、表示ラベルの後ろの方に書いてあるものは添加物だと予想がつきます。

そんな食品添加物は、一部を省略して表示できるような「一括表示」「キャリーオーバー」などのルールがあります。

名前は表示されていないが、隠れた食品添加物が含まれていることがあります。添加物が良いか悪いかの議論は別として、まずはその事実を知っていただければと思います。

良いか悪いかについては、要約した別記事でご覧ください。では早速、各用語の説明をしていきます。

「一括表示」

食品添加物の用語説明の記事に、一括表示という言葉が何度も登場しました。

《参考》【食品添加物の用語解説】調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、加工デンプン、増粘多糖類、酸味料など

いくつかの添加物が使用されたときに、一括の表示名で記載できるという制度です。では、実例を紹介していきます。

例1)食品工場向けの調味料

食品の裏側2 実態編_加工食品用の調味料

一括表示名は「調味料(アミノ酸等)」です。

これだけたくさんの種類の食品添加物が使用されていますが、表示には「調味料(アミノ酸等)」としか書かれません。

例2)惣菜、弁当用の日待ち向上剤

食品の裏側2 実態編_pH調整剤

一括表示は「pH調整剤」ですが、メーカーの使用目的により表示が変わります。

表示名 使用目的
「pH調整剤」 pHの調整
「酢酸Na」「グリシン」 日持ち向上
「酸味料」 酸味目的
「調味料(有機酸)」「調味料(有機酸等)」 調味目的

同じ食品添加物が入っていても、使用目的によって表示名が変わります。

例3)鮭の色あせ防止剤

食品の裏側2 実態編_鮭の色あせ防止剤

一括表示は「V・C」のみです。V・Cとは、表中の主成分であるアスコルビン酸、アスコルビン酸Naの略称です。

「キャリーオーバー」

とある添加物の入った食品を原材料として加工食品を作ったとします。できあがった加工食品にその添加物の働きが有効でない場合、添加物の表示は不要となります。これがキャリーオーバーです。

食品の裏側2 実態編_こいくちしょうゆ(混合)

表は、安価なアミノ酸液混合しょうゆの原材料です。

いくつかの添加物が使われていますが、この混合しょうゆで食品をつくった場合、食品の材料表示は「しょうゆ」のみとなります。

たとえば、このしょうゆを使用して作られたお惣菜やお弁当には「しょうゆ」としか表示されないということです。

しょうゆの添加物は使った食品には効果がないという解釈です。

少量かもしれませんが、このしょうゆは含まれているので、影響がゼロとは思えません。なので、わたしたち消費者は購入するときに知って選べる方が親切ですよね。

他にも、ポテトサラダに使われたドレッシングの場合なども同様の対応がされます。

「加工助剤」

「加工助剤」とは、食品の製造の過程において使われた添加物が以下の場合は、表示しなくて良いというものです。

  1. 最終製品に残らないもの
  2. 残っていても影響を与えないもの
  3. 食品にもともと含まれる成分と同じ成分であるもの

たとえば、大豆から油を抽出する場合のn-ヘキサン、油の脱色、脱臭のための酸性白土(鉱物)や活性炭がそうです。

アミノ酸液、タンパク加水分解物、みかんの内袋の除去に使われる塩酸とカセイソーダは中和されることにより表示はされません。

また、添加物を複数混合して添加する場合、使用の目的により、主成分以外は加工助剤の扱いになります。

製造される過程で、最終的に残っていなくて、影響がないということであれば問題ないのですが、どれほど細かい試験をしてそのように結論づけているのかと心配になりますね。

「遺伝子組み換え技術」

EUでは、遺伝子組み換え農作物に慎重です。その理由は以下の通りです。

  1. 未知の部分が多い
  2. 食料の独占化が起こる
  3. 生態系の崩壊

③生態系の崩壊とは、似た植物が組み換え技術による殺虫性を持つ可能性があるなどと言われています。

わたしたちがスーパーで手に取る豆腐や納豆、コーン缶などのほとんどに「遺伝子組み換えでない」という表示があります。

2021年(令和3年)9月3日の時点で、農林水産省で承認した遺伝子組換え農作物数は、次の通りです。

  • 一般的な使用:194種
  • 一般的な使用のうち栽培可のもの:145種
  • 隔離ほ場試験のみ:51種

大豆、なたね、とうもろこし、綿などが該当します。

《参考》【遺伝子組み換え食品とは】メリット・デメリット・任意表示制度の改正

「とうもろこし」

たとえば、とうもろこしは、そのまま食するよりも油、デンプン(コーンスターチ)として使われる方がはるかに多いです。

特にデンプンは加工され、シロップ加工食品、添加物の原料として利用されています。そこで使われているのは多くが遺伝子組み換えのとうもろこしです。

「大豆」「なたね」

同じように大豆も、大豆そのもの、あるいは豆腐・納豆を含む大豆加工食品として食べられるより、油や大豆タンパクの原料として使われることの方が多いのです。

サラダ油の原料となるなたね、大豆は「不分別」となっています。

これらは米国からの輸入が圧倒的に多いのですが、原料段階で混ざって分別できないという理由からです。

「うまみ調味料」

添加物も遺伝子組み換え技術でつくられるものがあり、2グループあります。ひとつは、遺伝子組み換え技術に該当する添加物と該当しないとされる添加物です。

食品の裏側2 実態編_遺伝子組み換えによる添加物リスト

  1. 遺伝子組み換え技術に該当せず「安全性審査」のみで「健康影響の評価」をいけないもの(57品目)
  2. 遺伝子組み換え食品添加物と扱われ、「安全性審査」と「健康影響評価」を受けたのち、告示されたもの(17品目)
  3. 審査継続中

新しい遺伝子組み換え技術による農産物、添加物も、審議中のものが多く、TPPに加盟すれば、今後はさらに品目が増えるものと考えられます。

「トランス脂肪酸」

トランス脂肪酸は、心臓病や動脈硬化を招く「体に悪い油」です。マーガリン類、ファストフード、フライ麺などに使われる油は、トランス脂肪酸が含まれています。

トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や、植物油を高温にして脱臭する工程で生じます。

また、天然でも、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれています。

ヤシ油(パーム油)

加工食品に使われる油はその多くがヤシ油(パーム油)です。ヤシ油は植物油の中で安く、常温でも固形の部分が多く、酸化しにくく長く使えます。

このヤシ油にも、さらに水素ガスを反応させて化学処理します。これにより、油が固体化し、さらに酸化しづらくなります。

マーガリンの原料の油脂も同じ水素添加で作られます。このような油を「硬化油」といいます。

《参考》【マーガリンとは】バターとの違い、トランス脂肪酸が体に悪い?その理由

とうもろこし油

加工食品の原材料にコーン硬化油とあれば、とうもろこし油に水素添加させた油ということになります。

ところが、ニッケル金属を入れ、高温、高圧で水素ガスを反応させる過程で、トランス脂肪酸が多くできてしまいます。

世界の対応

WHO(世界保健機構)とFAO(国連食糧農業機関)の「食事、栄養および慢性疾患予防に関する合同専門家会合」では、食事からのトランス脂肪酸の摂取は極めて低く抑えるべきとして、最大でも1日の総エネルギーの1%未満にするように警告しています。

米国、EUでは油を使用した包装食品には、どれだけトランス脂肪酸が含まれているかが表示されており、ファストフードでは、店内に表示されています。

したがって、日本の食品でも米国やEUに輸出されているものは、トランス脂肪酸の含有量が表示されています。

ところが、日本では何の規制もなく表示義務もありません。理由は、欧米に比べて油の摂取量は少ないというものです。

しかし、外食、加工食品の伸びとともに、使われる油の質を考えるとそんなに悠長なことを言っていていいのかと思います。

東京大学など8大学のグループ調査によると、WHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)が奨めるトランス脂肪酸の目安を超えて摂取している人は、30~40代の女性で30%を超えていました。(平成10年3月23日 朝日新聞)

その原因と考えられるものは、お菓子です。市販のお菓子やケーキにはマーガリン、ショートニングが多く使われているからです。

また、即席麺、からあげなどの揚げ物に使われる油も硬化油が多いです。

バター、チーズにも天然のトランス脂肪酸(共役リノール酸)が含まれていますが、アメリカFDA、デンマークはトランス脂肪酸の規則の強化を進めています。

《参考》【マーガリンとは】バターとの違い、トランス脂肪酸が体に悪い?その理由

「JASマーク」

JASマークは、わたしたち消費者にとって、食品を選ぶときの1つの目安となるものです。

JASマークは、4種類あります。

  1. 「一般のJAS(主に加工食品)」
  2. 「有機JAS」
  3. 「特定JAS」
  4. 「生産情報公表JAS」

加工食品においてJASは41品目、171規格あります。しかし、このマークは国のお墨付きという意味ではありません。

1つの例として、チルドハンバーグステーキのJASを見てみましょう。食肉は以下のように定められています。

定義は食肉(牛肉、豚肉、馬肉、めん羊、または家きん肉)をひき肉にしたもの又はこれに牛、豚、馬、めん羊若しくは家きんも臓器及び可食部をひき肉にし、若しくは細切りにしたもの

ここでいう臓器及び可食部とは、肝臓、腎臓、心臓、肺臓、ひ臓、胃、腸、食道、脳、耳、鼻、皮、舌、尾、横隔膜、血液及び脂肪層をいう

家きん肉とは、ニワトリ、アヒル、カモの肉です。

チルドハンバーグに肉以外に、内臓や血液も使っていいのです。肉のような組織を有する植物性タンパク(組織状大豆タンパク)も加えてよいことになっています。

要するに、規格に定められた材料を使いさえすればJASの規格に適合し、マークをつけられるという話です。農林水産省のWEBサイト「JAS規格一覧」で見られます。

JASの規格では、添加物は定められたものしか使えませんが、現在、農水省で添加物と指定されたものは、すべて使ってよいという方向で検討されています。

消費者にとっては、何のための規格なのか疑問も生まれます。

①「一般のJAS(主に加工食品)」

規格品位、成分、性能などの品質についてのJAS規格(一般JAS規格)を満たす食品や、林産物などにつけられます。品目によっては等級が表示されます。

②「有機JAS」

有機JAS規格を満たす農産物に対して付けられます。化学合成された農薬や肥料を使用しないことを基本として生産されたものです。

有機JASについては、また次の章で補足情報をお伝えします。

③「特定JAS」

特別な生産や製造方法についてのJAS規格(特定JAS規格)を満たす食品や、同種の標準的な製品に比べ、品質等に特色があることを内容としたJAS規格を満たす食品につけられます。熟成ハム、ソーセージ、ベーコン類などです。

④「生産情報公表JAS」

生産情報公表JAS規格を満たす方法により、給餌や動物用医薬品などの情報が公表されている牛肉や豚肉、生産者が使用した農薬や肥料などの情報が公表されている農産物等につけられれます。

「有機JAS」

有機JASマークが完全無欠の農産物という意味ではありません。

農水省のパンフレットの言葉を借りれば「人にも地球環境にもやさしい有機食品」ということです。法律では、第二条で以下のように規定しています。

化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないこと、農業生産に由来する環境への負荷を出来る限り低減した農業生産の方法を用いて行う農業

確かに自然農法の生産者より、JASは甘い部分ががあると指摘されます。

以前、和食チェーン店から、無農薬、無化学肥料のにんじんを5トン世話してほしいと頼まれたことがあったそうです。

当然、一か所で調達できる訳がなく、全国の生産地から集めることになりましたが、このとき有機JASという一定基準があれば、全国からスムーズな集荷ができます。

一定の基準を設けることで、取り扱いを便利にするという効果もあります。

EUと日本の規制

また、最近の農薬問題として、EUにおいてネオニコチノイド系農薬がミツバチの全滅の原因ではないかとの報告を受け、2008年にドイツでは7品目を禁止しました。

日本では、2013年に群馬県での空中散布により小学生に健康被害が発生しました。

日本では規則の動きがなく、残存基準がEUの300倍もゆるい農産物もあります。

国際的な農薬軽減への要請ということもありますが、将来的には有機JASの国際基準を充実させることが、日本の有機野菜の海外輸出を促進させ、国内農業の増産にもつながると思います。

食品に対して、国産がいいと信じて疑わない国産信者の方がいらっしゃいますが、実際のところ、国産品が安全で、海外産が危険というのは一概に判断できません。

【まとめ】食品添加物の関連用語

食品添加物のことを知るには「一括表示」や「キャリーオーバー」のルールを知っておく必要があることがご理解いただけたことでしょう。

加工食品の成分表示には、小さい文字がたくさん書かれていますが、あれでも省略して書かれているのです。

食品添加物は安全か危険かという議論がされますが、どちらとも言い切れないのが現状です。それは、添加物を複合摂取した場合のチェックはされていないからです。

実際はあんなにたくさんの添加物が含まれていても、一括表示されてしまうので、その内訳はわたしたち消費者がいることができないのです。

まずは、どんな成分がどれだけ含まれているのか知れると良いですね。ご興味が湧いた方は、著書をご覧いただければと思います。

《著書》食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物

さいごに

一方で、たくさんの添加物をパッケージに表示されて、しかも一括表示で省略されては、訳が分からなく判断ができないとも感じます。

添加物の影響が心配な方は「疑わしきは使用せず」の精神で、避けれるところは避けるというのがいいでしょう。

《参考》【SL Creations】オーガニック食材・料理へのこだわり

ちなみに、食品は加工度が上がれば上がるほど、添加物も多く含まれています。たとえば、お弁当よりもパックご飯の方が添加物が少ないです。自分で炊いたご飯は添加物ゼロです。

オーガニックや添加物にこだわった商品をまとめていますので、良ければ参考にご覧ください。

《参考》無添加・オーガニック商品一覧

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