あなたは、カロリー制限ダイエットの経験がありますか?
- 痩せたいけど、我慢は続かない
- カロリー制限ダイエットはなぜリバウンドするの?
- 続けられるダイエットが知りたい
わたしは、食事指導とファスティング指導をしている栄養士です。プラスの健康とマイナスの健康、それから普段の楽しい食生活のバランスが大切だと思っています。
そんなわたしが、「やせたい人はカロリー制限をやめなさい」という本を要約しました。まずは「前編」にてご紹介していきます。
はじめに
著書の益江先生は、総合内科医、循環器専門医、救急専門医の臨床医として、また、200社以上の産業医として30年以上も生活習慣病を抱えた人を対象に食事指導や運動指導をしてきたそうです。
その著者が、20年間実践してきた食べながら痩せるダイエット方法をご紹介します。最新の研究と、年間5万人を健康指導してきたデータ20年以上から導き出した方法です。
実際に半年間に16kgの減量に成功し、10数年にわたってリバウンドをすることなく体重維持できているそうです。
カロリー制限ダイエットの見直し
カロリー制限と定期的な有酸素運動という指導をしていたところ、まじめな方ほど3か月後には減量に成功しました。
しかし、1年後の健康診断で、以前よりも体重が増加していたのです。つまり、減量前よりリバウンドしていたということです。
このことをキッカケにカロリー制限ダイエットを見直すことにしたそうです。
タンパク質不足・低栄養状態
極端なカロリー制限は、タンパク質不足、低栄養状態を引き起こします。すると、減量しても脂肪はほとんど減らず、水分や筋肉量が大幅に減ってしまいます。
筋肉量が減ると代謝が減少し、太りやすい体質に変化します。その結果、リバウンドしやすいということです。
過激なダイエットのその後
「1か月で10キロ!」「3か月で20キロ!」などのダイエット広告を見ますが、そのような広告で半年後や1年後の結果を示しているものはありません。
短期間で大きな効果のあるダイエットは、必ずリバウンドすることを暗示しています。
研究結果
カロリー制限を主とする食事指導や運動指導で、肥満は改善できないということが分かりました。
朝食を食べていない肥満者に、朝食としてエネルギー源である糖質・脂質を抑え、必要十分量のタンパク質・ビタミン・ミネラルを含んだ必須栄養素をを調合したフォーミュラ食を、2か月間、毎日摂取してもらいました。
結果、1日の摂取カロリーは減らさず、運動を増やさないにも関わらず、体重・BMI・体脂肪率が有意に減少したのです。
最新の栄養学
世界の最新の研究によって、栄養学の常識も変わりつつあります。今や、海外では「カロリー制限は肥満治療の第一選択肢ではない」という考えが一般的となっています。
2021年9月に米国栄養学会が、肥満のメカニズムに関する革新的な理論「炭水化物ーインスリンモデル」を発表しました。
50年前から提唱されていた「エネルギーバランスモデル」を否定し「肥満の本当の原因はカロリーのとりすぎや過食ではない」と明言しました。
「肥満の発症にはインスリンを中心としたホルモンが関与する」ということです。
以下の本でも似たような話が書かれていました。
《参考》【本の要約:前編】医学的に内臓脂肪を落とす方法(1年で14キロ痩せた医師が教える)
《参考》【本の要約:前編】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ
思ったより、運動で脂肪は燃えない
いくら激しい運動を毎日続けても、一般の人が運動だけで月2キロ以上の脂肪を減らすことは非常に難しいです。
たとえば、ジョギング30分で200~300kcalが消費されますが、これは脂肪28~42gに相当します。1か月、毎日30分のジョギングを続けてもわずか784~1176gの脂肪が減るだけの計算になります。
継続的なダイエット法
リバウンドすることなくダイエットを長期的に継続する方法はないかと模索する中で着目したのが、ホルモンの働きです。
特にインスリンは、脂肪の蓄積と密接な関係があります。糖質の量を制限することでインスリンの分泌を抑えることができます。
ただし、同じ糖質量であっても、食べる時間帯や、順番を工夫したり、食後すぐに運動をすることで食後の血糖値の上昇を効果的に抑えるエビデンスがあることを知ったそうです。
たった1つの方法だけで劇的にダイエットできる方法は見つけられなかったのですが、複数の方法を組み合わせることにより大きな減量効果が得られます。
自分のライフスタイルに合った方法を選んで組み合わせ、オリジナルのダイエット法を作り上げてください。
※糖尿病や糖尿病の可能性のある方は、食後血糖値のパターンやインスリン分泌が健康な方とは異なりますので、今回紹介する方法で病状が悪化する可能性があります。必ず主治医に相談してください。
では、前置きはこのくらいにして、本題に入ります。
「食べながら痩せるダイエット」へ
これまでのダイエットの常識は、「やせたいなら、食べたいものを我慢しなければならない」というものでした。
今日からは、食べたいものを我慢する必要はありません!「我慢する」というストレスもダイエットを挫折させたり、リバウンドさせたりする大きな要因の1つです。
リバウンドする理由
我慢するダイエットは、3か月は続けられても、半年も続きません。大半の人が1年以内に挫折して、元の体重以上にリバウンドします。
しかし、それは決して気合や根性が足りないからではなく、人間の生理現象による結果です。
人の体は摂取エネルギーが減少すると、それに応じて消費エネルギーを抑えるように体を変化させます。いわば、体がエコモードになり、代謝が抑えられて体温も下がってきます。
摂取カロリーを抑えていると、摂取カロリーを増やそうとして食欲を亢進させ、脂肪を体内に蓄える作用を持つ「グレリン」というホルモンが増加してきます。
このグレリンの増加こそが、元の体重以上にリバウンドさせる大きな原因です。グレリンの過剰分泌は、カロリー制限後も1年以上にわたって継続したというデータもあります。
カロリー制限をしなければ、グレリンの過剰分泌は抑制できます。
食べてやせる7つのルール
おいしく、しっかり食べてダイエットに成功するには、肥満が起こるメカニズムを正しく理解することが大切です。
短期間で大きな減量効果のあるダイエットは、6か月以内に半数以上がリバウンドして元の体重以上に増加すると言われています。また、ケトジェニックダイエットでは、脂肪だけでなく、筋肉や水分も大幅に失われます。
こうした極端な糖質制限は、遊離脂肪酸を増加させ、不整脈を誘発し、突然死の原因にもなると言われています。
長期的に低糖質の状態が続くと、甲状腺の機能低下を引き起こすこともあります。
《食べてやせる7つのルール》
- 「カロリー表示」を意識しない
- 「運動量」を増やすより実施するタイミング
- 「急激な減量目標」を設定しない
- 我慢せず「食べ方」を工夫する
- 「脂質」を味方につける
- 「主食」のとり方を変える
- 水や野菜をとる「タイミング・選び方」を工夫
7つのルールについて詳細を解説していきます。
①「カロリー表示」を意識しない
一般的に、カロリーが低いものは量が少なめだったり、脂質が抑えられているぶん、あっさりした味付けになっておて、満足感を得にくいです。
カロリー制限ダイエットに挑戦したことがある方なら誰しも感じたことがあるようにカロリー制限は空腹との戦いです。強い意志を持っていても継続するのが難しいダイエット法です。
先ほどもお伝えした通り、肥満治療の専門医や栄養学の世界では「カロリー制限でやせることは難しい」という考えがすでに常識となっています。
厳しいカロリー制限をすることで、比較的に短期間で一時的に体重は落ちますが、このときに減っているのは脂肪よりも筋肉や水分です。
筋肉が減る
カロリー制限ダイエットの1番の問題点は、食べる量を減らすため、筋肉を作るもとになる乳製品や肉、魚などのタンパク質の摂取量も減らさざるを得ず、結果として筋肉量が減少してしまうことです。
筋肉が減ると「基礎代謝量」が低下します。基礎代謝量とは、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、体温を調整するなどの生命活動を保つために消費されるエネルギーのことです。
つまり、特別な運動をしなくても私たちが生きているだけで消費されるエネルギー量が減ってしまうということです。
そして再び元の食事に戻したときには、基礎代謝量が減っているため、糖がすぐに内臓脂肪に置き換わり、太りやすい体になってしまっているのです。
また、筋肉量が減ると、ジョギングなどの有酸素運動をしたときの消費エネルギーも少なくなってしまいます。
低栄養状態
健康になるためのダイエットでカロリー制限をすると、体に必要なタンパク質やエネルギーが不足する低栄養状態をもたらし、体の若々しさや活力を保つためも筋肉を減らし、体力や免疫力の低下といった不健康な状態をもたらすことになります。
長期的な低栄養状態は、筋肉や骨などの運動器の障害により、日常生活動作に支障をきたすロコモティブシンドロームを引き起こします。
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態のことです。「運動器症候群」とも言われます。
運動器とは人間が「歩く」「作業する」などの、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を指します。
カロリー制限では低栄養により筋肉が落ち、肌のつやも悪くなって、しわも増え、やせ衰えた感じがするのに対し、低糖質高タンパク質食のダイエットは、体が引き締まり健康的な印象を与えます。
②「運動量」を増やすより実施するタイミング
ダイエットに挑戦するとき、結果を急ぐ人ほど、急にジョギングを始める、スポーツジムで激しくトレーニングをするといったハードな運動から始めがちです。
「ハードな運動をしなければ」という思考の根本にも、エネルギーバランスモデルの考えがあります。つまり、食べるカロリーを減らすか、運動を増やすしかないというものです。
《エネルギー摂取と消費のバランス》
先ほどもお伝えした通り、人間は食べる量が減ってエネルギー摂取量が減少すると、体が自らエネルギー消費量を調整することで、エネルギーを保持しようとします。これは飢餓状態から身を守るための大切な仕組みです。
脂肪が蓄積するメカニズムを考えると「カロリーをたくさんとる」ことが、直接的に内臓脂肪を増加させる原因になるわけではありません。
脂肪の蓄積には、体内の複数のホルモンが関わっていますが、中でも強力に働くのが、すい臓から分泌されるのがインスリンです。
インスリンは、血液中の糖を脂肪に変換し、内臓脂肪に変える働きを持ちます。
運動の消費エネルギーは少ない
《運動による消費カロリーと食事による摂取カロリーの比較》
残念ながら、運動の消費エネルギーは期待するほど多くありません。ご飯1杯分のカロリーを消費しようとすると、体重50kgの女性の場合、自転車こぎを1時間行っても、まだ足りません。
少しばかり運動をしても脂肪はほとんど燃えません。30分がんばってジョギングをしても1日でわずか50gの脂肪を減らすこともできないのです。
だからといって、運動がダイエットに全く効果がないということではありません。
運動により筋肉量を増やすことによって、基礎代謝量を増やしたり、有酸素運動時の消費エネルギーを増加させることが可能です。
ただし、筋肉を増やすには、タンパク質をしっかりととるとともに筋トレが必須です。
食後15分以内こまめに動く
運動の目的を消費エネルギーを増やすことでなく、食後の血糖値の上昇を抑えることという風に発想を転換してみましょう。
わざわざ本格的な運動をしなくても、日常生活を少し工夫することで運動とはいえない家事のような軽作業でも内臓脂肪を蓄積しにくくする効果を得ることができます。
食後の血糖値が上昇し始める、食後15分以内に体を動かすことで、血糖値の上昇を効果的に抑えることができます。
たとえば、朝食後に部屋の片づけをする、昼食で外食をするときは少し遠くのお店まで行って歩いて帰ってくる、夕食後はお皿を洗ったり家事タイムにするなど、日常で必ずやっている家事を食後のタイミングにシフトしてみましょう。
③「急激な減量目標」を設定しない
ダイエットを始めると、結果を出したいと焦るあまり「1か月に5kg」という風に期限を決めて高い目標を設定してしまいがちです。
期限を決めた無理な目標設定をしないようにしましょう。
高い目標を設定することは悪いことではありませんが、ダイエットはスケジュール通りに進まないのが常です。順調に減量に成功していても、停滞期がやってきます。6か月や1年というふうに目標達成までの期限を長めに設定することが、リバウンドを回避する方法の1つです。
「無理なダイエットは半年以内にリバウンドする」という実態があるので、とにかく諦めずに持続可能なダイエットにしていくことが重要です。
1番優れたダイエットが何かと聞かれたら迷わず「持続可能でリバウンドしないダイエット」と答えます。
目標は体重の3%程度が妥当
健康の改善を目的とするダイエットの目標値は、一般的に「体重を3%落とすことを目標」とするのが妥当な値です。
体重70kgの人であれば2.1kg減、60kgの人なら1.8kg減という程度です。この程度の体重減少でも、高血圧、糖尿病、脂質異常症に関わる値が改善し、健康のための対策としては非常に効果があったのです。
④ 我慢せず「食べ方」を工夫する
「食事をした後の血糖値の上昇を抑える」ことがダイエット成功のカギです。
糖質制限、ケトジェニックダイエット、プチ断食、16時間断食、ゆっくり食べる、朝食を食べる、食事回数を増やす、ベジタブルファースト、カーボラストなど、巷で効果があるとされているダイエットは、結局のところインスリンの分泌を抑えるための異なるアプローチに過ぎません。
一般的には、食後の血糖値の上昇が高くなればなるほど、分泌されるインスリン量も増加することが分かっています。
糖質の少ない食品を選んだり、低GI食、低GL食をとり入れたり、炭水化物を単独で食べるのを避けて、タンパク質や脂質、食物繊維を組み合わせてとることで、食後の血糖値を上がりにくくすることができます。
⑤「脂質」を味方につける
脂質は、ダイエットに非常に効果的な食材の1つです。糖質と一緒にとることで血糖値を上げにくくする、つまりインスリンの分泌を抑制することが多くの研究で明らかになっています。
「油の摂取を控えるべき」という考え方は、1958年に世界7か国の栄養摂取と心臓病による死亡率の関連を調べた「セブンカントリーズスタディ」という研究が背景にあります。
しかし、その後も肥満人口は減らず、複数の研究が積み重ねられた結果、現在では「食品から摂取するコレステロールや脂質の量を控えても、心臓病の予防にも、肥満の予防にもつながらない」というエビデンスが新たな常識になっています。
いい油をとろう
最新の栄養学では、「いい油をとろう」という考えに変わってきています。ダイエット成功の切り札は、良質な油をとることです。
オリーブオイルやナッツに含まれる油、魚に含まれる油は、循環器係の病気リスクを減らすという研究結果が数多く集まっています。
《参考》【オメガ3脂肪酸とは】多く含む食品・その効果・オメガ6との比較
炭水化物とともに脂質をとることで、血糖値の上昇が抑えられるだけでなく満腹感が長続きします。
⑥「主食」のとり方を変える
血糖値に最も影響する栄養素「糖質」は、主食に多く含まれています。主食を減らすことが、食後の血糖値を抑える有効な方法です。
主食の量を減らすことが大原則ですが、糖質を単独でとるより、脂質やタンパク質をプラスすることで、食後の血糖値の上昇を抑えられることが最近の研究でわかってきました。たとえば、以下のようなことがあげられます。
- もち米よりもうるち米を選ぶ
- ほかほかご飯よりも、冷ましたご飯を食べる
- 白ご飯よりも、卵かけご飯や炒飯を食べる
- パンにはたっぷりバターやオリーブオイルをつける
- あっさり和風パスタより、カルボナーラを選ぶ
「カロリーが高そう」という避けていたメニューの方が、実はダイエットに効果があったなんて意外に思われるかもしれません。カロリー制限ダイエットの考えは忘れてください。
そして、主食を上手にとることがダイエットの基本になります。
⑦ 水や野菜をとる「タイミング・選び方」を工夫
水や野菜ならカロリーがほとんどないから、いくらでも食べていいだろうとダイエット中にやみくもにたくさん飲んだり食べたりして、なんとか空腹をしのごうとする人がいます。
しかし、この方法はダイエットの効果が期待できません。それどころか、やり方を間違えると逆に太りやすくなってしまうかもしれません。
食事の30分前に水を飲む
やせるために水を飲むなら食事の30分前にとるのがポイントです。
食事の前に水を飲むことで、血糖値の上昇をゆるやかにする効果があるとした研究があります。
ベジファースト
野菜をたくさんとるだけでは、低栄養状態となり、タンパク質が不足して筋肉が落ち、代謝が低下します。
さらに食欲を亢進させて、脂肪の蓄積を促進するグレリンが増えるため、かえって太りやすくなってしまいます。
野菜は糖質と一緒にとることで、ダイエットの強い味方になります。
食事の最初に野菜をとることで、食後の血糖値の上昇を抑えることができます。食事中や食後ではダイエット効果が得られません。
ストレスフリーを目指す
ダイエットを成功させるための7つのルールをお伝えしましたが、「絶対に無理をしない」でください。
やせる食べ方を色々とご紹介していきますが、全てを実行する必要はなく、ご自身のライフスタイルにあわせてやれそうなことから気軽に始めてみましょう。
毎日の積み重ねで着実に「脂肪がたまりにくい体」に変化していくはずです。
仕事や家族のこと、色々なタスクをこなしている日々で、おいしいご飯を食べる食事の時間や、おやつタイムは楽しみなひとときのはずです。楽しいはずの時間を「我慢の時間」にしてしまうと、ストレスが膨らむ一方です。
ストレス太り
ストレスホルモンは、体重を増加させることがわかっています。また、睡眠不足により「グレリン」というホルモンが増加し、食欲を亢進させ、脂肪の蓄積を促進することも知られています。
食べる楽しみを奪うことはストレスを増やし、肥満を促進することにもなりかねません。
肥満と深く関わりも持つホルモン「インスリン」の働きや仕組みについては、「後編」で解説していきます。