あなたは、「食品添加物」がどんなものかご存知でしょうか。
- 良く使われる食品添加物とは?
- 食品添加物は一括表示できるって本当?
- 危険性や安全性について
わたしは、食事指導やファスティング(断食)指導をしている栄養士です。
本記事では、食品の成分表示に記載されているよく見かける食品添加物について解説していきます。本記事の主な情報源は「食品の裏側2 実態編」という本の内容です。
「調味料(アミノ酸等)」「pH調整剤」「グリシン」「加工デンプン」「増粘多糖類」などよく見かける添加物が、どんなものなのか知りたい方にお届けしたい内容となっています。
また、「食品の裏側2 実態編」という本の要約記事がありますが、その内容をさらに深めるための辞書的にもご覧いただけるものになっています。
「食品添加物」とは
食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。
食品の成分表示によく記載されている「食品添加物」についての解説をしていきます。
成分表示をみたときに、なんなのか良く分からないものや見たことのないカタカナの多くは食品添加物です。それらはどのように作られるのか、安全性は保障されているのかなど、解説していきます。
食品添加物は同じジャンルのものがいくつか入っている場合に、省略して一括表示できるので、パッと見て文字数が少ないからと言って、食品添加物が少ない食品とも判断できません。
たとえば、加工食品を食べたとき、食品添加物は単体で摂取することは少なく、複数の食品添加物を同時に摂取することになります。それは一括表示により気づかぬうちに複合摂取になっている場合も発生します。
実は、複合摂取の場合の安全性は確かめられていません。単体の実験でも、動物実験のみで、人間の場合はどうなのかは不明なものもあるそうです。
早速、具体的な食品添加物の解説をしていきます。
「調味料(アミノ酸等)」
「調味料(アミノ酸等)」というのは一括表示です。様々な添加物である調味料の集合体ですが、主体はグルタミン酸Na(ナトリウム)です。
いつの頃からか、製造側は「化学調味料」ではなく「うまみ調味料」と呼ぶようになりました。
作り方
「うま味調味料」は、かつて化学合成でも作れらていました。現在の作り方をご紹介します。
サトウキビから砂糖をとるとき、結晶化しない糖分「糖蜜」がでます。
ある食品メーカーがバクテリアの遺伝子を組み替えることによって、これらの「糖蜜」からグルタミン酸を吐き出す「菌」を作り上げました。
この「菌」が作り出すグルタミン酸を精製して、炭酸ソーダで酸・アルカリの中和反応によって「グルタミン酸Na(ソーダ)」という化学物質に作り上げます。
「グルタミン酸」というのは、天然に存在する物質で、白い結晶でほのかな酸味とうまみがあります。食品工業には味が薄くて使えません。
しかし「グルタミン酸Na」は完全な合成物質で、グルタミン酸に比べて非常に強いうまみを出す物質です。しかも、塩分が一緒にあると、より強いうまみを感じます。
安全基準の問題
この「うま味調味料」で問題になったことがあります。
2011年12月、かつお、しいたけのうまみと言われる核酸系うまみ調味料(リボヌクレオチドナトリウム)が、食品衛生法で定める「安全性基準」の審査を受けずに輸入、販売されていました。
遺伝子組み換えによる食品添加物の輸入は自己申告制であることから、申告がないと安全審査の対象にならず、無審査で大量輸入される恐れがあります。
また、グルタミン酸Naについては、遺伝子組み換え技術によって生産されても、最終物質がアミノ酸の純品であるから「健康影響の評価」は受けなくてよく、遺伝子組み換えの表示は不要となっています。
遺伝子組み換え
遺伝子組み換えとは、植物や動物など生物に新しい性質を加えることです。
生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせることです。
つまり、遺伝子の新しい組み合わせを作る点は従来の品種改良と同じことです。
遺伝子組み換え食品は、危険か安全かの議論がされますが、たしかなことは言えない状態です。
健康・食品に関する情報は常に最新の研究によりアップデートされていきます。数年前は健康にいいとされていたことが、今では不健康だと言われることもあります。
よって、遺伝子組み換え食品が気になる方は避けるのが良いですし、コスパなどのメリットも考慮して気にしないというのも選択肢のひとつです。
デメリットとして言われているのは、健康被害につながる可能性のほかにも、自然の生態系を壊す可能性などもささやかれています。詳しくは以下の記事でご覧ください。
《参考》【遺伝子組み換え食品とは】メリット・デメリット・任意表示制度の改正
「pH調整剤」
「pH調整剤」は、食品の腐敗防止や変色防止の目的で使用されます。
酢の物のように、食品は酸性の方が日持ちします。わたしたちが酸味を感じるのはpH=3程度なので、酸味を感じないギリギリのpHに調整します。
たとえば、リンゴ酸とリンゴ酸ナトリウムをほぼ同量添加すると、食品のpHは約4になります。この2つの配合比率を変えることで、目的のpHに調整できます。
pH調整剤は一括表示ですので、内容の内訳を知ることができません。
また、使用目的により「酸味料」と表示される場合もあります。
「グリシン」
「グリシン」は、主に食品を長持ちさせるために使用されます。弁当、パン、おかずなどでよく見かける食品添加物です。
ほのかな甘味のあるアミノ酸で、エビ、カニなどの甲殻類に含まれるなど天然にも存在します。かに酢、カニサラダの甘味料のほか、以下の一夜干しの調味にも使用されています。
また、食品につやとほのかな甘味を与えることから、ご飯、お惣菜などコンビニ食品に多用されています。
殺菌効果があり、「保存料不使用」とアピールするコンビニや外食チェーン店に使用されることで消費量が大きく伸びました。
作り方
安価に大量につくる方法をご紹介します。アルコールを酸化して「酢酸」をつくり、それに、塩素ガスを反応させ、「モノクロル酢酸」をつくり、さらにアンモニアを反応させ、グリシンを合成します。
モノクロル酢酸は、毒劇物の扱いで環境汚染のチェック品目です。
グリシンは中国産が主流ですが、2008年にグリシンの原料が除草剤向けに回されて不足して、価格が暴騰したことがありました。
想像もつかない工程を経て最終的に天然の物質と同じ分子構造に作り上げるというのが食品添加物の製法のひとつです。不純物が残らないことを願うばかりです。
安全性の心配
毒劇物を使用した方法で製造されようとも、最終的に天然の物質と同じ分子構造のものをつくれば、それは「食品添加物」として、わたしたちが口にする加工食品に入っている可能性があるのです。
しかも、グリシンに関しては「保存料不使用」とアピールして販売されている可能性が高く、むしろ体にいいと思って好んで選択している人もいるでしょう。
ただし、劇毒物のモノクロル酢酸を使用して作られたグリシンが危険なのかどうか、他の食品添加物と併用して使用した場合にどうなのかは、ハッキリとしたことが分かりません。
法律で許可されていますが、他の食品添加物と併用して使用した場合に組み合わせによる危険性などは調査されていないはずです。
なぜなら膨大な種類の食品添加物の中から、とある3種類使った場合、5種類使った場合など、様々な組み合わせで安全性を検証するのは現実的ではないからです。
「酢酸Na」
コンビニや冷凍食品に使われる日持ちをよくする添加物に「酢酸Na」があります。
グリシンと酢酸Naの2つが並んで表記してある食品を良く見かけます。これらは「日持向上剤」と呼ばれます。
「加工デンプン」
「加工デンプン」とは、デンプンを化学処理することで、ねばりを出したり、サラサラにしたり、特定の性質を持たせるものです。具体的には、酸素や酸を反応させたりします。
驚くほど多くの種類がありますが、日本では従来「添加物」ではなく「食品」として扱われていました。
それが、2008年に11種類について添加物として新しく追加指定されたのです。海外では、これらの加工デンプンは化学反応で作ることから以前から「添加物」として扱われてきたため、日本でも認めて「国際的調和」をはかったのです。
それ以外のデンプンは、従来通り食品扱いのままです。なお、この「加工デンプン」は一括表示で、何種類かがブレンドされています。
海外との輸入・輸出の取引を円滑にするために加工デンプンを食品ではなく「添加物」ということにしたのに、それ以外のデンプンはそのままです。それはあるべき姿なのか疑問です。
疑問は残るものの、それをわたしたちでは判断できないというのも現状です。「疑わしきは摂取せず」の精神もひとつの選択肢です。
成分表示の例
《白身魚フライのパン》
たとえば、こちらのラベルには「加工デンプン」の表示が2つもあります。
つまり、この白身魚フライのパンの場合、食品扱いの加工デンプンと添加物扱いの加工デンプンが使われているということになります。
①の加工デンプンは、恐らくフライ用の衣に使用し、やわらかさや油切れの改良に使われたものと思われます。
②の加工デンプンは、タルタルソースのとろみ目的で使用されている添加物の加工デンプンです。増粘剤という使用目的が表示されています。
他に、油が入荷した状態も作ることができるので、タルタルソース、カロリーハーフドレッシングなどに使われます。
EUと日本の対応
添加物の加工デンプンは、EUでは乳幼児向けの食品には合計使用量が5%以下にするという規則があります。
日本では2008年に日本ベビーフード協議会が8種類の使用可能と合計5%以下の自主基準を設定しました。
「リン酸塩(Na、K)」
「リン酸塩(Na、K)」は、黄リンあるいはリン鉱石からつくられる添加物です。リン酸の種類としは10種類あります。
リン酸塩は、単品で使われるより、複数が同時に使用されることが多く「リン酸塩(Na、K)」などと簡略化して表示されます。
どんなリン酸塩が、どれだけ使用されたかは分かりません。
《主な働き》
変色防止 | 飲料、漬物、みそ、つくだ煮などの変色防止として使用されます。近年、新しく認可されたEDTAも同様の働きをします。 |
粘着剤 | ハムやソーセージ、肉製品、水産ねり製品、麺類などに保水性・粘着性を高めるために使われます。 |
乳化剤 | プロセスチーズなどの乳製品の乳化剤として使用されます。 |
変性防止剤 | ポテトフライなどの冷凍食品の変性防止剤として使われます。 |
とても用途が広く、加工食品の現場で、とても便利な存在です。
リン酸塩の弊害
リン酸塩は、体内でのミネラル吸収を悪くすると言われています。同じような働きをするEDTAも同様のことが指摘されています。
最近では、腎臓への悪影響も指摘されています。東京農大短期大学部講師、松﨑氏の研究によれば、ラットに高リン化物を食べさせると腎臓が石灰化する「腎石灰化症」が見られたといいます。
「酸味料」
「酸味料」は、食品に酸味を持たせるための添加物です。色々な種類があり、使い分けられています。
たとえば、みりん風調味料や、漬物に乳酸、酒類にはコハク酸・酒石酸というように使い分けます。清涼飲料水にはクエン酸が好まれます。
するどい酸味ですが、炭酸水1本にクエン酸1gと砂糖50gを溶かすと、美味しいサイダーになります。
ただし、「酸味料」と表示は一括表示なので、どんな物質が入っているか知ることができません。
いずれにしても、添加物として使われるものは化学合成された純品ですので、「酸」としての作用が強いのです。
ポットの洗浄剤にはクエン酸、リンゴ酸が利用されますし、火力発電所でも同様に洗浄のために使われます。
危険性
東京都福祉保健局の報告では、水筒に入れていたスポーツドリンクを飲んだ子どもたちが、頭痛・めまい・吐き気をもよおしたそうです。
原因は、スポーツドリンクの酸味料が水筒内部の銅を溶かした結果、銅の中毒を起こしたのです。
運動をしている人は、体に良かれと思って飲んでいる方も多いであろうスポーツドリンクの酸味料は水筒の銅を溶かすとは驚きです。
薄めているとはいえ、それを人が飲んでも害はないのかと心配になります。
様々な使われ方
意外なところでは、海苔の養殖においてアオサ防止のために、海苔の網を酸で洗います。これを「酸処理」といいます。
昔は、塩酸を使っていましたが、現在ではリンゴ酸が使われる場合もあります。
海水の酸度「pH」が下がるのでアサリによくないのではという研究報告もあります。
「増粘多糖類」
「増粘多糖類」は、食品のとろみや固さの調整、ツヤ出し、保水性、ジャムのペースト、ゼリーなど、様々な性質を食品に与えます。
増粘多糖類は、一種類ではなく複数で使われることも多く、簡略化されて一括表示と同じように扱われます。
中でも家庭の調味料などでよく見かけるのが「キサンタンガム」で、主にドレッシングに使われています。
これは面白い性質で、ドレッシングのビンが普通に立っているときは硬めのとろみを持ち、中身が分離しません。ところが、瓶を傾けると、とたんにサラサラした粘りに変わり、野菜によく絡みます。
作り方
原料は特定の細菌(遺伝子組み換え)が、生産する粘液です。よく加工デンプンと併用して使われます。
また、「カラギナン」は、天然の増粘多糖類で、海藻から抽出されます。いくつかの種類があり、寒天、ゼリーのように固める「ゲル化剤」や、とろみをつける「増粘剤」として使用されます。
安全性の問題
JECFAでは、規格を定めており、EUもこれに準じています。カラギナンの中に含まれる分子量5万以下の成分は5%以下です。
しかし、日本では公的に何も定められていません。したがって、2012年5月に日本製のゼリーがEUで輸入差し止めになりました。
安全性に不安にある規格外のカラギナンが日本の市場に入ってくる可能性があります。
「ベーキングパウダー」
「ベーキングパウダー」はお菓子やパンなどに使われる「膨張剤」ふくらし粉です。
昔はふくらし粉といえば重曹でした。重曹は、化学名を「重炭酸ソーダ」といいます。ベーキングパウダーはこの重曹を含む何種類かの化合物の一括表示です。
重曹は加熱されることによって炭酸ガスを発生することでふくれます。このとき、酸性の物質があると炭酸ガスの発生が多くなります。
このため、酸性の膨張剤として、ミョウバン、酒石酸水素カリウム(ケレモル)、GLDなどが使われます。
ベーキングパウダーには、これらを含めて約10種類の添加物の中から組み合わせて使用して、ふくれ方の調整をします。
安全性の問題
中でもミョウバンは、ナスの色あげ、うに、くらげにも使われています。ところが、このミョウバンにはアルミニウムが10%ほど含まれています。
アルミニウムは、かつてアルツハイマー病との関連が疑われました。その後、直接の因果関係はないことが分かりましたが、過剰なアルミニウムを摂取すると、血中で他の物質と結合し(トランスフェリン)脳に悪影響を与える可能性が指摘されています。
国連のWHO、JECFAでは、アルミニウムの「週間摂取量」を定めています。体重55kgの大人で1日あたり8mgです。
食品の原材料表示に膨張剤(アルミフリー)、ベーキングパウダー(アルミフリー)と書かれているものもあります。これは、ミョウバンを使っていないという意味です。
ミョウバンに含まれるアルミニウムが気になる方は、アルミフリーと書かれている膨張剤・ベーキングパウダーを使用すると良いでしょう。
「合成保存料」
特定の添加物を使用していないことを誇張して表示している食品をよく見かけます。
たとえば、「保存料」といえばソルビン酸を連想し、怖い添加物として良くないイメージがあります。それを使わないことで良いイメージをアピールしたいのでしょうが、実はそれに代わる「日持ち向上剤」が使用されています。
ある添加物を悪者にして、他の添加物を使っていては、本質的な問題を見失ってしまいます。
そもそもソルビン酸は使える食品も少なく、添加量も厳しく制限されています。幕の内弁当だと、使える食品は、ウインナー、かまぼこ、くらいです。
ソルビン酸の使用
昔は、かまぼこ屋さんや漬物屋さんの食品工場は、外気の入る解放された空間で、チルド流通もなく、売り場も常温というじょうたいでしたので、ソルビン酸は不可欠な添加物でした。
ところが漬物は真空パックに入れ、65度の湯せんで殺菌する方法に変わり、かまぼこ工場も閉ざされた作業場で加熱後の製品管理が向上しました。
よって、今はソルビン酸を使うところは減ってきています。
もともとソルビン酸に頼らず製造をしてきたかまぼこ屋さんも多くあります。たとえば、売上が100億円以上の大手、フジミツでは、品温、菌数、衛生管理に努め、製品の99%以上はソルビン酸を使用していません。
企業努力と低温流通の発達で、結果としてソルビン酸の需要はこの15年間で3分の1に減少しています。
ソルビン酸 不使用のリスク?
また、ソルビン酸の不使用は、食品ロスの増大と食中毒発生の危険性が増すという意見があります。
しかし、食品ロスは別の要因であることが多く、一概にそうとは言えません。
もともとソルビン酸は使用できる食品が少ないこと、食中毒の発生は夏場より冬場の方が多く、その原因がノロウイルスであることも考えると、ソルビン酸が原因になっているとも言い切れません。
「合成着色料」
合成着色料は、タール系色素と呼ばれます。これは石炭タール中に含まれている成分から合成されるからです。
合成着色料は、混ぜ合わせればどんな色でもつくり出すことができます。
たとえば、意外なところで「ビタミンB2」は味噌に使われています。ビタミン強化ではなく、あざやかな黄色の着色料なのです。
わたしたちは、くすんだ色の食べ物より、美しくきれいなものが好きです。
しかし、嗜好品はまだしも日常で口にする食材までもが、ごまかし的な美しい色であることを優先させるのかどうか、考えてみましょう。
鮮やかできれいな食品というより、一見、食品添加物とは無縁そうな味噌のように自然な色でキレイにみせるために着色料が使われていることがあります。
がっつりメイクをするのではなく、ナチュラルメイクをするのと似ているかもしれません。日本人にはナチュラル風の美しい状態が好まれるのでしょうか。
《参考》【天然着色料と合成着色料】使われている食品の種類・表示・使用基準
「天然着色料」
天然着色料の原料の多くは植物で、他には動物、鉱石などが利用されます。
日本では、約100種類の天然色素が利用され、量的にはカラメル色素が90%を占めています。
色素の表示には原料名を書く場合と、分類名を書く場合があります。クチナシ色素、紅こうじ色素は原料名を書き、カロテノイド色素、野菜色素は分類名を書きます。
分類名を書く場合は、原料を知ることはできません。
3つの分類
天然着色料は3つに分類されます。1つは合成着色料と同じ扱いをするβ-カロチンと水溶性アナトーです。2つ目は、既存(天然)添加物名簿に記載されたもので、3つ目は、抹茶、イカスミなどもともと食品であって、着色目的のものです。
天然物とはいえ、チーズなどの着色に使用されてきたアナトー色素は7種類あり、それぞれに許容量が設定されています。
安全性の問題
残念ながら、天然色素もすべてが安全とは言えません。2004年にアカネ色素が発がん性により禁止になりました。
それ以前の専門書には「アカネ色素には変異原性、発がん性も認められない」と明記してあります。
また、色素の不純物も気になるところです。
日本には色彩を楽しむ食文化があります。しかし、食品の本質や品質をごまかして、わたしたち消費者の判断を誤らせる着色は、合成・天然を問わずに許されないものです。
三温糖やザラメをカラメル色素で茶色にするのも疑問に思えます。
《参考》【天然着色料と合成着色料】使われている食品の種類・表示・使用基準
「合成甘味料」
合成甘味料は、ノンカロリーやカロリーオフに多用される合成甘味料です。色々な種類がありますが、中でも業界で「御三家」といわれる、非常によく使われるものがあります。
- 「アスパルテーム」
- 「スクラロース」
- 「アセスルファムK(カリウム)」
合成甘味料といえば、サッカリン、サッカリンナトリウムが有名ですが、かつて発がん性がいわれて一時禁止になったことから、消費者のイメージが悪く、消費量の伸びはありません。
しかし、審議を終えたサッカリンカルシウムが2012年12月に認可されました。
①「アスパルテーム」
アスパルテームは、フェニルアラニンとアスパラギン酸というアミノ酸を合成(メチルエステル化)して作られます。
このため、「アミノ酸からできた甘味料」とアピールされていますが、遺伝子組み換え技術から作られています。
「アスパルテーム(フェニルアラニン化合物)」と言う風に、表示に(フェニルアラニン化合物)を併記するのは、フェニルケトン尿症の方に注意を促すためです。
安全性については様々な議論があり、米国でも過去に二転三転しています。現在でも安全性を疑問視する学者もいますが、多くの食品に使われています。
使用基準はなく、どんな食品にも使えます。低カロリー甘味料と呼ばれますが、砂糖の200分の1の使用量で同じ甘さが出せるので、カロリーはほとんどないと言えます。
しかし、カロリーが低くても、合成甘味料(人工甘味料)で血糖値が上がるという研究結果があるので要注意です。
《参考》【本の要約:後編】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ
②「スクラロース」
スクラロースは、砂糖に一番近い甘味で、砂糖の600倍の甘さがあります。清涼飲料水のほか、お菓子類にも使われますが、各食品別に使用量の規制があります。
製法は、砂糖に塩素を反応させて作るのですが、この製法が「砂糖からつくられた甘味料」とアピールされます。
パンやビスケットのように油、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を含むものを200℃くらいで焼くと、クロロプロパノール類の塩素系化合物が生じます。
1999年に認可、指定されましたが、業界では「待ってました」と言わんばかりに採用し、この10年で1万品目以上に使用されています。カロリーオフ、カロリーゼロの飲料を中心にドレッシング、合わせ調味料などです。
しまいには、生産量が追いつかず価格が暴騰したこともあります。
また、自然分解が遅く、下水道からスクラロースが検出されることがあります。
③「アセスルファムK」
「アセスルファムK」は、砂糖の200倍の甘味があり、甘味の立ち上がりが他に比べて早く、加熱しても壊れづらいのが特徴です。
大手コーラ2社はカロリーオフ飲料に採用したことから火がつき、今では缶コーヒー、調味料、アイスクリームなどにも広く使われるようになりました。
年間消費量は、2011年度で230トンを軽く超え、御三家ではトップです。
酢酸から合成され、ドイツからの輸入品が多いのですが、近年は安い中国産も入り込むようになりました。
また、ほとんどが自然分解されず、環境への蓄積が心配です。
この甘味料も、各食品別に使用については添加する量に上限の規制があります。
「ネオテーム」
このほか「ネオテーム」は、2007年に新しく指定された合成甘味料で、アスパルテームを原料に、熱の安定性、pHの安定性をさらに向上させたものです。
アスパルテームの改良品といえるでしょう。甘味倍率が高く、添加量が少ないので、フェニルアラニン化合物を含むという表示は不要になります。
甘さはなんと砂糖の1万倍です。甘さには雑味がなく、糖類との相性もよいので、使用するメーカーも500社を突破しています。今後はもっと消費量が伸びると思われます。
これらの合成甘味料を支えるのは甘い物を食べたいけど、カロリーが気になるという、カロリー恐怖症です。ですから、人工甘味料は常に品薄状態です。
しかし「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という話題の本によると、人工甘味料は太りやすいと書かれています。
人工甘味料はカロリーが低くても砂糖と同じくらいインスリン値を上げます。つまり、とても太りやすいです。本を要約した記事があるので良ければご覧ください。
《参考》【本の要約:後編】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ
「天然甘味料」
天然甘味料と呼ばれる添加物は15種類以上ありますが、一般によく見るのは以下の2つです。
- 「天草(カンゾウ)」
- 「ステビア」
①「天草」
「天草」は、グリチルリチンとも呼ばれ、煮出し汁は古くから漢方薬にも利用される植物です。
添加物の「カンゾウ抽出物」も熱水で抽出し、粉末化したものです。さらに、甘味の改善や安定をさせるために、酵素処理でブドウ糖をくっつけたり、酵素分解で甘味を抽出物の5倍に強めたりするのです。
また、化学反応させたグリチルリチン酸(二)ナトリウムは、しょうゆ、みそに限って使用が認められ、グリチルリチン酸(三)ナトリウムは1991年に禁止になりました。
しかし、表示はすべて「甘味料(カンゾウ)」となります。
天草は甘味をつけるのが目的のほか、塩分の高い食品の塩カドをやわらげるための利用価値も大きいです。
②「ステビア」
「ステビア」はハーブの一種ですが、添加物としての「ステビア抽出物」は熱水での抽出方法でつくられます。
同じように甘味の強さ、安定性改善のために品種改良されたり、酵素処理でブドウ糖をつけたものなど色々な種類があります。
中には安全性を疑問視されるものもありますが、表示はいずれもまとめて「ステビア」です。
天草もステビアも使用基準がないので、様々な食品、特に低塩梅干、塩からなど伝統食品に多く使われています。
「合成香料」
合成香料は、化学物質を組み合わせてつくります。
まず、天然の香りの成分を分析します。たとえば、天然のイチゴの香りからは、約250種の香り成分が分析されています。この主成分を香料(添加物)で組み合わせます。
《イチゴの香料》
かなりの化学物質が使われていることに驚かれるでしょう。これだけの添加物を使用しても「香料」という一括表示でいいのです。
香料はフルーツ系のみならず、缶コーヒー、ペットボトルのお茶にも使用されています。
「青葉アルコール」という香料は、緑茶の香りがします。濃い味のお茶の表示に香料とあれば、このような緑茶の香りを強くする香料が使われている可能性が高いです。
「協和香料事件」
香料については、「協和香料事件」という苦い歴史があります。
2002年5月、協和香料化学が、当時違法であった香料をしようしていたことが判明し、その香料をしようした食品の回収命令が出されました。
この香料を使用していたメーカーは200社にも上っており、回収された食品は1600品目以上になり、それは大変な騒ぎとなりました。
JTの関連企業も、桃の飲料水に違法の同じ香料を使用していたことが発覚しました。当時の新聞には、連日メーカーのお詫び広告が掲載されました。
当時の違法品が、認可されている
ところが、なんということか、これが今なら何の問題にもならないのです。
つまり、当時は違法だった香料が、今ではすべて認可されているのです。国際的に協調性をはかりましょうという「国際汎用添加物」なのです。
当時違法で現在は合法という食品は他にもあります。
輸入品の業務用ソースに使われていた乳化剤「ポリソルベート」は、2008年当時、違法で回収されましたが、現在は国際汎用添加物として認可され、添加された輸入品が販売されています。
他国と足並みをそろえることも必要ですが、過去に違法にした成分を国際的な取引をスムーズにするために認可されたというのを聞いてどのように思われますか?
研究が進み安全性が確認されたから、という理由なら納得できますが、国際的に協調性をはかるためというと、健康被害が心配になります。
「食品添加物」と同様の働きがあるもの
食品添加物には分類されませんが、同様の働きがある成分についてご紹介します。
「アミノ酸液」
「アミノ酸液」は添加物ではありません。大豆を塩酸で分解してつくる調味液です。醬油(しょうゆ)・ソースの増量や置き換えに使用されます。
タンパク質は色々なアミノ酸が連なってできているので、塩酸でタンパク質をアミノ酸液に分解します。
塩酸は毒劇物ですが、添加物として認められているのです。コストダウンのための省力、大量生産の典型です。
その後、塩酸はカセイソーダで中和されることで、水と塩になります。塩酸とカセイソーダは最終食品には残らないということで、表示は不要です。
しょうゆには、ホンモノと、もどきがあります。昔は、このように化学的につくられたもどきしょうゆは「化学しょうゆ」とも呼ばれていました。
「たんぱく加水分解物」
「たんぱく加水分解物」は、天然系の味の濃い調味料です。
この調味料は、アミノ酸液に、加工デンプンを加え、粉末にしたものと考えてよいでしょう。大豆などのタンパク質を塩酸で分解したアミノ酸液は「うまみのもと」になります。
加水分解とは、酸またはアルカリの水溶液で分解するという化学用語で、わかりづらいですよね。消費者に伝わりやすいよう「タンパク質塩酸分解物」と表示してほしいものです。
このとき使われるタンパク質は、大豆、小麦グルテンのような植物性、および肉、魚類などの動物性タンパクです。
植物性は主に和風の味、動物性は洋風、中華風のコクのある味に利用されます。
過去に、あるメーカーが鶏の羽毛を原料に製造していたこともあります。著者が味見をしたところ、とても後味の悪い強いうまみだったそうです。
タンパク加水分解物を一般の方が味見すると、みんな味より先にその異臭に驚きます。なめてもビックリ、スナック菓子、ラーメンの味なのです。
アレルギー問題に取り組まれている松田医師は、タンパク加水分解物の配合されたスナック、だしの素が子どものアレルギーの原因となっている可能性があると警告されています。
日本のしょうゆは、EUで禁止
塩酸分解法には1つの疑惑があります。タンパク質の分解には塩酸を使うことにより「MCPD」「DCP」という塩素化合物が発生します。
2001年6月、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会において、MCPDの発がん性は認めないが、ラットを使った実験によって腎臓に影響があるとされ、DCPについては発がん性が認められました。
これを受けてMCPDの最大基準値が食品規格委員会(CODEX)により設けられました。
ところが日本では規制はありません。生協をはじめ、業界では自主的な基準を設けていますが、その値はEU・米国に比べて非常にゆるいものです。
2009年、欧州食品安全機関が、日本のしょうゆを回収、輸入禁止という措置をとりました。それは、MCPDが検出されたからです。日本では出回っているものがEUではアウトなのです。
アミノ酸液と、それを粉末化したタンパク加水分解物は、現在中国、東南アジアで作られます。
そこでは純度の高い特級品はEU、一級品は米国、それ以下は基準のない日本へ輸出する図式ができあがっています。
このような例は、他の添加物にもあります。
「酵母エキス」
「酵母エキス」は、酵母から抽出される強いうまみの天然調味料です。化学調味料よりもコスト高になるものの、「天然」「化学調味料不使用」とうたえて、高く売れます。
何より昆布やかつおなどの素材にうまみがなくても風味(香り)さえあれば、酵母エキスがうまみを出しますから、安い素材を使えますし、かつおや昆布の量も少なくてすみます。
酵母エキスを使用した「だしパック」に「料亭の板前さんの味」とうたうメーカーがあります。台所にないものが入っているだしパックは、工業的な味で後味も悪く、風味が弱い不自然なものが多いです。
もちろん、酵母エキスを使っていない本来の「だしパック」も販売されていますので、気になる方は原材料をチェックしてみましょう。
【まとめ】食品添加物の用語集
成分表示をチェックしてみるとよく見かけるが、いったい何なのか分かりにくい食品添加物をまとめました。
また、食品添加物には分類されないが、同様の働きをする成分もいくつか紹介しました。
わたしは「食品添加物を一切とらないようにしよう」「食品添加物はとにかく危険だ」ということが伝えたいのではありません。
食品添加物による健康被害や環境破壊も心配なのも事実です。
しかし、食品添加物のおかげで保存ができるようになった食品、便利に食べられるようになった食品がたくさんあり、その恩恵も受けています。
「疑わしきは使用せず」
「疑わしきは使用せず」がベストだとは思いますが、現代を生きるわたしたちが完全に実行するのは、かなりの労力と費用がかかります。
基本的に、外食をはじめ、コンビニ、お惣菜、お弁当など作られた食事を全て避けることになるので、自炊をする生活がメインになります。しかも、お惣菜や、かけるだけ・混ぜるだけなど簡単に作れる料理キット
そうすると、家族や友人など身近な人たちとの人付き合いも難しくなります。
一括表示が許可されているので、ブラックボックスになっている部分があることなど、まずは真実を知って、選択することが大切です。
「疑わしきは使用せず」をモットーに食品を販売しているメーカーもあります。