【マーガリンとは】バターとの違い、トランス脂肪酸が体に悪い?その理由

あなたの家の冷蔵庫に「マーガリン」は入っていますか?

  • マーガリンの原材料や作り方とは?
  • バターとの違いは何?
  • 体に悪いと言われる理由は?食べるプラスチックって本当?

わたしは、オーガニック食品が好きな栄養士です。そんなわたしが、本日は「マーガリン」に関するあれこれを解説していきます。最後におすすめのマーガリンもご紹介します。

【マーガリン】とは

「マーガリン」とは、植物油・植物硬化油を主成分とするバターに似た加工食品です。マーガリンとの魅力はニーズにあわせたその多彩さです。使用する油脂によって、風味や成分も変わり、体に機能する脂肪酸の組み合わせも変えられます。

また、カロリー控えめタイプ、お菓子作りや料理に適したタイプ、さらにはバターやガーリックを加えたものなど、用途によって色々なタイプが楽しめます。

ソフトタイプのマーガリンは冷蔵庫から取り出してすぐにでも、なめらかにパンに塗れるので扱いやすいことも魅力のひとつです。パンに塗ってそのまま食べるのはもちろん、パンやケーキ、クッキーなどを作る材料としても使われます。

「マーガリン」の種類

マーガリンは、家庭用としても業務用としても使われています。主な3つの用途をご紹介します。

  1. 家庭用マーガリン
  2. 個包装マーガリン
  3. 業務用マーガリン

① 家庭用マーガリン

皆さんの家庭で使うために作られたマーガリンは、別名「テーブルマーガリン」とも言い、そのままパンにぬるのはもちろん、料理にも使えて風味のよさや素材に重点をおいています。

植物油を使った柔らかく使いやすいソフトタイプのマーガリンが主流で、冷蔵庫に入れておいても硬くならず、出してすぐパンに塗れる使い勝手のよさが特徴です。また「ファットスプレッド」という種類もあります。※ファットスプレッドについては後ほど詳しくご紹介します。

「低脂肪」や「カロリーハーフ」などの健康を意識したもの、「ガーリック風味」や「チョコ風味」のひと味違った風味をつけたもの、原料にオリーブオイルや紅花油を使った素材を重視したものなどが出ており、好みに応じて種類も豊富になっています。

② 個包装マーガリン

もともとは、学校給食用に開発された製品で、1食分相当の6~10グラムの小型包装となっています。

家庭用との違いはマーガリンの溶ける温度「融点」に工夫がされており、家庭用マーガリンよりも3℃ほど高い38℃以下に融点が設定されています。これは学校の中で給食の始まる寸前までマーガリンを冷蔵庫に置いておけないことや、夏など気温の高さで溶けてしまわないための配慮です。

給食用のマーガリンにも現在は色々な種類が出ており、チョコレート味やピーナツ味のものもあります。

なお、現在では病院やホテルなどでも1食分相当のマーガリンがパンに添えて出されるようになりました。

③ 業務用マーガリン

最も消費量が多いのが、業務用マーガリンです。「ベーカリーマーガリン」ともいわれ、主にお菓子やパンなどを作る際に使われます。

しかし、そのパンやお菓子の種類も多種多様で次々に新製品が出るため、この業務用のマーガリンはそれらの製品に合わせた用途別の便利なマーガリンがたくさん開発されています。

たとえば、次のようなものがあります。

ケーキ用マーガリン ケーキやシュークリームなどの焼き菓子専用で、水分と油をうまく混ぜ合わせる性質(乳化性)に優れ、混ぜ合わせたときに空気をたくさん含み生地をふっくらさせる性質を持ったマーガリンです。
アイシング用マーガリン ケーキやパンの表面にかけるバタークリームなどをアイシングと言い、その用途のために特別に工夫されたマーガリンです。保形性や口どけがいいように原料油脂の特長を生かして配合してあり、風味もバターに近いものになっています。
ロールイン用マーガリン デニッシュやパイ類は、生地にマーガリンを包み込んで麺棒で伸ばし、それをまた折りたたんで伸ばすという作業を繰り返すロールインという方法で生地に層を作ります。これ専用に開発されたのがロールイン用マーガリンです。室温にかかわらずパイ生地のなかに薄膜状に伸びる性質を持っています。
逆相型マーガリン 日本で開発された新しい型のマーガリンです。普通のマーガリンは油の中に水が細かい粒になって分散している型(油中水型)ですが、逆相型はそれとは逆に水の中に油が細かく分散している型(水中油型)です。水分が外側にあるため硬い油脂を原料に使っても全体として硬くならず、水は油よりも粘度が低いので、ロールにくっつかず伸ばしやすいなどの特長があります。
二重乳化マーガリン 逆相型マーガリンの外側をさらに油で包み込んで、油中水型と水中油型と、両方の長所を兼ね備えた性質をもたせたのが二重乳化マーガリンです。
※乳化とは均一には溶け合わない2つの液体の一方が、微粒子となって他方の液体中に分散し、エマルション(乳化した液体)を生成する現象を言います。ただし、安定なエマルションを得るためには乳化剤が必要です。
流動状マーガリン 普通のマーガリンは常温では固体ですが、業務用には流動(液体)状のマーガリンもあります。これは特殊な工程を経て、マーガリンとしての性質を保たせたまま、液状にしたもので、原料には常温で液体の植物油が多く使われます。

「マーガリン」と「バター」の違い

「バター」は、牛のミルクの脂肪分を撹拌操作により塊状に集合させたものです。

一方「マーガリン」は、精製した油脂に粉乳や発酵乳・食塩・ビタミン類などを加えて乳化し、練り合わせた加工食品です。原料となる食用油脂はコーン油、大豆油、紅花油などの植物油脂が主体となっています。

《マーガリン》 《バター》
原料 植物性・動物性の油脂 牛乳
形状 やわらかく、なめらか。パンに塗ったり、練りこみやすい。 固めの質感。形状を保ちやすい。
バリエーション カロリーハーフのものやチョコレート、ガーリックなど風味をつけたもの。お菓子用の無塩タイプなど。 発酵させた牛乳で作った発酵バターやお菓子用の無塩タイプなど。

「ファットスプレッド」とは

マーガリンの中には「ファットスプレッド」と記されているものがあります。これは、マーガリン類は日本農林規格によって規定されており、油脂含有率の違いにより「マーガリン」と「ファットスプレッド」に分けられているからです。

マーガリンは、油脂分が80%以上のものという規定あり、ファットスプレッドは油脂分が80%未満のものをいいます。

そのためマーガリンに比べて油分が少なく、水分の割合が多いためカロリーが低いです。さらに、柔らかくあっさりと軽い味わいになっています。また、パンに塗りやすいのが特徴です。

またファットスプレッドには、風味原料と呼ばれる果実、果実加工品、チョコレートなどの味をつけることが許されています。

パッケージにもきちんと「マーガリン」「ファットスプレッド」の表記がされていて見分けがつくようになっています。

家庭用のマーガリンとして店頭にならんでいるものは、ファットスプレッドが主流となっていて、最近では様々な商品が登場しています。バターやチョコレート、ガーリックなどの風味原料を加えたものなどもあります。

「マーガリン」の原材料

マーガリンの主原料はコーン油、大豆油などの植物油脂です。植物油脂は植物の果実や種を圧縮・精製して作られます。

マーガリンにはこうした植物油脂由来の必須脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸が含まれています。必須脂肪酸とは、体にとって大切だけれども体内合成ができず、必ず食物から摂取する必要がある脂肪酸のことです。

《マーガリンに利用されている主な油脂》

コーン油 とうもろこしの胚芽から採取。アメリカで多く生産。
なたね油 菜の花の種から採取する油。
紅花油 紅花の種子から採取。オレイン酸、リノール酸が豊富。
大豆油 最も生産量が多い油。ビタミンKが豊富。
パーム油 アブラヤシの果肉から採取する油。
綿実油 綿の種から採取。ビタミンEが豊富。

「マーガリン」の作り方

とあるマーガリンの作り方をご紹介していきます。

① 配合

  • 貯油タンクから、配合タンクに原料となる油脂が配合されます。
  • また乳化剤や着色料(βカロチン)などの副原料も配合タンクに入れられ、マーガリン製造の準備が整います。

② 乳化

  • 配合された油脂原料に水相を加え、50℃から60℃で攪拌します。この工程を「乳化」と呼びます。
  • 水相には食塩や香料が入れられ、この段階でマーガリンの味付けも行われます。

③ 製造

  • 乳化されたものを今度は急速に冷やしながら練り合わせて固めていきます。ここで皆さんがよく見るマーガリンの状態に仕上げていきます。
  • できあがったマーガリンは、カップに充填されるなど様々な形状になって商品が完成します。

④ 検査・出荷

  • できあがった商品は風味や色合いなどの官能テストを行い、組織や成分の検査をします。
  • また細菌検査を行い、安全がしっかり確認されたあとで出荷されます。



固体にすることで用途拡大

植物油は液体ですが、水素を添加して不飽和脂肪酸を人工的に飽和脂肪酸に変化させることで、動物脂のような固体としての特性を持たせることができます。

このような方法で加工された植物油は「硬化油」と呼ばれ、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングとして菓子や加工食品に幅広く使用されています。

お菓子のサクサク感やなめらかな舌触りといった食感は、まさに「硬化油」のおかげといえます。

また、硬化油は酸化されにくい特徴を持つため、食品の日持ちを良くする目的でも使用されています。このように、植物油から合成される「硬化油」は加工食品にとって重要な材料になっています。

「マーガリン」についている紙シート

マーガリンの容器の中に、紙のシートがついているのはなぜだかご存知でしょうか。その理由は、空気による風味の劣化を防ぐためです。

開封後は、付けたままでも、取っても構いません。紙シートがなくてもきちんとふたを閉めて保存がされていれば、マーガリンの品質に影響はないそうです。

マーガリンの色が濃くなってきた場合

マーガリンは、空気に触れさせておくと、表面から水分が蒸発して乾燥してしまいます。

すると、マーガリンに含まれているカロテンの色が濃くなり、濃い黄色に見えます。ただし、きちんと保存されているものであれば味や風味には影響はありません。

「マーガリン」の歴史

マーガリンが生まれたのは、いまから100年以上も前のことです。日本が明治2年に戊辰戦争が終結し、東京横浜間で電信が開通した年、1869年のフランスはナポレオン一世の甥、ナポレオン三世の治世でした。

その頃、隣国プロシアとの戦争で「バター」が欠乏し、困っていました。そこでナポレオン三世がバターの代用品を懸賞募集したところ、見事に選ばれたのがメージュ・ムーリェ・イポリットという科学者が考案した上質な牛脂のやわらかい部分に牛乳などを加えて、冷やし固めてバターのようなものを作り出しました。

これが、マーガリンの原型です。ちなみに、マーガリンという名前は「真珠」を意味するギリシャ語「Margarite」に由来しているといいます。製造途中でできる脂の粒子が美しい真珠の粒のように見えたことからこの名前がついたそうです。

液体の植物油を半固形状態にしていく「水素添加」という加工技術は、1980年後半に開発されたそうです。

その後マーガリンは、ヨーロッパの国々さらにはアメリカへと、世界に広がっていきました。日本に入ってきたのは、明治の中頃です。名前はマーガリンではなく「人造バター」と呼ばれていたようで、今も辞書を引くとそのように出ています。

戦後の復興期を経て高度成長期を迎えると、マーガリンの需要は大きく膨らみます。日本の食生活はますます洋風化が進み、パンとマーガリンの朝食がすっかりおなじみになりました。

そして、現代にいたるまで様々な改良が重ねられ、おいしく便利な食品として、マーガリンは日本中の食卓で親しまれてきました。

「マーガリン」販売商品の成分

実際に販売されているマーガリンの成分を調査してみることにしました。

今回は「雪印ミグミルク」のマーガリンを14種類の中から、代表的な商品「ネオソフト」と「ネオソフト コクのあるバター風味」について詳しく調べてみました。

いくつかの商品をピックアップしてみました。皆さんもスーパーでパッケージをご覧になったことであるのではないでしょうか。

「ネオソフト」を中心として、バター風味、コレステロールゼロシリーズなどがでています。他にも、バター仕立てのマーガリン、北海道練乳ソフト、ケーキ用マーガリンなども販売されています。

ホテルやファミレスなどでパンを頼んだときについてくる丸い1回分の個装マーガリンは約8gのものが多いようです。カロリーについては、それを1回分としてカロリーは8gあたりで調べてみました。

ネオソフト

分類 ファットスプレッド(油脂含有率:66%)
原材料名 食用植物油脂(国内製造)、食用精製加工油脂、食塩、粉乳/乳化剤、香料、着色料(カロテン)、(一部に乳成分・大豆を含む)
1回分のカロリー 48kcal
賞味期限 240日

ネオソフト コクのあるバター風味

分類 ファットスプレッド(油脂含有率:77%)
原材料名 食用植物油脂(国内製造)、食用精製加工油脂、食塩、粉乳/乳化剤、香料、着色料(カロテン)、(一部に乳成分・大豆を含む)
1回分のカロリー 56kcal
賞味期限 180日

「バター風味」と「ノーマル」商品の成分が、全く同じ

皆様、お気づきでしょうか。「ネオソフト」と「ネオソフト コクのあるバター風味」の原材料が全く同じなのです。

なぜ同じなのにバター風味になるのか気になったので、問い合わせてみました。すると、「香料」の成分が違っていて、よりバターに近い風味を出しているそうです。あくまで「バター風味」なのでバターは入っていないそうです。

また、バターに近づけるために「食用精製加工油脂」の配合も変えているそうです。カロリーが違うので、やはり油分を多くしてバター感を表現しているのだと思われます。



【マーガリン】の危険性

漠然と「マーガリン」は体に悪いという印象がある方も多いかと思いますが、現前では色々な説が出ているので、様々な視点でご紹介していきます。

「食べるプラスチック」なのか?

マーガリンは「食べるプラスチック」と言う話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、事実ではありません。

なぜこのような表現がされているのかというと、脂肪専門の化学者たちがマーガリンの製造を「オイルをプラスチック化する」という言葉を使ったのが元ではないかと言われています。

恐らく、体に悪いものというような揶揄する意味も込められて「マーガリンは食べるプラスチック」という言葉が広まったと考えられます。

【トランス脂肪酸】とは

トランス脂肪酸は、油脂類に含まれる「脂肪酸」の一種です。これは、自然の食品にはほとんど存在しないといわれています。

通常、植物性油脂には「不飽和脂肪酸」というものが含まれるため常温・常圧下では液体の状態で存在しています。

マーガリンは、この液体状の植物性油脂に水素を添加することで、バターと同じ固形の油脂へと変わります。しかし、この水素を添加することで「トランス脂肪酸」が生成されます。

この「トランス脂肪酸」は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やす働きがあり、人体に悪影響を及ぼすとされています。一般的に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高く、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低い状態は、動脈硬化や虚血性心疾患のリスクを高めると考えられています。

他にも、ガン、高血圧、心臓疾患の原因になるなど、さまざまな健康被害をもたらすことが報告されています。

「トランス脂肪酸」の表示規制

米国・中国・台湾・韓国・ブラジル・チリ・パラグアイ・アルゼンチン等の国々においてはトランス脂肪酸の食品中の含有量を栄養成分表示にて表示する事が義務付けられているほか、デンマーク・スイス・オーストリアでは含有量に対する規制がすでに設けられています。

日本では、現在そのような規制がされておりません。その理由・農林水産省としての見解については、次の章で紹介します。

コーヒーフレッシュ

コーヒーフレッシュ

とあるファミレスに行った際、コーヒー用のミルク「コーヒーフレッシュ」が置いてありましたので、パッケージを確認すると「トランス脂肪酸ゼロ」と書いてありました。

わざわざあの小さいパッケージスペースに記載するとは、トランス脂肪酸が身体に悪いから、それが入っていなければ安心なものだと言わんばかりだなと思ってしまいます。

しかし「コーヒーフレッシュ」が身体に悪いと言われる主な理由は、トランス脂肪酸ではなく「添加物」に関することです。

コーヒーフレッシュの成分はミルクではありません。植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、ミルク風に仕立てたものです。

《参照》【本の要約】食品の裏側(食品添加物の神様、ミートボール事件の内容)

「身体に悪い」と言われる理由

「トランス脂肪酸」を多く摂取すると、血液中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少し、心筋梗塞などの冠動脈性心疾患のリスクが高まることが報告されています。

2003年になると、WHO(世界保健機関)と、FAO(国連食糧農業機関)が、心疾患リスクを高める食品としてトランス脂肪酸をリストに入れ、1日の摂取カロリーを総カロリーの1%(2g)未満にするという目標を掲げました。

日本人が1日にとるエネルギー量の平均は約1,900 kcalであり、この1%に相当するトランス脂肪酸の量は約2グラムです。

農林水産省は、2005~2007年度(平成17~19年度)に実施した調査研究で、日本人が食品からとっているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96グラムであると推定しました。これは平均総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当します。

「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論づけています。

つまり、日本ではトランス脂肪酸の規制が特にありません。しかしわずか2gほどに抑えるべきということは、摂ればとるほど危険で、摂らずに済むのであれば避けた方が無難とも受け取れます。

それに「害はない量だ」としていたものが、研究が進んで「やっぱり危険」となされることも多いので、現時点では問題ない量だとしているだけであって、今後どのような展開になっているのか引き続き注目したいところです。

《参照》農林水産省:トランス脂肪酸

トランス脂肪酸がもらたす病気

以下の病気が、トランス脂肪酸によってもたらされる病気と言われています。

  1. LDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らす
  2. 慢性炎症の指標である炎症マーカー上昇(生活習慣病の主要因)
  3. 糖尿病、血中インスリン濃度上昇
  4. 乳がん
  5. アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息など)
  6. 排卵障害による不妊、胎児喪失(死産・流産)
  7. 胆石
  8. 脳卒中

「心臓病」との関連性

ハーバード大学公衆衛生大学院の教授で、栄養免疫学研究の第一人者であるウォルター・ウィレット博士(1945~)は、「食生活の中にトランス脂肪酸を持ち込んだことは、過去100年間で食品業界がやらかした最大の悪事である」と発言したそうです。

さらに、ウィレット博士は1990年代に入ると、トランス脂肪酸と心臓病の関連性を指摘し、トランス脂肪酸がアメリカで年間2万人にもおよぶ心臓病の脂肪要因だと試算しました。

これは、世界中でトランス脂肪酸の食品表示義務導入のきっかけとなっていきました。

世界での取り組み

2018年5月にWHO(世界保健機関)は、2023年までにトランス脂肪酸排除を目指すという声明を出しました。

WHOはトランス脂肪酸について、国ごとの規制などの取り組みをランキング分けし、最上位と評価した国を「ベストプラクティストランス脂肪酸政策」とカテゴライズしました。該当国は次の通りです。(2020年8月の段階)

アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、チリ、デンマーク、グアム、ハンガリー、アイスランド、ラトビア、リトアニア、北マリアナ諸島、ノルウェー、サウジアラビア、スロベニア、南アフリカ、タイ

下記の国では、食品中のトランス脂肪酸濃度の表示を義務づけています。

韓国、中国、香港

「身体に悪くない」という説

2005~2007年度に実施した調査研究で、日本人が食品からとっているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96グラムであると推定されている通り、日本で販売されているマーガリンにはトランス脂肪酸が、さほど含まれていないとも言えます。

マーガリンは油脂の硬さを調節するために「部分水素添加油脂」を原材料の一部として用いています。この部分水素添加油脂がトランス脂肪酸の生成を助けるといわれていることから、マーガリンにはトランス脂肪酸が大量に含まれているので、食べない方がよいという俗説が広まったようです。

過去のものは「現在のマーガリンに比べれば」多かったようですが、もともと日本人はWHOの基準を上回るほどのトランス脂肪酸を過去も現在も摂取していないそうです。

日本国内のマーガリンを製造している各社の企業努力により、上述の「部分水素添加油脂」を使わなくても、マーガリンの硬さを調節する方法などを開発しました。

その結果、低減前でも問題のある量ではなかった「トランス脂肪酸」の含有量を、そこからさらに1/10まで減らした企業もあるほどです。今や、トランス脂肪酸だけを見たら、バターよりも少ないとも言われており、より安全性が増しましたという説もあります。

とはいっても、外食が多い人や加工食品を多く摂っている人は、自分の摂取したトランス脂肪酸を計算することもできないので、確実に安全の範囲内とは言い切れないと思います。

おすすめのマーガリン

2005~2007年度トランス脂肪酸などの危険性を考えると、基本的にはマーガリンは避けて、オリーブオイルなど他のオイルで置き換えられると良いと思います。

しかし、サンドイッチなどの温めていないパンに塗ったりする場合、やはりマーガリンは便利な存在です。そんな場合は、低トランス脂肪酸のマーガリンというものも販売されていますので、購入候補にしてみてはいかがでしょうか。

トランス脂肪酸が完全に入っていないマーガリンというのは、現段階の日本では存在しないのかもしれません。わたしの方では、そのような商品をまだ確認できていません。

「SL Creations」マーガリン

「SL Creations」は、おいしさと安心・安全を徹底して追求し、「疑わしきは使用せず」もモットーに食の安全に徹底してこだわるブランドです。

  1. 「化学的合成添加物」を不使用
  2. 製造ロット別に「放射能検査」を実施
  3. 包装に「環境ホルモンの疑い」がある物質は不使用
  4. 「遺伝子組み換え」原料を主原料にしない
  5. 「ゲノム編成技術」によって生産された食品は主原料にしない

「SL Creations」について詳しくは、下記の記事でご覧ください。

《参照》【SL Creations】オーガニック食材・料理へのこだわり

商品名 コンパウンドマーガリン
内容量 200g
原材料 植物性油脂、食用精製加工油脂、バター、食塩、脱脂粉乳、パーム油カロテン、植物レシチン(大豆由来)、香料
栄養成分 カロリー : 大さじ1(13g) 98kcal
たんぱく質 : 0g
脂質 : 10.6g
炭水化物 : 0.1g
食塩相当量 : 0.26g

バターを15%配合し、マーガリンとしての風味や口当たりを保ちながら、トランス脂肪酸の割合を大幅に減らした、抵トランス脂肪酸マーガリンです。

※トランス脂肪酸含有量:2.1g(製品100g当りの計算値)

商品情報は公式サイトでご確認ください。

《SL Creations》コンパウンドマーガリン

わたしもこのマーガリンを使っていましたが、上質な味と香りで、とてもおいしいです。安価なバターよりも濃厚で良い香りがして驚きました。

お問い合わせセンターに連絡をして、今後「トランス脂肪酸ゼロのマーガリンを発売する予定はありますか?」と確認してみましたが、そのような予定はないという回答でした。

現商品も、以前よりトランス脂肪酸をかなり減らしていて、今後もこの商品の販売になるということでした。

他の商品を見ても、とにかくこだわっている「SL Creations」の商品ですら、多少のトランス脂肪酸が含まれているので、技術的に完全にトランス脂肪酸をカットしたマーガリンを作るのは難しいのかもしれません。

【まとめ】マーガリン

この食品は「体にいい」「体に悪い」と様々な食品が議論されていますね。マーガリンもその代表格です。

わたしとしては、加工食品は自然にないものを人間が作った食べ物なので推奨しません。基本的に人間が消化していくのに相性が悪いと考えていますので、より加工されていない食品を好んで食べています。

ただ、工夫されていてトランス脂肪酸の含有量も少なく、便利でおいしいマーガリンもありますので、加工食品と上手に付き合っていければと思います。

オーガニックなオイルや食品などおすすめ商品をまとめているので、良ければショッピングのご参考にご覧ください。

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