【JASマーク】意味・種類・新たに制定されたJAS法を簡単に紹介

2021年(令和3年)4月に、JAS法の一部が新しくなりました。また、JISマークも一部変更されているのですがご存知でしょうか。

  • そもそもJAS法とは?
  • JASマークはどのように変わったの?
  • 新たに制定されたJAS法とは?

オーガニック(有機栽培)食品やコスメ愛用者で、栄養士のわたしがお答えいたします。

「JAS」とは何か

「JAS」とは、Japanese Agricultural Standards の略で、食品・農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格です。国内市場に出回る食品・農林水産品の品質や仕様を一定の範囲・水準に揃えるための基準となります。

新たなJASの展開

JASの改正ポイントなどは2021年(令和3年)4月に、農林水産省から発表されている資料データをもとにご紹介していきます。

《参考》農林水産省:JAS制度について

これからのJASは、食品・農林水産分野の競争力の強化に向け、事業者や産地の創意工夫を活かして多様な価値・特色を戦略的に「見える化」し「差別化」にも活用し易い枠組みにします。これを足掛かりとする国際化も推進しようということです。

従来のJAS制度 新たなJAS制度
品質の平準化(粗悪品の排除) 品質の平準化 + 事業者や産地の差別化・ブランド化
食品・農林水産品の品質 食品・農林水産品の品質・仕様 + 生産方法、事業者の取組、試験方法等
B to C + (B to B) B to C + B to B
国内市場を想定 国内市場 + 海外市場も視野、国際化も指向
役所主導の規格 事業者・産地からの提案を官民連携で規格化

市場ニーズの多様化や、海外取引の機会増大を考慮していきます。

「JASマーク」の種類

特色のあるJAS認証の内外における訴求力を高めるため、新たなイメージのマークを制定し、有機JASマークを除く3種類のマークを新マークに統合するとともに、その規格の内容を端的に示す標語をマークに付与しました。

また、マークの認知を高めるため、一般からの投票など内外の関心を高める方法で新マークの決定をしました。

種類は下記の通りです。

  • JASマーク
  • 有機JASマーク
  • 特色JASマーク(特定JASマーク・生産情報公表JASマーク・定温管理流通JASマーク)
  • 試験方法JASマーク

詳しい情報は、次の章でご紹介していきます。

JASマーク

品位、成分、性能等の品質についてのJAS(一般JAS)を満たす食品や林産物などに付されます。

では、新たに制定された「JAS法」をご紹介していきます。

日持ち生産管理切り花

「日持ち性の良い切り花」へのニーズが高いことから、2018年3月に切り花の日持ち性を向上させる生産管理の方法を規格化しました。次の効果が期待されます。

  1. 生産者に管理手法が浸透する。
  2. 国内外の取引で必要な情報や信頼を規格・認証で担保できる。
  3. 流通・販売関係者や消費者に広く訴求され、国内需要拡大・輸出拡大に寄与する。

規格の内容

  • 日持ちに影響を与える病害虫などを排除するための、衛生環境の保持に資する管理方法。
  • 衛生管理を担保するために必要となる生産管理体制
  • 採花から出荷までの積算温度を一定以下にコントロール(作業環境に応じて出荷までの時間を規定)など。

接着重ね材・接着合せ材

2019年1月に制定されたJAS法で、近年新たに建築材料として生産され始めた国産材料の統一的な品質・表示基準を規格化しました。

「接着重ね材」

「接着重ね材」とは、柱などに使⽤される⼨法の製材(製材ラミナ)を 、接着剤を⽤いて貼り合わせ⼤断⾯化した⽊質材料です。中⼤規模の⽊造建築物の梁などの横架材、 柱材として活⽤が期待されます。

「横架材」とは、建物の骨組みで横にかけ渡された構造材のこと。

「接着合せ材」

「接着合せ材」は、薄く挽いた製材(ラミナ)を接着剤で貼り合わせた⽊質材料です。主に丸太組構法で、建築物の壁を構成する木材としての活⽤が期待されています。

「丸太組構法」とは、丸太などの木材を横に積み上げて造っていく構法のこと。

「接着重ね材」と「接着合せ材」で制定された主な基準

  • 接着力
  • 曲げ性能
  • ホルムアルデヒド放散量
  • 製材ラミナの断面寸法など

接着たて継ぎ材

建物の構造耐力上、主要な部材でない間柱や胴縁などは、非JAS材の使用率が高いため、「反り・曲がり」等により、住宅施工後の壁の膨らみ等の不具合・苦情等が問題となっていました。

大手ハウスメーカーでは、既に接着たて継ぎ材を使用しているが、乾燥・たて継ぎ部などの製品の品質の公的な規格・基準がありませんでした。

そこで2021年2月に、間柱や胴縁などに使用される接着たて継ぎ材について、材面、たて継ぎ部などの品質を規格化しました。規格化することにより、次の効果が期待されています。

  1. 全国的な供給や調達が可能となり、新たな市場の形成
  2. ハウスメーカーの営業面において、JAS材が多く使われていることをアピールできる。
  3. これまで建築材料に用いることが出来なかった未利用材が、製品としての利用が可能となり森林資源の有効利用

主な基準

  • 接着の程度
  • 含水率
  • 材面の品質:節、集中節、丸身、貫通割れ等
  • たて継ぎ部の品質:節等の大きさ、フィンガージョイント(FJ)の形状等

フィンガージョイント(FJ)とは、端をギザギザにした2つをの木材を相互にはめ込んで接着する接合方法です。

有機JASマーク

有機JASを満たす農産物などに付されます。有機JASマークが付されていない農産物、畜産物及び加工食品には「有機○○」などと表示することができません。

有機料理を提供する飲食店などの管理方法

近年、飲食店などで有機(オーガニック)料理の取扱いを積極的に進める動きが拡大する一方、有機食材の由来や使用量を証明する等の共通ルールはなく、管理方法が不統一でした。

そこで、2018年12月に、有機食材の情報を正確に提供するための管理方法を規格化しました。次の効果が期待されています。

  1. 飲食店等における管理水準が向上する。
  2. 消費者が必要とする情報や信頼を規格・認証で担保される。
  3. 有機料理を望む顧客層の期待に応え、有機生産者の取組拡大に寄与する。

規格の内容

  • 方針などの策定
  • 従業員への教育訓練(有機食材の受入・保管、調理、衛生管理など)
  • 有機料理の数(有機食材を80%以上使用した料理を5品目以上提供)
  • 有機食材の受入・保管管理、調理、衛生管理(食材の区分管理、配合計画の作成とそれに基づく調理など)
  • 顧客への情報提供



特色JASマーク

明確な特色のあるJASを満たす製品などに付されます。以前まで使用されていた下記マークは、上記の特色マークに統合されました。

統一された「特色マーク」は、国内外において「信頼の日本品質」を一目でイメージできるよう、日本を象徴する「富士山」と、日の丸を連想させる「太陽」を組み合わせ、シンプルにデザインしたものを採用しました。

特定JASマーク 生産情報公表JASマーク 定温管理流通JASマーク

では、新たに制定された「JAS法」をご紹介します。

人工種苗技術による水産養殖産品

人口増加に対応するため、世界的に養殖の需要が増加する一方で、天然稚魚に頼る養殖では、稚魚乱獲が海洋資源の枯渇の原因との指摘がありました。また、SDGsでも海洋水産資源の保全の目標が設定されています。

《参考記事》【SDGsとは何か】17の目標一覧とその意味・課題を簡単に解説

2018年12月に、我が国が先行している天然稚魚を採補しない人工種苗技術による養殖産品の生産方法を規格化しました。次の効果が期待されます。

  1. 持続可能な養殖および海洋水産資源の保全に寄与。
  2. 持続可能な社会形成に寄与している養殖産品であることを流通・販売関係者や消費者に広く訴求することが可能に。
  3. 国内外の取引で求められる情報や信頼を規格・認証で担保。

規格の内容

  • 環境への影響の低減(周辺環境に影響を及ぼさない給餌量の維持、薬剤耐性菌出現抑制のための抗菌剤使用の低減、定期的な水質検査など)
  • 養殖中の逃亡・侵入防止措置
  • 労働者への配慮(安全衛生の維持、自動強制労働や差別の禁止など)

障害者が生産行程に携わった食品

下記の「農福連携(ノウフク)」の取組が推進される一方で、ノウフクの取組が広く認知されていない状況でした。

  • 農業分野での障害者就労の支援
  • 農業の担い手不足や障害者の就労先不足など農業・福祉における諸課題の解消

そこで2019年3月に、障害者が携わって生産した農林水産物及びこれらを原材料とした加工食品の生産方法及び表示の基準を規格化しました。
次の効果が期待されています。

  1. 障害者が携わった食品の信頼性が高まり、人や社会・環境に配慮した消費行動(エシカル消費)を望む購買層に訴求することが可能に
  2. 「農福連携(ノウフク)」の普及を後押しすることで、農業・福祉双方の諸課題解決ツールに

《参考記事》【簡単にエシカルの意味とは】消費・ファッション・スタバの取り組み

規格の内容

  • 障害者が作業しやすい環境
  • 農林水産物の主要な生産行程に障害者が携わっている
  • 障害者が携わった生産行程の情報提供
  • 加工食品において使用する原材料やその管理
  • 包装・容器等への表示の方法及び内容

青果市場の低温管理

青果市場内での低温管理による生鮮青果物等の品質維持を行うことが求められる一方、統一された低温管理基準がなく、取り組みは青果市場ごとに不統一でした。

そこで、2019年3月に、青果市場における低温管理を行うための施設・設備、低温管理の方法を規格化しました。次の効果が期待されています。

  1. 「入荷時の品質を低温管理で維持した生鮮青果物等の出荷が可能である青果市場」であることを出荷者、実需者や消費者に広く訴求することが可能に。
  2. 青果市場における生鮮青果物等の低温管理が標準化され、青果市場の整備における指針に活用可能に。

規格の内容

  • 十分な広さ、低温効果を保持する設備装置
  • 運搬車両の原動機(排気ガスを排出しない運搬車両)
  • 各行程での低温管理の方法
  • 低温管理を実施するための教育訓練

人工光型植物工場における葉菜類の栽培環境管理

人工光型植物工場を主な対象とした規格・基準がなかったため、2019年9月に人工光型植物工場における栽培管理、出荷管理、資材管理、従事者に対する管理及び教育訓練の基準を規格化しました。

次の効果が期待されています。

  1. 栽培環境管理能力をアピールすることが可能となり、取引が円滑化する。
  2. 世界でも他に類を見ない規格・認証として、植物工場の海外展開にも寄与する。

規格の内容

  • 顧客要求事項を満たす管理基準を自ら策定
  • 清浄区に昆虫などの進入防止等の設備を有する施設
  • 各行程での栽培環境管理の方法
  • 栽培環境管理を行うための教育訓練

持続可能性に配慮した鶏卵・鶏肉

日本の鶏卵・鶏肉の生産は、素びなの生産や飼料原料の入手において、極めて海外依存度が高く、海外で伝染病の発生や干ばつなどの不測の事態が生じた場合、国内の養鶏産業の事業継続が困難になる懸念があります。

※「素びな」とは、もとになる雛のことです。

そこで2020年3月に、国産鶏種・国産飼料用米の利用や鶏ふんの利活用等の基準を規格化されました。次の効果が期待され、持続可能性に寄与します。

  1. 海外依存に起因するリスクの低減が期待される。
  2. 未利用な水田の利活用の推進や食料自給力の向上を後押し。
  3. 人や社会・環境に配慮した消費行動(エシカル消費)を望む国内外の購買層に広くアピールすることが可能となるともに、国内養鶏産業の競争力強化に貢献

《参考記事》【簡単にエシカルの意味とは】消費・ファッション・スタバの取り組み

規格の内容

  • 国産鶏種・国産飼料用米の利用
  • 鶏ふんの利活用
  • アニマルウェルフェア・周辺環境への配慮
  • 従事者への適切な労働環境の提供

《参考記事》【アニマルウェルフェア】AW認証:世界・山梨県の取り組みと現状飼育

ノングルテン米粉の白製造工程管理

米の消費量が減少している中、パンやケーキ、麺類など、新たな用途への利用が期待される米粉の需要拡大は、米消費拡大の取組の一環として重要です。

海外では、グルテンフリー食品の需要は大幅に増加している中で、 ノングルテン(グルテン含有量が1 ppm(=1 µg/g)以下)な米粉は、海外でも高い評価を受けており、海外への輸出促進が求められている状況です。

そこで、2020年10月にノングルテン米粉の製造を行う事業者の製造工程における管理方法の基準等を規格化しました。次の効果が期待されています。

  1. 事業者は、ノングルテン米粉を製造できる管理能力の高さをアピール可能
  2. 既存の民間のノングルテン米粉の製品認証制度との二本柱で米粉の輸出拡大に寄与

規格の内容

  • グルテン含有量が1 ppm以下となるよう製造工程を管理
  • 各製造工程での管理方法
  • グルテンの混入リスクを管理できる施設、設備など
  • グルテン混入に関する責任者等の選任、対応策の実施

《参考記事》【グルテンフリーとは】意味ない?その効果とメリット・含む食べ物

試験方法JASマーク

試験方法JASを使用した試験の結果などに付されます。日本産品に多く含まれる機能性成分の統一的な測定方法を規格化しました。

新たに制定された「機能性成分の定量試験方法」をご紹介します。

べにふうき茶に含まれるメチル化カテキン

2018年3月に、べにふうきの茶葉およびその粉末中のメチル化カテキン(EGCG3’’Me)を定量するための妥当性を確認した試験方法について規定を制定しました。

粉砕した茶葉の測定試料から、30℃でリン酸/エタノール混合抽出溶媒によってメチル化カテキンを抽出し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いメチル化カテキンを測定する方法です。

メチル化カテキンとは

  • 茶葉中に含有されるポリフェノールの一種
  • ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する機能性が報告されている。
  • 「べにふうき」「べにふじ」「べにほまれ」というお茶の品種に多く含まれる。

ウンシュウミカンに含まれるβ-クリプトキサンチン

2018年3月に、ウンシュウミカンの可食部中のβ-クリプトキサンチン(BCR)を定量するための妥当性を確認した試験方法について規定を制定しました。

粉砕した測定試料からエタノールによってBCRを抽出し、水酸化カリウムでけん化し、BCRを分離精製し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いてBCR濃度を測定する方法です。

「BCR」はパルプ(砂じょうの破片やじょうのう膜など加工副産物)に多く含まれると言われています。

β-クリプトキサンチンとは

  • 果物や野菜等の含有されるカロテノイドの一種。
  • 骨粗しょう症予防など骨の健康維持に役立つ機能性が報告されている。
  • 「ウンシュウミカン」「ポンカン」「はるみ」というカンキツ類に多く含まれる。

ほうれんそうに含まれるルテイン

ほうれんそうの可食部中のルテインを定量するための試験方法について、妥当性を確認した上で、2019年1月に規定を制定しました。

粉砕した測定試料を水酸化カリウムでけん化し、ルテインを分離精製します。ヘキサン/酢酸エチル混合液でルテインを含む不けん化物を抽出し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いてルテイン濃度を測定する方法です。

ルテインとは

  • 600種類以上が知られているカロテノイドのひとつ
  • 加齢黄斑変性の予防など目の健康維持に役立つ機能性が報告されている。
  • 「ほうれんそう」「ケール」「ブロッコリー」などの野菜類に多く含まれる。

生鮮トマトに含まれるリコピン

生鮮トマトの可食部中のリコピンを定量するための試験方法について、2019年1月に規定が制定されました。

粉砕した測定試料をメタノールで洗浄してβ-カロテンを除去した後、ヘキサン/アセトン混合液でリコペンを抽出し、分光光度計を用いてリコペン濃度を測定する方法です。

リコピンとは

  • 果物や野菜に含有される赤色のカロテノイド色素
  • 血中HDLコレステロールを増やす働きや、動脈硬化や肺気腫の予防・改善効果が報告されている。
  • 「トマト」の他、「すいか」などに含まれる。

きのこ(ぶなしめじ)に含まれるオルニチン

ぶなしめじの可食部中のオルニチンを定量するための試験方法について、妥当性を確認した上で2019年3月に規定を制定しました。

粉砕した測定試料から希塩酸でオルニチンを抽出します。規定の条件を満たす高速液体クロマトグラフ分析装置を用いて抽出物中のオルニチン濃度を測定する方法です。

オルニチンとは

  • きのこ(特にぶなしめじ) 、魚介類(特にしじみ)等に多く含まれるアミノ酸の一種。
  • アンモニアの解毒など肝臓の働きを助ける作用や疲労感軽減の作用が報告されている。
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