【本の要約:後編】やせたい人はカロリー制限をやめなさい(実践方法)

あなたは、カロリー制限ダイエットの経験がありますか?

  • 痩せたいけど、我慢は続かない
  • カロリー制限ダイエットはなぜリバウンドするの?
  • 続けられるダイエットが知りたい

わたしは、食事指導とファスティング指導をしている栄養士です。プラスの健康とマイナスの健康、それから普段の楽しい食生活のバランスが大切だと思っています。

そんなわたしが、「やせたい人はカロリー制限をやめなさい」という本を要約しました。こちらの記事は「後編」になりますので、まずは前編からご覧いただくと理解が深まります。

《参考》【本の要約:前編】やせたい人はカロリー制限をやめなさい(実践方法)

最新ダイエット「インスリン」の節約

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_表紙

「インスリン」は、食事でとった糖質を内臓脂肪に変える作用を持つホルモンです。ダイエットのカギとなるインスリンをコントロールする方法をお伝えしていきます。

以下のことに思い当たる方に、特にお役に立てる方法です。

  • ダイエットに成功しても、リバウンドを繰り返してきた
  • 昼食後1~2時間後に極端に眠くなる
  • 食べるのが大好きで我慢するダイエットが続かない
  • ストレスを感じるとつい食べてしまう
  • ご飯やパン、麺類が好き。甘い物もやめられない

「昼食後1~2時間後に極端に眠くなる人」は、食後に急激な血糖値の上昇が起こる血糖値スパイク(食後高血糖)を引き起こしている可能性があります。

上がった血糖値を下げようとインスリンが過剰分泌された結果、今度は血糖値が下がりすぎて、眠気を生じているのかもしれません。

「炭水化物ーインスリンモデル」

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_エネルギーバランスモデル_炭水化物インスリンモデル
「炭水化物ーインスリンモデル」とは、肥満の原因は、炭水化物を多くとることによってインスリンが脂肪の蓄積を促進しているという考え方です。

この考えでは、肥満の原因は摂取カロリーではなく炭水化物(糖質)の量ということになります。

炭水化物=糖質+食物繊維という風に考えます。

研究結果①

2008年の論文で、肥満者322人を対象に、3種の食事療法を比較した研究結果があります。

  • 「低脂肪食」油を控えて腹八分目にする
  • 「地中海食」カロリーは控えて油はとる
  • 「低炭水化物食」カロリーは無限にとって良い

2年後に最も体重が減少し、メタボ腹になる中性脂肪が減少し、2か月の血糖値の平均を見ても改善したのが「低炭水化物食」でした。

短期間の結果ではなく、2年間という長期スパンであることも注目するに値するポイントです。カロリー制限よりも、糖質を控えることがダイエット効果があることを示しています。

この研究結果は「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダトロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」にも記載されていました。

《参考》【肥満・ダイエット研究の歴史】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:番外編

研究結果②

2013年~2015年にかけて行われた興味深い研究をご紹介します。

「低炭水化物」と「低脂肪」の食事法の2グループに分けて行われました。どちらのグループもカロリーのことは考えず、空腹感を感じないよう好きなだけ食べるというものです。

結果、1年後に「低炭水化物」グループは6.0kg減少、「低脂肪」グループは5.3kg減少となりました。

どちらのグループもウエストサイズや体脂肪率、血糖値、血圧が下がるなど、健康状態を示す指標も改善しました。

カロリーのことを考えずに、お腹いっぱい食べても大幅な減量に成功したという、従来の常識を打ち砕く研究です。

「朝食」をとるべき

定期健診でBMIが25以上だった肥満の人のうち、日常的に朝食を抜いている人を対象に、生活習慣病の方に用いる1食170kcalのフォーミュラ食を朝食として2か月摂取してもらいました。

毎日かならず朝食をとる意外には何の食事指導・運動指導も行いませんでした。それにも関わらず、平均1.3k減量しました。

摂取エネルギーは朝食分が増えたのに、ダイエットに成功したのです。この結果から「摂取カロリーと体重の増減は必ずしも相関しない」といえます。

「インスリン」分泌のしくみ

私たちが食事でとる三大栄養素は、次の通りです。

  • タンパク質
  • 脂質
  • 炭水化物(糖質+食物繊維)

血糖値を直接的に大きく上昇させるのは「糖質」です。ご飯やパン、麺類などの主食、またはお菓子やジュースなどで糖質を摂取すると体内で分解されてブドウ糖になります。

ブドウ糖は、人間が活動するエネルギー源になるものです。血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを「血糖値」と言います。

食後、血糖値が上昇すると、それを合図にすい臓から分泌されるホルモンが「インスリン」です。

インスリンの働きによって、糖は筋肉や肝臓、脂肪組織などの全身に取り込まれ、エネルギー源として使われます。

糖を安定して供給するために血糖値は、複数のホルモンにより一定に保たれています。その中で、食後に一時的に上昇しても、すみやかに元に戻すように働いているのがインスリンです。

《血糖値上昇のメカニズム》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_血糖値上昇のメカニズム

血糖値の上昇

健康な人では、食事によって一時的に上昇する血糖値は140mg/dL未満ですが、食後に分泌されるインスリンの働きにより、食後2~4時間もすると、空腹時の値である70~110mg/dLに戻ります。

しかし、生活習慣の変化や、加齢とともにインスリンの効きが低下してきたり、分泌量が減少すると、血糖値が下がりにくくなります。

その結果、血液中の糖の濃度が常に高い状態になったのが「糖尿病」です。

インスリンの分泌量が多いほど、肥満指数であるBMIが高くなるということが研究結果で明らかになっています。

「食後高血糖」

健康診断で血糖値の異常を指摘されたことはない人でも「食後血糖値」という問題がある場合があります。これは、健康診断の数値だけでは分かりません。

食事によって上昇した血糖値は通常、食後2時間もすればインスリンの働きによって下がりますが、下がり切らず血糖値が140mg/dL以上の状態を「食後高血糖」と呼びます。「血糖値スパイク」と呼ばれることもあります。

血糖値が下がり切らない理由は、インスリンの効きが悪かったり、分泌量が少なかったり、分泌する速度が遅かったりするからです。

食後の高血糖に対して、血糖値を下げようとインスリンが大量に分泌された結果、過剰な糖が脂肪として蓄積されて「肥満」と結びつきます。

「反応性低血糖」

食後高血糖が起こると、インスリンが過剰に分泌されて、血糖値が下がりすぎる「反応性低血糖」が起こることがあります。

食後しばらくして、強烈に眠くなる、だるくなって集中できなくなるという人は、反応性低血糖が起こっている可能性があります。

これからご紹介する食べ方を実践することで、食後血糖値が抑制され、食後の眠気も緩和されるかもしれません。

女性が気を付けたいこと

女性は、ホルモンリズムの周期によって、体重を落としやすい時期、落としにくい時期があります。

「ダイエットにおすすめな時期」 「ダイエットに向かない時期」
月経直後~排卵前まで 排卵後~月経開始まで

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_女性ホルモンとダイエットの関係

月経期が終わった後にくる卵胞期は、エストロゲンの分泌が高まり、心身の調子が良く、過剰な食欲も生じにくいので、ダイエットに最適な時期です。

ところが、排卵期に向かっていくにつれ、体は変化し始め、黄体期に入ると心身はやや不安定になります。黄体期では、プロゲステロンの分泌が高まり、体は水分をため込み、むくみが出やすくなります。

また、月経前症候群「PMS」に代表されるイライラやうつ症状、だるさなどの不調が表れやすくなります。

心身が安定しない時期は、ストレスをによって甘い物が食べたくなったり、食欲もコントロールしにくくなるのでダイエットが難しくなります。

この時期に、無理して甘い物を禁止してストレスをため込むのではなく、血糖値が上がりにくい食品を選んだり、食べ方を工夫しましょう。

「閉経」前後

女性は、月経サイクルの他に大きなホルモンの変動期「閉経」があります。

閉経をはさんだ前後10年間の更年期は、エストロゲンの分泌が急降下し、体重が増加しやすくなるほか、これまで正常値だった血圧やコレステロール値が高くなる人もいます。

うつ症状などの心の不調や、冷え、関節痛、ほてりなどの更年期症状も表れやすくなる時期です。

このようなときに厳しいカロリー制限のような大きな負荷をかけてしまうと心身のバランスを崩すことにもなりかねません。

極端な減量は、更年期以降の骨密度低下を加速し、筋力の低下とあいまって転倒による骨折のリスクを高めることにもなってしまいます。

「脂質」の摂取

魚の油であるEPAやDHAには、中性脂肪を下げる効果があります。オリーブオイルには悪玉コレステロールを下げる効果があります。

食事で脂質をとっても、そのまま脂肪になるわけではありません。

2015年には、アメリカの食事摂取基準において、脂質の摂取率の上限が撤廃されたのです。脂質は、糖質と組み合わせると血糖値の上昇を抑える働きがあり、ダイエットの強い味方です。

とはいえ、「脂質であればなんでもいい」という訳ではありません。健康に寄与する質のいいものをとるべきです。

  • 魚の脂質(オメガ3)
  • オリーブオイル(オメガ9)
  • ナッツ(オメガ6)

これらを摂取することで、動脈硬化を予防してくれることが確認されています。

《参考》【オメガ3脂肪酸とは】多く含む食品・その効果・オメガ6との比較

一方で、酸化した古い油やトランス脂肪酸は、避けた方がいい油です。

中でも、市販の菓子パンや揚げ物、スナック菓子やマーガリンに含まれるトランス脂肪酸は動脈硬化を促進する原因とされています。

《参考》【トランス脂肪酸とは】含む食品一覧・アメリカなど世界と日本の対応

我慢のダイエットが太りやすくさせる

血糖値の調節には、自律神経やホルモンが密接に関係しているので、我慢のダイエットは逆効果といえます。

「自律神経」

私たちの体は、交感神経と副交感神経が24時間バランスをとって、体の様々な働きを調整しています。交感神経は血糖値を上昇させる働きを持ちます。

  • 「交感神経」:活動したり緊張したときに優位になる
  • 「副交感神経」:休息したりリラックスしたときに優位になる

自律神経を利用したダイエット法があります。それは食後15分以内に副交感神経が優位になるようにお風呂に入るだけです。

食後15分以内に38度のぬるま湯に10分以上つかることで副交感神経が働き、食後血糖値を抑えることができます。

ただし、42度以上の熱いお風呂では交感神経が優位に働くので逆に血糖値が上昇してしまいます。

「ホルモン」

血糖値を上昇させるホルモン グルカゴン、成長ホルモン、糖質コルチコイド(コルチゾールなど)、アドレナリンなど
血糖値を低下させるホルモン インスリン

長い歴史の中で、人生は飢餓と闘う時期の方が圧倒的に長かったので、低血糖になったときに血糖値を高くしてパワーを引き出すシステムの方が発達しています。

血糖値を下げるホルモンがインスリンただ1つしかないということが、ダイエットを難しくしている理由の一つです。

実は、ストレス時に分泌が高まる、血糖値を上昇させるコルチゾールなどのホルモンには、脂肪を蓄積する作用がある上に、インスリンを効きにくくする働きがあります。この働きを「インスリン抵抗性」と言います。

つまり、過食をしなくてもストレスだけで太りうるのです。ストレス負荷が高まった人には以下のような行動食の変化が表れます。

  • 過食気味になる
  • 甘い物を極度に欲する
  • お酒を飲む量が増える

ストレスがかかると、血糖値を高めるホルモンの働きが活性化するだけでなく、食べて気晴らしをしようと食行動そのものが変わり、肥満を加速させてしまいます。

また、過重なストレスから、うつ状態になり、不眠になる場合もあります。最近の研究で睡眠不足も肥満を促進する一因であることが分かってきました。

ストレスによる過食の悪循環を断ち切らない限り肥満は改善しません。しかし甘い物を控えたり、お酒を我慢したりできるなら、はじめから太っていないはずです。

肥満を制することは、ホルモンを制することです。好きなものをただ我慢するのではなく、食べる時間や食べる組み合わせなどを工夫して満足得ながら追加のストレスを生み出さない方法を選んでいきましょう。



いつ、何と食べるかがカギ

インスリンが過剰に出ることで、体が「脂肪蓄積モード」になり、太りやすい体を作っていきます。

では、どうすればインスリンの過剰分泌を抑えられるかというと「糖質の多い主食を何と組み合わせて、どのように食べるか」「いつ食べるか」という食べ方の工夫がコツです。

これまでのダイエット法は、「何を食べるべきか」「何を食べてはいけないか」という食べ物を良悪に分ける考え方が根底にありましたので、それは終わりしましょう。

「主食」との組み合わせ

インスリンの分泌スイッチをオンにするのは、ほとんどが糖質です。ただし、血糖値が高い条件下ではタンパク質もインスリンの分泌を促すことが知られています。

《血糖値上昇の比較》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_糖質食・タンパク質食・脂質食の摂取後の血糖値上昇の比較

タンパク質、脂質、炭水化物の3つの栄養素の食後血糖値を調べた研究があります。それぞれを単体でとると、糖質食のときだけ、摂取後30分~1時間で血糖値がピークになっています。

「おにぎりだけ」「菓子パンだけ」という糖質だけの食事はとても太りやすいということがご理解いただけるでしょう。

《糖質食・組み合わせ食の摂取後の血糖値上昇の比較》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_糖質食・組み合わせ食の摂取後の血糖値上昇の比較

糖質量は減らしていないにもかかわらず、タンパク質や脂質との「合わせ食べ」をすることだけで血糖値の上昇がしっかりと抑えられています

タンパク質と脂質を、糖質と合わせ食べすると「食後の血糖値が高く上がらない」=「インスリンの分泌量が増えすぎない」のです。

タンパク質を一緒に食べるだけで、ご飯を半分に減らしたのと同じ程度の効果が得られています。

食事をする際に「主食に何かを合わせよう」と意識することで、血糖値の上昇カーブは低く抑えられます。

糖質のみの食事はカロリーは低くても血糖値は高く跳ね上がり、その後に大きく降下します。血糖値が急上昇することで満足感は得られますが、血糖値が下がると空腹感が再びやってきます。食後の眠気もやってきます。

このように糖質のみをとるとすぐに満腹になるものの、またすぐ空腹感におそわれ、甘い物をつまみたくなる、という悪循環を止められなくなります。

糖質にタンパク質や脂質をしっかり組み合わせてとることは、満腹感を長持ちさせることにもなるので、間食への欲求も減っていきます。

ご飯を減らさないで、その上タンパク質までしっかりとれるので、空腹を我慢する必要はありませんし、必要な栄養素が不足することもありません。それなのに、ご飯を半分にす減らしたのと同じ効果が得られるのです。

主食は少なめを心がける

ダイエットのために最も効果的なのは主食の量を見直すことです。ただし。炭水化物を全くとらないような極端な糖質制限はおすすめしません。

極端な糖質制限は、がんや心血管疾患による死亡リスクが高いとされています。

糖質摂取量の目安としては「1食あたり糖質を20~40gにして、それと別に間食で糖質10gをプラス、1日の糖質摂取量を合計で70~130gに抑える」をおすすめしています。

この目安量を守る食事は「ダイエット効果」「メタボ改善効果」さらに「リバウンドしない」などのエビデンスが近年、積み重なっているのです。

大切なのは、1日の全体量ではなく、1食ごとに食後高血糖を避けることです。

《主な主食に含まれる糖質量》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_主な主食に含まれる糖質量

どのくらいを目安にすれば糖質20~40gの範囲内に収まるのか参考にしてください。ご飯ならお茶碗半分、食パンなら6枚切り1枚程度、そばやうどん、パスタは半分くらいということです。

おかずとなる食材や調味料にも糖質は含まれているので、これらも合計して糖質40g以内に抑えることを基本とします。

ここで注意してほしいのは、糖質は制限してもタンパク質は減らさないということです。

ご飯が大好きでどうしても減らしたくない方もいるでしょう。そんな方は、これから説明する様々な方法を組み合わせることで、実際にご飯の量を半分に減らさなくても、ご飯を半分以上減らしたのと同様の効果が得られます。

「レジスタントスターチ」

レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)とは、消化されない(レジスタント)、でんぷん(スターチ)のことです。

レジスタントスターチは、糖質なのに食物繊維と同じように、消化されずに大腸にまで届くという特徴があります。この「消化されない」特徴こそが、ダイエットにとても効果的です。

レジスタントスターチが食事のときに糖質と合わさることで、糖質の消化スピードを穏やかにし、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。

ご飯やパン、麺類などの主食にはでんぷんが多く含まれていますが、このでんぷんは熱い状態よりも冷めた状態の方がダイエット効果があります。

炊きたてほかほかのご飯と比較し、24時間冷蔵保存したご飯の方がレジスタントスターチの量が確実に増加します。

お茶碗で冷めたご飯を食べるのはちょっと味気ない気がしますが、そんなときはおにぎりにして食べてみるなどの工夫をしてみると良いでしょう。

ダイエット中は、温かいご飯が出てくる外食よりも、冷めてもおいしい工夫がされたお弁当を選ぶのも選択肢のひとつです。食べる順番やおかずの種類にも気を付けるといいいですね。

他には、熱い「かけそば」よりも、冷えた「ざるそば」の方がダイエットには適しているということになります。

「アミロペクチン」と「アミロース」

現在、市販されているお米は、2種類に分かれます。

  • 「もち米」:赤飯、おもち(アミロペクチンを多く含む)
  • 「うるち米」:通常のお米(アミロースを多く含む)

もち米のでんぷんは、アミロペクチンが100%なのでダイエットには不向きです。

ダイエットにはアミロースを多く含むお米の方が効果的です。アミロースが占める割合が多いほど、米がパサパサして硬くなる傾向があります。

たとえば、コシヒカリは16~17%、ササニシキで20~23%の量のアミロースが含まれます。東南アジア産のインディカ米(タイ米)は、アミロース量が25~30%含まれているので、よりダイエット向きです。

主食は最後「カーボラスト」

糖質を多く含む主食は1番後回しの「カーボラスト」にすることで、血糖値を上がりにくくすることができます。

主食よりも先に食べるべきは次の3つの栄養素を含んだ食品です。

  • タンパク質(肉や魚、卵、大豆製品など)
  • 脂質
  • 食物繊維(野菜や海藻類)

お茶碗によそったご飯を最後に食べる「カーボラスト」をすることで、ご飯も適度にさめて「レジスタントスターチ」の増加も期待できます。

「ベジタブルファースト」

野菜をとれるのであれば「ベジタブルファースト」がいいでしょう。野菜をとれない場合でも主食を最後にする「カーボラスト」が原則です。

野菜や海藻を最初にとると、水溶性食物繊維が糖質の消化吸収を遅らせて、食後の血糖値の上昇を抑えると考えられています。

ただし、食事中や食事の最後に野菜をたくさんとっても、ダイエット効果はほとんど期待できません。

また、タンパク質や脂質を先にとると「インクレチン」という血糖値を下げたり、食欲を抑える作用がある消化管ホルモンの分泌が高まること、胃の内容物がゆっくりと小腸に排出されるという2つの働きで血糖値の上昇が抑えられます。

「研究結果」

「ベジタブルファースト」がダイエット効果がある食べ方というのは研究でも証明されています。

10人の健康な成人を対象に、野菜サラダ(オリーブオイルと酢をかけたキャベツ)を食べてから白米を食べた場合と、白米の後に野菜サラダを食べた場合の血糖値の上がり方を比較した研究です。

《血糖値の上昇》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_血糖値上昇を防ぐベジタブルファースト

「ベジタブルファースト」の場合、食後20~45分の血糖値の上がり方が有意に低下しています。

野菜を最初にとってからご飯をたべると「インスリン」の分泌が抑えられることも分かっています。野菜を先に食べるだけでご飯の量を減らしたのと同じダイエット効果が得られます。

「食物繊維」のとり方

不溶性食物繊維 水溶性食物繊維
・満腹感を高める
・便のかさを増やして腸の働きを高める
・お通じの排出スピードを高め、有害物質を素早く体外に排出する
・糖質の吸収を抑えて食後高血糖を防ぐ
・脂質の吸収を抑える
・腸内細菌のエサになり、腸内環境を整える
・短鎖脂肪酸を産生し、血糖コントロールを改善

食物繊維は2種類があります。今回のインスリン対策には「水溶性食物繊維」をとる必要があります。

食事のときの糖の吸収を抑えるだけでなく、血糖値をコントロールしやすい体内環境を整えるという働きもあります。

水溶性食物繊維は、「短鎖脂肪酸」をつくり出し、悪玉菌が増えにくい環境を整えます。また、短鎖脂肪酸は、インスリンの働きを良くして血糖血をコントロールしやすい状況を作ります。

野菜には食物繊維が多く含まれていますが、実は水溶性食物繊維を豊富に含む野菜は限られています。積極的にとりたい食品一覧をご紹介します。

《各種食べ物の食物繊維量(100g当たり)》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_各種食べ物の食物繊維量(100g当たり)

「おかずファースト」

ご飯を先にとるよりも、魚や肉を最初にとる方が食後の血糖値の上昇が抑制されることが分かっています。

タンパク質も脂質も血糖値の上昇を抑える消化管のホルモンの分泌を高めることが分かっています。

消化管ホルモンには、腸のぜん動運動をゆっくりにすうる働きもあるので、糖の吸収が緩やかになり、血糖値が上がりにくくなるのです。

ご飯を最後にすることで、おかずが胃の中にたまり、ご飯に行き着く頃にはすでにおなかいっぱいになるため、ご飯を少しの量にしても空腹を感じにくくする効果もあります。

タンパク質や脂質を先に食べることで、最後に食べるご飯に含まれる糖の吸収スピードも緩やかになり、太りにくくなります。

「間食」のとり方

ダイエット中のおやつも食べ方の工夫で乗り切ることができます。おすすめは、食事の前に、豆乳や牛乳を飲んでおくことです。

血糖値の上昇を抑える働きのある「タンパク質」と「脂質」が含まれます。また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸には食後血糖値の上昇を抑える効果があるので、コーヒーに豆乳を加えることで血糖値の上昇を抑制することができます。

豆乳には、牛乳には含まれていない食物繊維もわずながら含まれており、血糖値の上昇をさらに抑えてくれます。

もう一つ、タンパク質や脂質は含まれていないものの、糖質フリーで、中性脂肪を抑える働きを持つのが緑茶の「カテキン」です。

カテキンは、食後の血中中性脂肪の上昇を抑えること、また、エネルギー消費を高めて脂肪燃焼を促し、内臓肥満を抑制する効果があります。

いずれの飲み物も食前にたっぷり飲んでおく必要があり、おやつと一緒・おやつの後にたっぷり飲むと、逆に食後の血糖値を上昇させてしまう可能性がありますので注意してください。



「調味料」の選び方

主食や食材に含まれている糖質量に気を配っていても、意外と見落としがちなのが調味料に含まれる糖質です。

「ドレッシング」

中でもドレッシングは、計量することなく容器から直接かける方も多く、結果、どのくらいの量をとっているか把握しづらいものです。

せっかくベジファーストをしても知らないうちに糖質をとりすぎて食後高血糖を起こしてしまうことがあります。

食品メーカーは、ダイエットを意識している消費者に向けてカロリーを抑え、脂質を減らした「ローカロリー」「ノンオイル」のドレッシングを扱っています。

しかし、脂質を減らすと旨味が落ちることが多いため、糖質を増やすことで味を調えています。同じ種類のドレッシングで、普通のものと、ローカロリーやノンオイルの商品成分表にある糖質量を比べてみてください。ローカロリーやノンオイルの方が糖質量は多いはずです。

理想的なドレッシングは糖質量が少なく、脂質、タンパク質、酢をたっぷり含むものです。糖質を多く含む和風ドレッシングより、マヨネーズやシーザーサラダドレッシング、フレンチドレッシングがおすすめです。

中でもカロリーが高いからと、これまで大敵とされていたマヨネーズは実は糖質量が非常に少なく、食後高血糖を起こしにくいダイエットに最適の調味料です。

甘みのあるゴマドレッシングは、血糖値の上昇を抑える働きをもつ脂質や酢が含まれていますが、糖質も含まれているので、血糖値の上昇抑制効果はやや落ちてしまいます。

《各ドレッシングの食後血糖値》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_各ドレッシングの食後血糖値

「ソース・たれ類」

和食や中華料理などの「あんかけ」は、とろみ付けのために片栗粉が使われています。片栗粉の材料もでんぷんで、糖質そのものです。

みりんや、砂糖、ウスターソースやトマトケチャップ、オイスターソースなどの様々なたれ類にも意外に多くの糖質が含まれているので、使用量には気を付けましょう。

酢やゴマ油には、食後血糖値の上昇を抑える効果があることが知られています。

《調味料などの糖質量(100g当たり)》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_調味料などの糖質量(100g当たり)

「太りにくい時間帯」

全身にある臓器は、それぞれが体内時計を持っていて、24時間より少し長い周期で体の活動を維持しています。

この体内時計と食の関係を研究する「時間栄養学」という分野からも、近年の研究で、体内時計が脳だけでなく全身の臓器や組織の細胞に存在していることが分かってきました。

体内時計は食物の消化・吸収・代謝・排泄などにも関係しており、「いつ、何を食べるか」ということが太りやすさとも関係していることが明らかになってきました。

人は、体内時計と実際のずれを毎日調整しながら生きています。このうち、脳にある体内時計を刺激するのが光刺激です。「起床時に日光を浴びると体内時計をリセットできる」というのはよく知られています。

体内時計を正確に動かすことは、自律神経やホルモン分泌を正常化し、心身の健康状態を安定させることにつながります。

つまり、朝しっかりと光を浴びることで、ホルモンの分泌も安定し、自律神経の働きやホルモンバランスを正常化することでダイエットにもつながるのです。

また、光と同様に、食事も体内時計のリセットに重要な働きをすることがわかっています。

体内時計の中でも脂肪の制御を担っている「BMAL1」が増加すると、脂肪の蓄積量が増加します。通常、日中にその数が減少し、夜になるにつれてその数が増加していきます。

《BMAL1(ビーマルワン)の働き》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_BMAL1(ビーマルワン)の働き

BMAL1は、活発に働く時間が限られています。6~22時の間に食事をとるのが太りにくく、特に10時~20時が脂肪が蓄積しにくい時間帯であることがわかります。

夜遅くに食べるのは良くないと同時に、早朝に食事をとるのも避けた方が良さそうです。1日でBMAL1がもっとも低くなるのは14時なので、甘い物を食べるのであれば14~15時がおすすめです。

「朝食」

前日の夕食を早めにとればとるほど、朝食までの絶食時間が長くなるので、糖質をとったときの食後血糖値が上がりやすくなります。

このことを踏まえて、朝食では糖質は控えめにすることが大切です。

また、朝食でとったタンパク質は筋肉に変わりやすいので、朝食にタンパク質をしっかりとるのが重要です。

朝食を欠食していた人が、朝食をとるだけで体重が減少したという研究の話をしましたが、「体内時計」も関わっていると考えています。

朝食を毎日きちんととってインスリンをしっかりと分泌させることで、体内時計がリセットされ、全身の臓器がうまく機能するようになります。

朝食によって体内時計をリセットするためには、インスリンを分泌させる炭水化物が必須です。しかし、朝食は血糖値が高くなりやすいため、おにぎりやトーストといった炭水化物オンリーは避けましょう。

逆に、炭水化物を含まない野菜やタンパク質だけをとると、インスリンが分泌されず、体内時計はリセットされません。

つまり、朝食は糖質を減らしすぎても増やしすぎてもいけないのです。

「セカンドミール効果」

セカンドミール効果とは朝食(ファーストミール)で血糖値の上昇を抑制する食事をとると、次にとる昼食(セカンドミール)の食後の血糖値の上昇も抑えられる効果のことです。

朝食時に血糖値の上昇を抑える水溶性食物繊維を豊富に含む「大麦」をとることで昼食時の血糖値の上昇が抑えられたという研究があります。

《朝食に大麦を摂取するセカンドミール効果》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_朝食に大麦を摂取するセカンドミール効果

《楽天市場》スーパー大麦 バーリーマックス

朝食を抜くと、前日の夕食から昼食までの空腹の時間が長くなり、昼食時に食後高血糖(血糖値スパイク)が起こりやすくなります。

わたしからの追加情報としては、食事を抜く際は酵素ドリンクで置き換えるのがおすすめです。血糖値が急上昇しない程度の糖質を摂取でき、良質なミネラル・ビタミンが豊富に摂取できるので、代謝促進の効果もあります。

《参考》【KALA酵素】ファスティングの口コミ・飲み方、価格・販売先ご紹介

夜遅く食べると太る理由

先ほど、18時以降「BMAL1」が急激に増加するため、ダイエットのことを考えれば、夕食はできるだけ18時頃に終わらせた方が良いという話がありました。

それ以外にも、夜遅くに食べると太りやすい理由があります。それは、夜遅くに食事をとると、昼食から夕食までの絶食時間が長くなり、インスリンの反応が低下したり、インスリン分泌が遅延し、夕食後の血糖値が上がりやすくなるためです。

一般的には、夕食をとって2時間以内に横になるのは良くないとされています。ただし、夕食後2時間以内に寝るのは良くないからと夜遅くまで起きていて、睡眠時間を削るのは、かえって体重が増加します。

夕食を食べてすぐに、38度のぬるめのお風呂に入るなどして食後血糖値の上昇を抑える効果があります。

「水分のとり方」

英国のバーミンガム大学の研究者が、肥満の成人84名を対象にした実験で、1日に1.5リットルの水を飲むだけで、12週間後に平均4.3kg体重が減少したと医学誌「obesity」に発表しています。

単に1日1.5リットルの水を飲むのではなく、「毎食30分前に500mlずつの水を飲む」というのがポイントです。

3食のうち、1食だけを食事の30分前に500mlのずつの水を飲んだ場合、ダイエット効果は確認できませんでした。

しかし、1日3回、食事の30分前に500mlの水を飲むというルールを守った人たちは、4.3kgの体重減という結果が得られました。

食前30分前に水を飲むことで、血液が希釈され、食後血糖の上昇を抑制しているのではないかと推測されます。

「スイーツを食べるタイミング」

おやつを食べるときは、牛乳や豆乳、コーヒー、緑茶を先に飲んでおくと、血糖値の上昇に歯止めをかけられる、そして、14~15時の時間帯に食べると良いことは、既にお伝えしました。

ただ、空腹時に糖質をたっぷり含むおやつを食べると、血糖値は跳ね上がります。なので、食後にとる方がおすすめです。

食事で、野菜やタンパク質、脂質をとって、最後に主食をとる「カーボラスト」の中にスイーツも含めるということです。

「今日はこれが食べたい!」と決めているスイーツがある際は、食後にゆっくりと味わうと良いでしょう。既に満腹感が得られているので、少量でも満足しやすいというメリットもあります。

「よく噛んで食べる」

よく噛んで食べることは、ゆっくり食べることにもつながります。

食事を始めて15~20分ほど経過すると、血糖値が上がり始めます。このとき、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が分泌され、脳では満腹中枢あ満腹感を感じます。

早食いの人は満腹感を得る前に多量の糖質をとってしまいがちです。早食いだと、そうでない人に比べて肥満リスクが約3倍も高くなることが分かっています。

よく噛んで食べるのが難しい場合でも、20分以上かけてゆっくり食事をとることで、糖質の過剰摂取を抑制することができます。さらに、消化・吸収に時間がかかるため、血糖値の上昇を抑えることができます。

「糖質は1日130g以内」

「糖質摂取を1日あたり70~130g以内に制限する食事指導」に関する国内の研究をご紹介します。

《低糖質食で中性脂肪が低下》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_低糖質食で中性脂肪が低下

低糖質食によって糖尿病の指標である「HbA1c」も、内臓脂肪の正体である中性脂肪も、改善したという結果が示されています。

※「HbA1c」とは、ヘモグロビンエーワンシーと読み、採血した日から遡って1~2か月間の血糖値の平均を示す指標です。

気になるのは、その後リバウンドしないのかということですが、3年間の経過を見た研究では、低下したHbA1cが維持されている、つまりリバウンドしなかったことが報告されています。

《低糖質食で低下したHbA1cが3年間維持》

やせたい人はカロリー制限をやめなさい_低糖質食で低下したHbA1cが3年間維持

極端な糖質制限については死亡率が上がるなどの報告がありますが、今回おすすめしている糖質摂取の目安は、危険なレベルの糖質制限ではありません。

この調査では、糖質摂取が最も少なかった群から、最も多く摂取した群馬で10グループに分けて分析しています。解析した結果、糖質摂取量が少ないほど総死亡リスクが低くなる傾向が見られました。

このことからも、糖質を控えてインスリンを節約する食事は、安全で長期にわたって健康を維持できる有効なダイエット法であると考えています。

《参考》【1日の食事に含まれる糖質量】レベル別の糖質制限方法、ご飯の目安

【まとめ】やせたい人はカロリー制限をやめなさい

極端なカロリー制限などの短期的なダイエットをする方は、リバウンドもしやすく、やせにくい体をつくってしまいます。

ダイエットは、長期的な健康維持と考えてじっくり取り組むことが大切です。我慢を重ねて、短期でやめてしまうものではなく、無理なく続けていける方法にしましょう。

ストレスや睡眠不足といった、一見ダイエットに関係がないことも太る要因でもあります。

ダイエット手段一覧

さいごに、「前編」「後編」の中で紹介したダイエット方法を一覧にしておきます。

カロリー制限ではなく、糖質制限をして血糖値の上昇を抑える基礎の考えをまとめておきます。

《主食の食べ方の注意点》

  • 「主食」単体で食べることを避ける
  • 「主食」の量を減らす
  • 「レジスタントスターチ」主食は冷まして食べる
  • 「もち米」より「うるち米」アミロースを多く含む

《食べる順番の注意点》

  • 「ベジファースト」野菜から食べる
  • おやつの前に「豆乳」をたっぷり飲む
  • 「おかずファースト」タンパク質や脂質を先にとる
  • 「カーボラスト」主食は最後に食べる
  • スイーツを「カーボラスト」の中に含める

《時間帯の注意点》

  • 「10時~20時」脂肪が蓄積しにくい時間帯
  • 「朝日を浴びる」体内時計をリセット
  • 「セカンドミール効果」血糖値の上昇を抑制する朝食をとる

《食事中や前後の注意点》

  • 「食後15分以内」こまめに動く
  • 夕食を食べてすぐに「38度のぬるめのお風呂」に入る
  • 毎食30分前に、水を500mlずつ飲む
  • よく噛んで食べて満腹中枢を刺激
  • 糖質を「1日130g以内」に抑える
  • ナッツや魚の「良質な油」をとる

こんなにもたくさんのダイエット方法を紹介していきました。これらは、全てを実行する必要はありません。

ただし、どれか1つだけで効果があるという必殺技のようなものではないので、ご自身でできそうなものから毎日の生活に取り入れていきましょう。

じっくり健康にダイエットする大切さも分かるけど、まずは一気に痩せたいと思っている方は、健康的なミネラルファスティングもおすすめです。生徒さんの事例をご覧ください。

《参考》【事例】-5.4kgダイエット!3日ファスティングの効果(男性41歳)

以下のページでQ&Aをまとめていますので、ここまでの最終確認にぜひご覧ください。

《参考》【本の要約:Q&A】やせたい人はカロリー制限をやめなさい

詳細が気になる方は著書をお手に取っていただければと思います。

《著書》やせたい人はカロリー制限をやめなさい

最新情報をチェックしよう!