あなたは普段「成型肉」を食べていますか?
- 成型肉とは何のこと?
- 成型肉って身体に悪いの?マズイって本当?
- 成型肉を食べるときの注意点は?
わたしはオーガニック食品が好きな栄養士です。本日は「成型肉」とは何なのか、その表示義務などについて、ご説明していきます。
【成型肉】とは
「成型肉」とは、細かいくず肉や内臓の肉を軟化剤で柔らかくして結着剤で固め、圧力を加えることで形状を整えたお肉です。成形肉とも書かれることもあります。
余ったお肉を使って作られることが多く、原価コストを抑えることができ、リーズナブルな価格で販売されています。
そのような説明だけ聞くと「危険性」は感じないと思いますが、どのようにバラバラのお肉をひとつの塊にしていくのかが、危険性を指摘される大きな理由です。
焼肉やステーキなどで食べる「切ったお肉」と、サイコロステーキのような「成型肉」は、違うものです。
また、「加工肉」という言葉も耳にすることがあると思いますが、とても似ているものです。具体的には「加工肉」という種類の中に「成型肉」が含まれています。
「加工肉」には、成型肉の他に、ハムやベーコン、ソーセージなどが含まれます。
なお、牛肉の赤身に牛脂や食品添加物などを注射した、「インジェクション加工」と呼ばれる処理を施したお肉は成型肉であるとは限りません。
「インジェクション加工」とは
インジェクションとは注射・注入という意味です。
肉の内部に牛脂などを注入し、おいしくやわらかく加工されたお肉がインジェクション加工肉です。人口の霜降りを作ることができます。
インジェクション加工肉は肉の内部に菌が入り込みやすく、菌を死滅させる為によく焼く必要があります。飲食店で成型肉を食べる際は「レア焼き」ができないようになっているはずですが、おうちで調理する際も気を付けましょう。
「成型肉」の主な作り方
- 「柔らかくする」余ったお肉の筋や繊維を切断して「軟化剤」により人工的に柔らかくする。
- 「形を整える」1つのお肉につなげる。水や酵素や卵、食品添加物などが「結着剤」として使用される。
成型肉は、バラバラに集められた肉を「軟化剤」「結着剤」などの食品添加物を加え、さらにジューシーさを出すために脂肪分も添加しています。
どれほどの割合で食品添加物が添加されているのかは商品によっても違うでしょう。また、生のお肉に色々と加工をして販売するので、生産している工場の衛生面も、気になるとことですね。
軟化剤や結着剤には、主に牛乳由来のカゼインナトリウム、カラギーナン、アルギル酸塩、アルカリ製剤などが使用されています。
「軟化剤」
軟化剤とは、チューインガム軟化剤とも呼ばれ、柔らかさを保つために添加される食品添加物のひとつです。
チューインガム軟化剤として認められている添加物は3つあり、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどが該当します。
「結着剤」
結着剤は、たんぱく質食品の保水性や弾力性を高め、変性を防止するといった役割で使われます。中にはカルシウムの吸収を阻害するなど人体に悪影響を及ぼしうる物質もあります。
成型肉の他には、かまぼこ、ハム、ソーセージなどに食品添加物として使用されています。
「成型肉」の特徴
作り方の工程を踏まえて、成型肉の特徴をまとめていきます。
「価格が安い」 | 半端に余ったお肉を集めて加工した商品なので低コストで購入できます。 |
「肉の筋がなく柔らかい」 | 余ったお肉の筋や繊維を切断して「軟化剤」により人工的に柔らかくしているので、本来のお肉の食感とは明らかに違います。 |
「肉汁が多い」 | 牛脂を混ぜたり、インジェクション加工をされているお肉の場合、お肉に脂肪を注入しているので、本来のお肉では考えられないくらいの肉汁が出ます。 |
「成型肉」はマズイのか
カットしたお肉だと繊維があるのでしっかりとした歯ごたえがあります。一方で、成型肉は細かいお肉の筋や繊維を切断して繋ぎあわせたお肉なので、肉本来の歯ごたえがなく、独特の柔らかさがあります。
おいしいかどうかは好みによりますが、ミートボールやハンバーグのような食感に近いと思います。
また、成型肉かカットしたお肉かどうかは、歯ごたえが明らかに違うので食べたときに区別する大きなポイントになるでしょう。カットしたお肉のつもりで食べると不自然に柔らかいと感じるでしょう。
もうひとつの見分け方としては、切った際に繊維が同一方向にきれいに並んでいないので成型肉だと分かります。細かい肉を繋ぎ合わせているのでそのようになります。
「成型肉」のカロリー
全ての商品がそうではありませんが、たとえば成型肉のサイコロステーキを焼いたとき、あの小さいブロックから恐ろしいほどの脂が出てきませんか?ご自身で焼いたことがある方なら、お分かりだと思います。
それは、通常のお肉にありえる脂肪分の割合ではなく、肉の脂肪分が多く混ぜられていたり、インジェクション加工で脂肪が注入されているから実現できる配合なのです。
「安くておいしい」を実現するために、添加物や牛脂を多く含み、カロリーや脂質が高くなっている可能性が高いと言えます。
「成型肉」の危険性
成型肉が危険と言われる理由は次の通りです。
- 「食品添加物」が含まれている
- 「肉の鮮度」への不安
作り方の工程もお伝えした通り、形成肉は食品添加物によって形を維持しています。どのような種類の食品添加物が含まれているかは表記してありますが、どのくらいの量の食品添加物が含まれているのかなど不明な点もあります。
よって「形成肉」は危険だとか、身体に悪いと言われています。
次に「肉の鮮度」についてです。鮮度が落ちた部位や内臓なども混ざっている可能性があると言われています。すべての商品がそうではないと信じたいですが、疑わしきは食さないの方針の方も多くいます。
「食中毒」の問題
複数の工程を経て細かくした肉を混ぜ合わせるため、腸管出血性大腸菌(O157など)の食中毒菌が肉に入りやすくなります。
肉をカットした通常のステーキは、サーロインやヒレなど牛の筋肉に相当する部分が使われ、O157などの食中毒菌がたとえ存在したとしても肉の内部には存在しません。
仮に、肉の表面に菌がいたとしても食べる時に表面を焼けば菌は死滅します。普通のステーキ肉がレアで食べられるのはそのためです。
しかし、成型肉は肉の内部に菌が入っている可能性があり、肉の表面を焼いただけでは菌は死滅しません。成型肉を加熱不十分な状態で食べると食中毒を起こす可能性があります。
成型肉のサイコロステーキなどを食べる際は十分に加熱しましょう。
2009年には、ステーキレストランチェーン「ペッパーランチ」で、成型肉を使用した「角切りステーキ」の加熱不足から、病原性大腸菌による食中毒が発生しています。
食品衛生法では成型肉を提供する場合、十分な加熱が必要と表示するよう義務づけています。
「成型肉」を食べるときの注意
サイコロステーキなどの成型肉は、基本的にルールに乗っ取って加工されたお肉なので、食べたら急に病気になるということはありません。
しかし、長期的な視野で見た場合に、どうなのかという点でも心配になりますよね。人によって摂取している量も違えば、性別や年齢、体格などで身体への影響も違うと思います。
気になる方向けに、加工肉を食べる際に気を付けると良いことをご紹介します。
- 加熱する
- 原材料を確認する
- 賞味期限・製造年月日に注意
- 食物繊維を含む食品の後に食べる
① しっかり加熱する
成型肉は、生産の過程でさまざまな加工がされるため、どんなに衛生環境が整った工場で作られたとしても、通常のお肉よりは菌が混入し、食中毒を引き起こすリスクがあります。
また、同時に空気に触れやすいため、菌が繁殖する可能性も高まっています。
食中毒などのリスクを減らすべく、成型肉を食べる際は、しっかりと中まで火を通しましょう。きちんと火を通せば、菌は死滅します。
② 原材料を確認する
食品アレルギーをお持ちの方は普段から気を付けているのでご認識かと思いますが、成型肉は、生産過程で卵や牛乳が使われていることがあります。
ハンバーグを作る際にも、お肉の形をつくるために卵や牛乳を混ぜることがありますよね。ハンバーグも加工肉ですね。
ただ、お家で作る際は、食品添加物が使われていませんし、冷凍食品やお惣菜として販売しているハンバーグと、ご自宅で作ったハンバーグは原材料がかなり違うことでしょう。
乳製品や卵のアレルギーのある方が、市販のサイコロステーキなどの成型肉を召し上がる際は、原材料を確認が必要です。
③ 賞味期限・製造年月日に注意
少しでも新鮮な状態の方が良いので、賞味期限・製造年月日を確認するのも良いでしょう。
しかし、注意しないといけない点は、余ったお肉のを集めて加工し、成型肉になった日が製造年月日となっています。なので、製造日が今日だからといって新鮮なお肉ということではありません。
多くの成型肉は、通常のカットしただけのお肉よりも賞味期限が長いです。食品会社からすると扱いやすく安価で、販売しやすいお肉とも言えます。
当然のことではありますが、生のお肉を加工しているので、品質を維持するために食品添加物が使われています。
反対に、焼肉や炒め物、煮物に使うようなカットされたお肉は、添加物の使用が禁止されています。それは、鮮度など正しい情報を消費者に届けるためです。
④ 食物繊維を含む食品の後に食べる
成型肉のカロリーや脂質が気になる方であれば、成型肉を食べる前に食物繊維を多く含む野菜類を先の食べておくと良いでしょう。
そうすることで、栄養吸収がゆるやかになります。また、満腹中枢も刺激されやすくなるので食べ過ぎ防止に繋がります。
食物繊維は「栄養を摂る」のではなく「吸収を阻害する」ものです。あまり身体吸収されたくないものを食べるときは事前に食物繊維を摂取して阻害するのも作戦のひとつです。
「成型肉」の表示義務
お肉を購入する際に、買うつもりがないのに成型肉を買ってしまうといった間違いがおきないように表示義務が設けられています。
《参照》消費者庁
「ビーフステーキ」「ステーキ」との表現は禁止
牛の成形肉を焼いた料理のことを「ビーフステーキ」「ステーキ」と表することは禁じられています。
※ここでいう「成型肉」とは、牛の生肉、脂身、横隔膜等に酵素添加物や植物たん白等を加えるなどして人工的に結着し、形状を整えたものを指します。成型肉、結着肉、圧着肉とも言われます。
成型肉を「ビーフステーキ」「ステーキ」と表示した場合、一般消費者は生鮮食品の肉類に該当する「一枚の牛肉の切り身」を焼いた料理と誤認する恐れがあるからです。
そもそも、牛の成形肉を、一枚の生肉を焼いた料理と認識される表現を用いると、景品表示法第5条第1号(優良誤認)に該当し、景品表示法上問題となります。
なお、「一枚の牛肉の切り身」と誤認されるような表現は禁止されています。たとえば、「ビーフ」「健康ビーフ」「やわらかビーフ」「ビーフ(やわらか加工)」などです。
成型肉の料理を販売する際も、「成形肉使用」「圧着肉を使用したものです。」というように、この料理の食材が成形肉であることを明瞭に記載する必要があります。
【まとめ】成型肉
成型肉は、細かくなった肉を集めて固めたものです。インジェクション加工肉とは脂肪を注入したお肉のことで、成型肉にインジェクション加工される場合と、カットされたお肉にインジェクション加工される場合があります。
成型肉の脂は、牛脂の場合やインジェクション加工の場合があります。
少しややこしいですが、一枚の牛肉の切り身と、成型肉は全然違うものです。成型肉は、すごく粗いハンバーグみたいなもので繋ぎわせたお肉です。
また、加工される過程で菌が入ってしまう可能性があることや、残ったお肉を使われたりすることも多く、鮮度や安全性は少し不安が残ります。
さらに、成型肉は食品添加物なしには作れない商品ともいえます。
皆さんのお肉選びの参考情報になれば幸いです。
《参照》安心・安全でヘルシーなお肉を、年中無休で365日お届け【ミートガイ】
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