【肥満・ダイエット研究の歴史】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:番外編

あなたは「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という本を読んだことがありますか?

  • 肥満やダイエットに関するどんな研究結果ででているの?
  • すべて読むのは大変だから、まとめてほしい。

わたしは、オーガニック食品が好きな栄養士です。「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という本を読みまして、とても勉強になり面白かったので、分かりやすくかつ詳しくまとめていきます。要約は、前編、中編、後編の3部作です。

「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」では、たくさんの研究結果をもとに結論づけられた情報が書かれています。本記事では、番外編として著書に登場する「肥満やダイエットに関する研究の歴史」を年代別にまとめました。

《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:前編

《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:中編

《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:後編

【肥満・健康】の歴史

世界各国で、肥満の原因と考えられていることや、健康を害すると考えられている情報が変わってきています。その歴史についてご紹介していきます。

「肥満」と「健康」の歴史

1977~1980年頃から肥満が急増していく。

1977~2000年頃にかけて砂糖の消費量がじわじわと増えていき、それに並行するように肥満率も上がっていった。砂糖の消費が増え始めて10年後には糖尿病の患者数も増加し始めた。

1984年にキーシーとコルベットという二人組により、体重が設定値から大きく変わることがないように「恒常性を維持する」メカニズムは働くという考えです。

1985年~2011年までにカナダにおける肥満率は6%から18%へ、3倍にもなっている。これは世界中のほとんどの国でみれらる状態。

1991年、スタンカード博士は別々の環境で育てられた一卵性の双子の研究を行った。一卵性の双子の遺伝物質は100%同じなので、肥満の環境要因と遺伝要因どちらが強く影響するのかを明らかにした。その結果は「肥満を決定する要素の約70%は遺伝によるもの」と発表した。

1992年にヨーロッパで行われた、がんと栄養に関する大規模なコホート研究は、10か国から52万1448人のボランティアを募って行われた。5年にわたる追跡調査の結果、赤肉、鶏肉、加工肉などの肉全般は、総カロリー摂取量を調整しても体重増加と深いかかわりがあることがわかった。北米のデータによると加工された赤肉、加工されていない赤肉の両方とも体重増加に関係があり、毎日肉を余分に摂取すると約400グラム体重が増加した。

2010年にアメリカ合衆国農務省が発表した「米国人のための食生活指針」では、「体重を管理するためにカロリーの総摂取量をコントロールしよう」と力強く推奨されました。食事量を減らし、運動量を増やす戦略

2012年、アメリカ糖尿病学会とアメリカ心臓協会が、体重を減らして健康を増進させるために、低カロリーの甘味料の使用を推奨する共同声明を出した。アメリカ糖尿病学会はウェブサイトで「何か甘いものがほしくなったときには人工甘味料を使った食べ物や飲み物を摂るのも一つの手だ」と述べている。

2013年、朝食に関する研究のシステマティック・レビューを行ったところ、ほとんどの研究が、得られた結果を自分たちの意向に添ったように解釈していたことが分かった。朝食を食べると肥満になりにくいと信じていた研究者は、調査結果を自分のバイアスに合うように解釈していた。

2014年、野菜や果物の摂取量を増やして体重を減らすことができるのかを調べたすべての研究結果を研究者たちが集めた。だが、どの研究を調べても減量の効果を示すものはありませんでした。

疑問が残る施策

1988年、アメリカ心臓協会(AHA)が「心臓にやさしい食品」というマークの使用許可を有償で与えることにした。その結果、栄養面に疑問の残る食品までAHAのお墨付きを得ることになった。公益法人である科学センターの試算によると2002年にはAHAがそのマークの提供だけで2000万ドルを得たという。対象となる食品が25個以上あれば、数量割引までしていたそうだ。

2011年、アメリカのある公益調査グループが、農業への補助金の29%がトウモロコシの生産に対して給付され、12%が小麦の生産に対して給付されていると発表した。トウモロコシは、コーンシロップ、異性化糖(果糖ブドウ糖液)、コーンスターチなど、高度に精製された炭水化物に加工して販売される。小麦は、小麦粉となり様々な商品に加工されて売られる。一方で、精製されていない炭水化物は金銭的な援助をほぼ受けていない。

「貧困」と「肥満」

1950年、ひどい貧困のせいもありピマ族に肥満が広がった。ピマ族は、アメリカ南西部に住む先住民族で、北米において糖尿病の発症率と肥満率が最も高い。成人の50%が肥満で、そのうち95%が糖尿病を患っている。従来の生活は、農業、狩猟、漁業によって成り立っていたが、1900年代の初頭に物品を交換する交換所ができて、生活スタイルが様変わりした。温室で長期保存ができる精製された炭水化物、特に「白い砂糖」と「白い小麦粉」が取って代わるようになった。

「子どもの肥満」の研究

1946年に小児科医のベンジャミン・スポック博士が出版した育児の聖書ともいえる「スポック博士の育児書」のなかで子どもの肥満に対して「こってりしたデザートは食べなくて何の問題もない。特に肥満で体重を減らそうと思っている子供は食べてはいけない。プレーンなでんぷんの食べ物(シリアル、パン、じゃがいもをどれくらい食べるかによって、どれくらい体重が増えるか減るか決まる」

1990年代後半から子どもの肥満を予防するための研究が大規模な研究が行われた。国立心肺血液研究所は2000万ドルを投じて8年にわたる研究「Pathways」に着手した。ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院にある人間栄養学センターのトップベンジャミン・カバレロが主導し、41校の児童1704人を対象にした実験が行われた。その中の数校で、肥満予防プログラムが実施され、その他の学校では通常通りのプログラムが行われた。肥満予防プログラムは「運動量を増やして低脂質・低カロリー」というものだ。3年間で約38キロの体重が減少するはずだが、結果は少しも減らなかった。学校で体育の授業を増やした子供は家では動かない、学校で静かに過ごしていた子どもは学校から帰ってから活発に動いていたのだ。

1997年~2000年にかけて、子ども肥満はすべての年齢層において爆発的に増えました。6~11歳の子どもは、7%→15.3%に増え、12~19歳の子どもは、たった3年で3倍以上の5%→15.5%に増えた。

2004年~2008年にかけてオーストラリアで行った実験で、0歳~5歳までのおよそ1万2000人の子どもを対象に実施された。保育所を2つのグループに分けて、ひとつのグループではロンプ&チョンプ社による教育プログラムが実施された。①糖分が多く含まれている飲み物を大幅に減らし、水や牛乳を飲むこと、②エネルギー密度の高い間食を大幅に減らし、野菜や果物の摂取量を増やすこと。脂質やカロリーを減らすのではなく「間食と糖分」が減らされた。この方法は「インスリン分泌」「インスリン抵抗性」に対抗できるものだ。2歳~3歳半の実験群の子どもたちの肥満率は2、3%までに減少した。

2010年にはテネシー州メンフィスの女性を対象に複数の場所で「健康増進に関する研究」が行われ、コミュニティ・センターで8~10歳の女の子を対象に肥満防止プログラムの実験が行われた。被験者の生徒たちは「加糖飲料と高脂質、高カロリーの食べ物を減らし、水・野菜・果物の量を増やす」というもので、1年目には1日の摂取カロリーが1475kcal→1373kcalに減り、2年目には1347kcalに減った。対照的に比較群の生徒たちの1日の摂取カロリーは2年目には1379kcal→1425kcalに増えた。しかし、被験者の体重は減らなかった。さらには2年後の体脂肪率は28%→32.2%に増えていた。

2014年「米国医師会雑誌」が2歳~5歳までの子どもの肥満率が2003年から2012年にかけて43%減少したという統計を発表した。砂糖の添加が1977年から増えたことによって、肥満が増えていったが、1990年代の後半になる頃には砂糖が体重の増加に影響していることが注目され始めた。2000年になって砂糖の摂取量が減り始めたためにその5年~10年後に肥満も減り始めたというのが真相だろう。子どもは高いインスリン値にさらされた期間が短いためインスリン抵抗性がそれほど強くない。

「大手食品会社」の歴史

1970年代、一人当たりの加糖飲料の消費量はそれまでの倍になった。1980年代に入る頃には水道水を飲むよりも加糖飲料を飲む方が一般的になり1988年までアメリカ人は年間212リットルもの加糖飲料を飲んでいた加糖飲料に含まれる糖分がアメリカ人の食事に占める割合は1970年に16%だったが、2000年には22%に増えていった。その後、2003年から2013年にかけてアメリカのソフトドリンクの消費量は20%近くも減った。

2007年ソフトドリンクについて調査を発表したハーバード大学のディヴィット・ラドウィグ教授は、研究対象となっている製品を製造している企業から研究のため資金提供を受けている場合、その製品の肯定的な結果が出る確率は「約700%」だと試算した。ニューヨーク大学で栄養学や食品についての講義を担当しているマリオン・ネスル教授は、2001年に「スポンサーの商業利益に資するような結論を出さない研究はほとんどない」と結論づけている。

2014年、加糖された製品は健康に良くないとされ、コカ・コーラ社の売り上げは9年連続の減少となった。

「ダイエット飲料」

2008年に行われた地域における動脈硬化リスク研究(ARIC)では、ダイエット飲料を飲んでいる人はメタボリック症候群になる確率が34%高まることが分かった。2007年に行われたフラミンガム研究でも50%高まるという結果が出ている。

2012年、マイアミ大学のハナ・ガーデナー教授が、ダイエット飲料を飲むと脳卒中や心臓発作などの心血管イベントのリスクが43%高まるということを発見した。

2014年にはアイオワ大学病院のアンカー・ヴィアス医師が、5万9614人の女性を対象に8年余りわたって行った研究結果によると、1日に2杯以上のダイエット飲料を飲む人は心血管イベント(脳卒中や心臓発作)のリスクが30%高まるとのことだ。

「人工甘味料」発見と研究

1879年6月に、ロシアの化学者コンスタンティン・ファールバーグは、世界で最も甘い人工甘味料「サッカリン」を発見した。砂糖がついていないはずのロールパン食べたとき、驚くほど甘かった。実験用の化合物をこぼしてロールパンについてしまったようで、急いで実験室に戻り、すべてを味見して回り発見に至った。

1965年に人工甘味料「アスパルテーム」が発見された。アスパルテームはスクロース(ショ糖)より約200倍甘いが、動物実験でがんを誘発する危険があることが分かっている。なのに、1981年から使用許可を受けている。その後「アセスルファムカリウム」さらに「スクラロース」へと人工甘味料の人気が変化した。

2009年の実験では、健康なボランティアの被験者に1日の摂取カロリーの25%をグルコースかフルクトースで甘未が加えられた粉末ジュースで摂ってもらった。実際に多くの人が普段の食生活でこのくらいの割合の糖分を摂っている量だ。GI値が低いフルクトースは血糖値をほとんど上げなかったが8週間で前糖尿病の症状が出た。インスリン値とインスリン抵抗性の値は、フルクトースの方が高かった。



【炭水化物・糖分】など各栄養の研究

糖分・炭水化物・脂質の3つについて、健康に悪い・太りやすいという理論と、健康に悪くない・太らないという理論が、各時代の各研究で述べられているのでご紹介します。

現段階での最新見解として、どの情報が正しいのかという結論については、下記の記事でご確認ください。

《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:後編

「糖分」が健康に悪い理論

1972年にイギリスの高名な栄養学者ジョン・ユドキン(1910~1995年)が出版した「純白、この恐ろしきもの」では、食品に含まれる脂質と心臓病には何の関係もないとしている。さらに、心臓病や肥満を引き起こす犯人は「糖類」だと考えている。

1977年にマクガバンのガイドラインを推奨した「米国人のための食生活指針」がつくられた。「食事で糖分を摂りすぎるのは危険」ともしている。しかし、脂質が危険だと注目をされすぎて糖分は見逃されがちだった。

2004年、ルイジアナ州立大学のジョージ・ブレイ教授が「果糖ブドウ糖液糖の使用量増加を反映するように肥満が増加している」と示して果糖ブドウ糖液糖は、深刻な健康問題を引き起こす可能性があると意識が変わってきた。

2013年には中国人の成人およそ11.6%が2型糖尿病になり、アメリカの11.3%を抜く結果となりました。これは、炭酸飲料業界は、欧米ではではなくアジアに活路を見出して展開したことが原因だと考えられています。2007年以降2200万人の中国人が新たに糖尿病と診断されたが、これはオーストラリアの人口に匹敵する数で、1980年に2型糖尿病を患っていた中国人が1%だったことを考えると、衝撃的な数字だ。わずか1世代で、糖尿病の罹患率が1160%と伸びた。砂糖は、精製された炭水化物よりもはるかに太りやすく2型糖尿病にもなりやすいと言える。

「糖分」は悪くない理論

1986年、アメリカ食品医薬品局(FDA)の糖類研究班は1000件以上の研究結果を統括的にレビューして「糖分の摂りすぎが危険なことを示す決定的な証拠はない」とした。1988年に「糖分は概して安全たと考えられる」と改めて肯定した。

1989年、米国科学アカデミーの「食事と健康:慢性疾患を予防するために」では「糖分の摂取は、虫歯を除く慢性疾患のリスクと要因は認めれない」とされた。

「炭水化物」が健康に悪い理論

低炭水化物ダイエットの生みの親、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(1755~1826年)は、「美味礼讃」に次のように記している。「でんぷん類が含まれる食べ物を主食にする動物はすべて否応なしに太っている。人間もこの不変的な法則の例外ではない」

1863年、世界で最初のダイエット本と言われる「市民に宛てた肥満についての手紙」という冊子を出版した。イギリスの葬儀屋、ウィリアム・バンティング(1796~1878年)が精製された炭水化物が太る要素だと再発見しました。

1950年代には、精製された炭水化物の量を制限する食事療法が肥満の標準的な対処法として確立された。

1953年、アルフレッド・ペニントン博士は医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に寄稿した記事で、肥満における炭水化物の役割を強調している。

2000年代には、低炭水化物の食事療法が、肥満やインスリン抵抗性の症状がある人に効果的であるという研究が盛んに行われている。

「炭水化物」健康に悪くない理論

1989年、スタファン・リンドバーク博士が、いまでも伝統的な食事を摂っているパプアニューギニアのキタヴァ島に住む人々の研究をした。ヤムイモ、サツマイモ、サトイモ、キャッサバなどでんぷん質を多く含む野菜を主食としていて、推定69%のカロリーを炭水化物から摂っており、加工された西洋食から摂るカロリーは、わずか1%程度。炭水化物の摂取量が多いにも関わらず、キタヴァ島の人々はインスリン値が低く、肥満の人はほとんどいない。

1995年にアメリカの心臓協会(AHA)が発行した冊子「アメリカ心臓協会が勧める食事法 健康な米国人のための食生活指針」を見ると「脂質とコレステロールを多く含まないパン、シリアル、パスタ、でんぷん質を含む野菜を週に6食以上は食べること」と記されている。信じがたいが、飲み物は「フルーツ・ポンチや炭酸飲料を選びましょう」と書かれている。

「高脂質」が健康に悪い理論

1950年代頃に心臓病の大幅な増加が認知され、社会問題になっていった。「脂質」が心臓発作を引き起こす原因である血中の脂肪分「コレステロール」を増やすと考えられた。

1973年、米国医師会の「食べ物と栄養に関する委員会」がアトキンス博士の説を痛烈に批判する本を出版した。当時の医師たちは、食事に含まれる高脂質が心臓発作や脳卒中を引き起こすのではないかと懸念していた。

1977年、栄養と人間欲求における合衆国上院特別委員会の委員長ジョージ・マクガバンは「マクガバン報告」と呼ばれるレポートで「脂質はカロリーが高いため、心臓病を引き起こすだけでなく肥満の原因になる」としている。

「高脂質」は健康に悪くない理論

1989年に行われた「Diet and Reinfarction Trial(食事と再梗塞試験)」では、初めて心臓発作を起こした2033人の男性を無作為に選び、3種類の異なる食事をしてもらった。低脂質ダイエットも食物繊維をたくさん摂る食事法も特に効果はありませんでした。これに対して高脂質な地中海食は、数年前にアンセル・キーズ博士が睨んでいた通り、効果があった。近年行われた「PREDIMED」などの試験では、ナッツ類やオリーブ油などの天然油脂を摂取するのが効果的であるとの結果が出た。



【健康・ダイエット】の研究

各年代に世界各国で、様々な健康法やダイエット法などが行われてきましたので、ご紹介します。

「カロリー制限」理論が多発

1918年に、アメリカの意思で新聞にコラムを掲載していたルル・ハント・ピーターズが出版した「Diet and Health, with Key to the Calories(食事と健康ーカロリーを理解するために)」はベストセラーになっている。すると、アメリカ合衆国食品局は、カロリー計算が一般化するように方針を転換させた。

1919年、ワシントンのカーネギー研究所で、摂取カロリーを減らしたときにエネルギーの総消費量がどのように変化するかに実験が行われた。研究対象のボランティアは1日の摂取カロリーを1400~2100kcalに制限する半飢餓状態におかれ、経過を観察された。これは通常の摂取カロリーより30%削減された食事です。参加者の総エネルギー消費量は30%も減少し、平均して実験前より1950~3000kcalに減っていた。つまり、30%のカロリー制限をすれば、消費カロリーもほぼ同じ30%減少する

1950年の半ばには「カロリー制限理論」が優勢になっていく。

1944年と1945年に、アンセル・キーズ博士(1904~2004年)が、飢餓実験を行った。これは「ミネソタ飢餓実験」と呼ばれ「The Biology of Human Starvation(飢餓状態にある人間の生理学)」として1950年に出版された。実験内容は、健康で平均的な体格の男性36人を始めの3か月は標準的な食生活(1日の摂取カロリー3200kcal)で過ごし、次の6か月は、目標である体重24%減を達成するよう摂取カロリーの調整が行われ、半飢餓状態で過ごした。与えられた食事は、じゃがいも、パン、マカロニなど高炭水化物なものばかりで、肉や乳製品は与えられなかった。加えて運動として週に22キロ歩かされた。被験者たちは常に寒がり安静時の代謝量は40%も落ちていた。体力、心拍数、心臓の1回の拍出量、平均体温、血圧も下がっていた。精神的にも弱り、集中力がなくなり大学を中退する者まで出た。他にも、髪や爪が生え変わらなくなることが確認された。体はエネルギーのバランスをとるため消費カロリーを抑えようとしていた。

1983年、著名な内分泌科医のバントル医師が「ニューヨーク・タイムズ」紙で、「糖尿病患者も、摂取カロリーを一定に保ちさえすれば糖分を含む食べ物を食べてもいい」と主張した。

1990年代の初頭にロバート・ローズ博士が「Eat Your to Health(健康になる食べ方)」のなかで体重をコントロールできる科学的な方法で「カロリー計算」を紹介してから一般的になった。

2006年、アメリカ国立衛生研究所で約5万人の閉経後の女性を集めて、過去最大規模の食事に関する研究を行った。このランダム化比較試験は「Womaen’s Health Initiative Dietary Modification Trial(女性の健康促進において食事介入が疾患リスクを低減させるかどうかの試験)」と呼ばれた。研究対象となったおよそ3分の1の女性たちは、1年に渡って18種類の教育セッションやグループ活動に参加して、食事制限や運動量の増加をはかった。比較グループの女性たちはいつもと変わらない食生活を送るよう指示された。医者にすすめられた食事法を取り入れることで肥満、心臓病、がんなどが期待通り減るかを7年に渡って追跡調査された。食事量を減らし、運動を増やしたグループは、1年目は体重が平均1.8キロ減少したが、2年目には体重が増え始め、実験が修了する頃には普段通りに生活をしたグループと大差がなかった。

「カロリー制限」理論の矛盾

1960年代の終わりごろ、イーサン・シムズ教授が太らせる実験をおこなった。バーモント大学で痩せている学生を集め、なんでも好きなものを食べて体重を増やすように指示した。しかし、学生たちは肥満になれなかった。そこで次は、運動量も制限した実験をおこなった。バーモント州立刑務所の受刑者たちを被検体にして毎日4000kcalを食べ、運動も厳しく制限した。最初は体重が増えたがその後は増えなくなっていった。なかにはたくさん食べるのがしんどくなり実験から脱落する人もでてきた。4~6か月で元の体重の20~25%増えたが、これはカロリー理論から予測したものより大幅に少ないかった。被験者のエネルギー消費量は50%も増えていて、元の体に戻そうと余分なカロリーを燃やそうとしていたことが分かる。

1990~2010年にかけて行われた米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータによると「摂取カロリー増加と体重の増加に相関関係はない」との結果が示された。肥満は1年ごとに0.37%増えたが、摂取カロリーはほぼ一定だった。

様々な「ダイエット法」

1825年、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランが、低炭水化物と肥満についての本を執筆している。

ホレース・フレッチャー(1849~1919年)は一口食べるごとに100回噛むようにすれば肥満も治るし、あごの筋肉も鍛えられると強く信じ、彼自身が実践することで18キロのダイエットに成功した。20世紀初頭には「フレッチャライジング」が人気のダイエット法になった。

1963年ロバート・アトキンス博士は太っていたが、低炭水化物ダイエットを実践し、カロリー制限をしなくても体重を減らすことができた。そこで患者たちにもすすめた結果、目をみはるような結果がでた。1972年に出版した「Dr.Atkins’ Diet Revolution(アトキンス博士のダイエット革命)」はベストセラーのダイエット本となった。

1967年に出版された「The Doctor’s Quick Weight Loss Diet(医者が勧める速攻ダイエット)」では、著者のアーウィン・スティルマン博士が、高たんぱく質、低炭水化物のダイエットを推奨している。食品から摂取するたんぱく質を代謝するにはエネルギーが必要なので、たんぱく質の量を増やせば体重減につながるという理論。

1983年、リチャード・バーンスタイン医師が、当時の栄養学や医学の教えに反して、厳格な低炭水化物の食事法で糖尿病の治療を行う新しい診療所を開設して物議を醸した。

1992年と1999年に、アトキンス博士が自身のベストセラーを改訂して「アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット」を出版。

1993年に、リチャード・ヘラー/レイチェル・ヘラーらによって「低炭水化物ダイエット ごはん、ぱん、パスタ…やめられない、やせられない人へ」を出版。

1997年、リチャード・バーンスタイン医師が「バーンスタイン医師の糖尿病の解決 正常血糖値を得るための完全ガイド」を出版。

2002年、数々の賞を受賞しているサイエンス・ライターのゲーリー・トーベスがニューヨーク・タイムズ紙に「いままで言われてきたことがすべて真っ赤な嘘だったらどうする?」を寄稿したことでローカーボ・ダイエットの人気は燃え上がった。その記事で「食事に含まれる脂肪分は、実際は人間の健康に無害である」という説を展開した。さらに「いいカロリー、悪いカロリー」「ヒトはなぜ太るのか?そして、どうすればいいか」を続けて出版し、炭水化物が体重増加の根本原因だという説を詳細に書いている。

2004年アトキンス博士が1989年に設立した会社、アトキンス・ニュートリショナルズは、顧客離れにより多額の負債を抱えて倒産してしまった。低炭水化物ダイエットは、甘いものを厳しく制限するので、理論的には痩せるが40%近くか1年以内にやめてしまいました。

2007年、米国医師会雑誌に、当時よく行われていた4つのダイエットの比較を行った研究結果が掲載された。低炭水化物のアトキンス・ダイエットは、短期間でかなりの体重を減らすことができ、全身の代謝もよくなり、血圧、コレステロール値、血糖値もすべて大幅に改善していることが分かった。ほか3つのダイエット方法は、脂質の摂取量を極めて低くする「オーニッシュ・ダイエット」、たんぱく質・炭水化物・脂質の割合を3:4:3にする「ゾーン・ダイエット」、標準的な「低脂質ダイエット」だった。

昔ながらの健康法「ファスティング」

医学の父、ヒポクラテス(紀元前460~375年頃)が信用を置き、指示していた医療法に「ファスティング」や「アップルサイダービネガー(りんご酢)」を飲むという方法があった。「具合が悪いときに食べると、もっと具合が悪くなる」と書いている。

古代ギリシャの著述家であり歴史家だったプルタルコス(46~120年頃)も「今日は薬を飲まずにファスティングをした方がいいだろう」とプラトンとその弟子のアリストテレスもファスティングの忠実な支持者だった。

毒物学の創始者で近代西洋医学の父のひとりと言われるパラケルスス(1493~1541年)も「ファスティングは最も優れた治療法だ。体を内側から治すものである」と述べている。

アメリカ建国の父のひとりでもあり、博学として名高いベンジャミン・フランクリン(1706~1790年)も「最良の薬はファスティングである」と書いています。

1951年、アトランタにあるピードモント病院のW・L・ブルーム医師が病的な肥満に対する治療法としてファスティングを再発見した。その後、他の医師も取り入れ、ダンカン医師やドゥレニック医師も、肯定的な結果を「米国医師会雑誌」に掲載した。

2011年の研究では「1食当たりの食事量を制限する方法」と「間欠的ファスティング」の比較がされた。6か月後の体重の減り具合はどちらも似たようなものだった。やはり短期ダイエットなら、基本どんなものでも成果をだせる。だが、間欠的ファスティングをしていたグループのインスリン値とインスリン抵抗性の度合いは、とても低かった。さらに進んだ研究では間欠的ファスティングをカロリー制限と共に行うのが体重を減らすのに効果的であることが確認されている。危険な内臓脂肪からも先に減っていくと考えられていてLDLコレステロールや中性脂肪にも改善が見られた。



【インスリン・ホルモン】などの研究

「太る」か「太らない」かは、カロリーではなく、インスリンなどのホルモンによって決まります。

過去の研究をもとに新しい理論を立てて、研究して、様々な理論や発見があるので、ご紹介していきます。

「インスリン」の研究

1980年、実験によってフルクトースが人間にインスリン抵抗性を発現させることが分かった。健康な被験者が1日に1000kcalのグルコースかフルクトースを与えられた。するとグルコースを与えられたグループのインスリン感受性に変化はなかったが、フルクトースを与えられたグループのインスリン感受性がたった7日で25%も減少した。

1986年、マイケル・ノック教授が被験者の血糖反応はグルコース(ブドウ糖)を口から摂ろうと、静脈内に投与しようと同じだと気が付いた。血糖値は同じでも、経口摂取したグルコースに対するインスリン反応の方がはるかに大きかった。その後、グルコースが経口摂取した際に、胃からインスリンの分泌を増加させる「インクレチン」というホルモンを分泌することがわかった。グルコースを静脈に投与する場合は、胃を通過しないためインクレチンの効果は現れない。一方、グルコースを経口摂取したあとのインスリン分泌には、インクレチンの影響が50~70%関わっている。

1993年に行われた「糖尿病のコントロールと合併症の発症に関する試験」で、1型糖尿病患者に標準的な量のインスリンを投与した場合と、投与量を多くした場合との比較が行われた。なんと、インスリンを多く投与されたグループの被験者の体重は平均で4.5キロ増え、標準的な量と投与されたグループよりも多くの体重増加が見られた。しかも、30%以上もの被験者が大きく体重が増えた。

1993年に「インスリン増→インスリン抵抗性の発見」の実験が行われた。2型糖尿病の患者たちは、集中的なインスリン治療を始めた。インスリンがまったくなかった状態から6か月で1日に投与するインスリン量をかなりの量まで増やしていった。患者たちの血糖値はコントロールされていたが、インスリン抵抗性は高まっていった。そして、血糖値が改善したにも関わらず糖尿病は悪化した。1日の摂取カロリーも300kcal減らしたにも関わらず体重が平均して8.7キロも増えていた。

1994年に行われた研究では、「肥満でない人」「最近肥満になった人(4年半未満)」「長期肥満の人(4年半以上)」3つのグループの患者を比較した。予想通り、肥満でない人のインスリン値は低かった。2つの肥満グループのインスリン値は同じくらいに高かった。つまり、インスリン値は時間とともに上がり続けるものではないということだ。インスリン抵抗性は肥満である期間が長いほど症状がひどくなる。

1997年にスザンヌ・ホルトが考案した「インスリン分泌指数」は基準分量の食品を摂ったときのインスリン上昇値を測定するものだ。なんとGI値とまったく異なる結果になることが分かった。精製された炭水化物だけでなくたんぱく質も同じくらいインスリン値を上昇させていた。

2010年に行われた研究で「卵」「七面鳥」「マグロ」「ホエイプロテイン」の4つのたんぱく質が、被験者のインスリン値に与える影響が比較したところ、ホエイプロテインのが最もインスリン値を上昇させた。その4時間後に被験者はブッフェ形式のランチが振舞われたら、ホエイプロテインを摂っていたグループが他のグループよりも食べる量がが少なかった。ホエイプロテインがインスリン値を上げたので「お腹いっぱい」だったのだ。

「ホルモン」の作用

1959年、ロメイン・ハーヴィが「脂肪細胞が体内を循環する満腹因子を生み出している」と提唱した。脂肪の蓄積が増えると、この因子が増える。この因子は血液を介して視床下部に到達し、その結果、体には体重を増えすぎないようにする機能がある。

1966年に行われた研究では静脈内にアミノ酸の一種である「ロイシン」を投与すると、インスリンの分泌が促されることがわかった。インスリンの分泌を刺激するのは血糖だけというのは間違いであることが確認されている。

1994年、満腹因子の存在が「レプチン」であるとわかった。レプチンとは脂肪細胞が生み出すたんぱく質だ。脂肪組織が増えるとレプチンが増え、脳まで達すると食欲が抑制されるというメカニズムで、これは1959年ロメイン・ハーヴィが提唱したものとほぼ同じだ。

2011年、体重の減少に適応しようとするホルモンの働きについて精密に調べられた。この研究で、被験者たちは1日あたり500kcal削減された食事を与えられ、その結果、平均で13.5キロ体重が減少した。続いて、その体重を維持するためにグリセミック指数(GI値)の低い低脂質の食事を摂ること、1日に30分の運動をすることを課された。すると、被験者のやる気に反して体重は半分だけが元に戻った。この研究で、主に食欲を増進させるホルモン「グレリン」は体重が減ったことによる分泌量が大幅に増え、1年以上経ってもまだ通常レベルより分泌量が多いことが分かった。また、ペプチドYY、アミリン、コレシストキニンなど食べ物に含まれるたんぱく質や脂質に反応して満腹感を与える3つの満腹ホルモンの分泌量は、体重が落ちてから1年以上経っても実験前よりずいぶん低かった。

「GI値」と「GL値」

1977年に行われた大規模な男性医療従事者の疫学研究では、6年にわたって4万2759人の男性が調査された。GI値の高い食事と食物繊維の少ない食事の組み合わせは、2型糖尿病の発症リスクが217%も高まった。

1980年代、トロント大学のディヴィッド・ジェンキンス教授が、血糖への影響という視点から食品群の再分類を行ったが、これは異なる炭水化物を比較するのに役立つものだった。この先駆的な作業から、食後血糖値の上昇度を示す指数「グリセミック指数(GI値)」が生まれた。

「食物繊維」の研究

1999年、看護師の卵を対象にした看護師健康調査で、16年にわたって8万8757人の女性看護師が追跡調査されたが、食物繊維を多く摂っても結腸がんのリスクが明らかに減少するとは認められなかった。

2000年に行われた食物繊維の多量摂取がどのような結果をもたらすのか調べるランダム化資格試験でも腺腫と呼ばれる前がん病変が減るという結果は得られなかった。

「トランス脂肪酸」と「コレステロール」

1902年、ウィルヘルム・ノルマンが植物油を加工して水素化して飽和させ、多価不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸にできることを発見した。これが「トランス脂肪酸」だ。食品のラベルでは「水素添加植物油」と書かれている。

1948年、ハーバード大学がマサチューセッツ州フラミングハムの町全体を対象として何十年にもわたる食事と習慣に関するコホート研究に取り組んだ。そして2年ごとに血液検査と問診による調査が行われた。血中のコレステロール値の高さは、心疾患と関りがあったが、コレステロール値を上昇させたのは脂質の多さではなかった。

1990年、オランダの研究者が、トランス脂肪酸を摂取すると体に悪いLDLコレステロールが増え、体にいいHDLコレステロールが減ることに気づいた。

2000年になる頃、消費者のほとんどがトランス脂肪酸を避けるようになり、デンマーク、スイス、アイスランドでは「トランス脂肪酸」の摂取が禁じられた。

【まとめ】肥満・ダイエット研究の歴史

「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という本に記載されている「肥満やダイエットに関する研究の歴史」を年代別にまとめてみました。

《著書》トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ

世界で様々な健康・肥満にに関する研究が行われています。短期間であれば、どんなダイエット法でもほぼ効果がでるということが分かりました。

結局のところ、人間を太らせるのは「カロリー」ではなく「ホルモン」なということです。ホルモンの中でも「インスリン」による影響が大きいということです。

精製された炭水化物は、急激に血糖値を上げてインスリン値も上昇しますが、それ以外の食べ物も血糖値を上げます。

つまり、カロリーに関わらず、食べている時間が長ければ太っていくので、食べない時間を作っていくことが大切ということです。もちろん、食べるものの質にもこだわるとより良いです。

あと、意外だったのは脂質は体に悪いという印象がありましたが、良い脂質は積極的に摂っていきたいなと感じました。

詳しくは、下記でまとめた内容をご覧いただいて、今後の食生活やダイエットの参考にしていただければ幸いです。

《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:後編

短期間でのファスティングや、普段の栄養補給にファスティングを行うのは独自で行っても問題ありませんが、長期ファスティングは専門家のアドバイスのもと実践するようにしてくださいね。

わたしもファスティング指導を行っていますので、ご興味のある方はお気軽にご質問・お問い合わせいただければと思います。

 

 

最新情報をチェックしよう!