【本の要約②】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:腸で病気予防

あなたは、「腸」が健康のカギをにぎることをご存知でしょうか?

  • 腸ってどんな役割があるの?
  • 腸の壁ってなに?
  • 腸内細菌と病気は関係があるの?

特別視したことはないかもしれませんが、体の一部である「腸」は、あなたが想像する以上の重要な役割を果たしてくれています。病気を予防していくには腸を整えないと話になりません。

わたしは、ファスティング(断食)や食事指導をしている栄養士です。本記事では、「死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事」という本を要約して紹介していきます。

興味深い内容が多いので、数記事にわたってまとめています。ぜひ最後までお付き合いいただき、若々しく健康に生きる方法をマスターしていきましょう。

まずは要約記事①からご覧いただくと理解が深まると思います。

《参考》【本の要約①】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:老化と腸内細菌

「腸の壁」で病気を食い止める

死ぬまで若々しく健康に生きる老けない食事_本の表紙

ホロビオーム(腸内微生物叢)が、人の寿命と健康にどれほど大きな役割を果たしているか、要約記事①でご理解いただけたことでしょう。

体内に棲む菌が豊富で多様性に富んでいれば、菌があなたを若々しく保たせてくれます。悪い菌を追い出し、良い菌の成長に必要な食べ物をたっぷり摂取すれば、あなたにも微生物叢ぶにメリットだらけです。

ですが、残念ながら話はそれほど単純ではありません。以下の2点がポイントです。

  1. 微生物叢にふさわしい菌がいる
  2. 異物が腸管上皮バリアの向こう側にいる

細菌の細胞壁の外側にあるリポ多糖が、腸から臓器、組織、リンパ、血液と越境するなら、その細菌が良いものでも悪いものでも同じことが起きます。

侵入者がいるべき場所ではない所に潜んでいると、免疫反応が引き起こされ、広範囲の炎症が発生し、老化や病気を加速させる基礎となってしまいます。

ヒポクラテスの有名な格言に「すべての病気は腸から始まる」というものがあります。

「リーキーガット」が病気を引き起こす

まずは、炎症が老化を引き起こすメカニズムを理解するため、腸壁の機能を見ていきましょう。

腸管の表面は1枚の粘膜細胞(腸管上皮細胞)で覆われており、この細胞は物質の出入りを防ぐために密着結合しています。

粘膜細胞は、わずか細胞ひとつ分の厚さしかありませんが、その表面積はテニスコート1面分に相当します。そして、腸の内壁に沿って配置された免疫細胞(特殊な白血球)は、腸壁を維持するために重要な役割を果たしています。

実は、免疫細胞の約60%が腸の内壁に集まっています。こうした免疫細胞は、胃腸管から何を追い出すべきか、何を留めるべきか決める役割を担っています。

粘膜細胞がしっかりと並んで細胞の形を形成していれば、腸の内壁は、防波堤として機能し、分解されたアミノ酸や脂肪酸、糖分子などの単一分子以外のものは、すべて腸管上皮バリアの外側へ留めておけます。

しかし、この防波堤がすり減って微細な穴がたくさん開くと、他の化合物が漏れ入ってきてしまい、健康を害することになります。

これが「リーキーガット(腸管透過性亢進)」です。加齢に伴う一般的な病気のほとんどがこれに起因すると言われています。

免疫系は、些細な事に何度も何度も対応することで、問題が生じてきます。それによって、アルツハイマー病、がん、糖尿病、自己免疫疾患など、加齢に伴う一般的な病気の究極の原因となる慢性的な炎症が発生します。

《参考》【リーキーガット症候群とは】症状と原因、悪化させる食品、治療方法

老化と体内の炎症

老化は、細菌やその他の粒子を腸壁から通過させてしまうリーキーガットと、腸内細菌のバランスの乱れから起きます。

腸壁を傷つけ、絶え間ない炎症を誘発する犯人のひとつが「レクチン」です。レクチンには、腸管を覆う粘膜細胞の間のタイトジャンクション(密着結合)をこじ開ける作用があります。

できれば、レクチンが腸に送られないようにするべきです。レクチンを食べないか、あるいは鼻や口、食道の粘液がレクチンを腸粘膜に届く前に捉えて閉じ込めるという方法があります。

保護する「粘液」

レクチンを含む食品をたくさん食べていると、粘液が常にレクチンとの結合に使われてしまい、粘液が足りなくなってしまいます。

粘液がなければ、粘液を作る粘膜細胞が酸や細菌、レクチンに直接攻撃されやすくなります。その結果、さらに保護するための粘液がさらに減ってしまいます。

レクチンを捕えるための粘液がなければ、レクチンは腸粘膜細胞の受容体と結合してゾヌリンという化合物を産出し、腸壁バリアを支えるタイトジャンクション(密着結合)を破壊します。

すると、異物が入り込み、そのために体が対応します。そのようなことが毎日起こっていれば「慢性的な炎症」になってしまいます。

レクチンは、人間の重要な臓器や神経、関節などに存在するタンパク質に擬態します。すると、免疫系は敵と勘違いして炎症を起こし、これが自己免疫疾患の原因となっています。

自己免疫疾患は、病原菌が腸壁を越えて体の一部に付着し、それを免疫系が問答無用で攻撃し始めることで発症しますが、これはすべてマイクロバイオーム(微生物叢)という複雑な生態系の乱れから生じています。

リポ多糖(LPS)

レクチンが防波堤に穴をあけたとき、そこを通り抜けるのはレクチンだけでなく、腸内の悪玉菌を含む他の侵入者も入ってきます。特に有害な例としてリポ多糖(LPS)という分子があります。

LPSは細菌が分裂したり死んだりする際にできる細菌の細胞壁の一部です。これが毎日何個も作り出され、腸壁バリアが破壊されると、体内に侵入します。

LPSは生きた細菌ではなく、細菌表面部分にすぎないのですが、生きた細菌と誤認して免疫系が活動し始めます。

なので、LPSが腸壁をすり抜けるたびに免疫系が大忙しとなり、その結果、炎症がますます大きくなってしまいます。

6か月で改善する

自己免疫疾患をかかえた患者102人が著者のプログラムに参加すると、そのうち95人(全体の94%)が6か月後には病気が治り、薬も不要となりました。

腸管バリアの崩壊が、インフラメイジングや老化を早める多くの病気の主な原因だと思われます。

インフラメイジングとは、サイレントキラーとも呼ばれる無症候性の軽度炎症が全身において慢性的に続く非感染性の炎症のことです。

リーキーガットは老化と病気の根本原因です。稀なものだと思われるかもしれないが、それは間違った認識です。

リーキーガットはあらゆるところで見かけることは否定できません。アメリカ国民の100%がある程度のリーキーガットを引き起こしていると考えています。

《参考》【リーキーガット症候群とは】症状と原因、悪化させる食品、治療方法

「鎮痛剤」が腸を壊す

レクチンを除去することは、腸内環境を整え、加齢の影響を遅らせる重要な一歩です。しかし、粘膜をこじ開けてリーキーガットを引き起こす要素は、レクチンだけではありません。

皮肉なことに、最も一般的な原因のひとつは非ステロイド系抗炎症剤・鎮痛剤(NSAIDs)の使用だと言われています。

非ステロイド系抗炎症剤 イブプロフェン、ナプロシン、アリーブ、アドビル、セレブレックス、モービックなど

近年発表された多くの研究により、NSAIDsが腸管バリアに大きな穴を開けていることが明らかになっています。

すると、レクチンなどの生きた細菌が体内に押し寄せてきます。異物が体内に侵入すると免疫システムが全力で動き出し、炎症が起き、痛みが増します。

この痛みを治すためにまた別のNSAIDsを飲むことになり、痛みと炎症の悪循環を助長することになります。

以前の技術では、胃カメラが小腸まで届かなかったため、被害状況を十分に把握することができませんでした。患者が飲みこめる超小型カメラで消化器系を360度見られるようになってから、ようやく何が起こっているか把握できるようになりました。

現在、NSAIDsは医薬品売上の第1位であるとともに、炎症原因の第1位です。炎症こそ治さなくてはならないものなのに!

「胃酸」が守ってくれる

また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)や、その他の胃酸の分泌を抑える「制酸剤」も、腸にとっては悲惨な状況を引き起こす薬です。

口から入った悪玉菌が腸にたどり着く前に、胃酸がそのほとんど殺してくれます。胃酸が不足すると、感染症の原因となるものを含めた悪玉菌に乗っ取られてしまうのです。

「制酸剤」を常用している人の肺炎の発症率は、全く使わない人に比べて3倍もあります。

胃酸はタンパク質を消化するようにできています。なので「制酸剤」を使うと、植物性タンパク質のレクチンに対する防御機能が失われてしまいます。

腸内細菌の多くは酸を嫌うため、酸素も酸もない大腸に生息しています。食物が腸に運ばれるにつれて胃酸は徐々に減少しますが、それは消化酵素が含まれているアルカリ性の膵液と胆汁が加わります。

この弱酸性への移行は、小腸と大腸の間でも起こります。ところが、細菌は大腸の棲みかから小腸へと簡単に這い上がってきます。

そして、腸管バリアを破壊し、リーキーガットを引き起こし、小腸内最近異常増殖症(SIBO)と呼ばれる状態の基礎を築きます。

《参考》【リーキーガット症候群とは】症状と原因、悪化させる食品、治療方法

そうなると、こういった細菌は防御機能のない場所に棲みつき、腸の吸収面を荒し、タンパク質の減少や筋肉の衰えを引き起こすといったやり方で猛威を振るいだします。

おまけに、細菌の台湾の研究によれば、SIBOや過敏性腸症候群(IBS)は、認知症のリスクを高めるそうです。

「重曹」で胃酸を分泌

ジョージア大学医学部の研究で、重曹を関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療に使い始めています。

なぜなら、重曹水を飲むと、胃酸の分泌が促進されるからです。

こうやって、胃酸を増やすことで腸内細菌を本来あるべき場所に留まらせれば、炎症を防ぐことができ、自己免疫疾患の回復につながります。

さらに彼らの研究によると、重曹は腸内の免疫細胞が異種タンパク質を出くわしたときに「落ち着け」という信号を送るそうです。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

何年も前にプロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場したとき、胃酸を作る胃粘膜の特定のプロトンポンプだけを麻痺させることで効果を発揮すると思われていました。

けれど実は、胃だけでなく脳をはじめとした全身のミトコンドリアを汚染して、エネルギー産生できないようにしてしまうのです。

2017年に発表された約1万6000人の40歳以上の健康な人を対象として、長期的に行われた研究では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の累積使用量と認知症リスクに有意な関連性が認められました。

一方、2016年にドイツで行われた研究では、75歳以上の7万4000人のうち、こうした薬を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて認知症のリスクが44%増加するという結果になりました。

他の研究でも、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用量と慢性腎臓病との関連が指摘されています。

こういった病気はすべてミトコンドリア機能障害に起因する可能性があります。

FDA(アメリカ食品医薬品局)がプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用について警告を発し、2週間以上の服用を避けるように勧告しています。

また、こうした薬を飲んでいる人はタンパク質不足に陥りやすいです。食事で摂取したタンパク質は腸で吸収される前に、胃酸でアミノ酸に分解される必要があるからです。

つまり、タンパク質の摂取量が足りないのではなく、アミノ酸に分解するための胃酸が出ていないからタンパク質不足になっているのです。



「インスリン」の誤作動で老化する

グルテンなどレクチンの大半は大きいため腸壁を通過できません。しかし、小麦胚芽凝集素(WGA)と呼ばれる非常に小さなレクチンもあります。

小麦胚芽凝集素(WGA)は、腸粘膜バリアが破れていなくても腸壁を通過する上、特に腎臓で炎症を起こしやすくなります。

そして小麦胚芽凝集素(WGA)はインスリンに擬態する能力があるため、インスリンの誤作動が起き、加齢による筋肉の衰えの主な原因のひとつになっています。他にも体内で多くの問題を引き起こしやすくなります。

さらに、小麦胚芽凝集素(WGA)は、神経細胞からもエネルギーを奪ってしまいます。すると、いくら食べても筋肉細胞と脳細胞は飢え、脂肪細胞は肥えてしまうのです。

脂肪の増加、筋肉の減少に加え、長期的には脳細胞や末梢神経が死滅し、認知症やパーキーソン病、末梢神経障害などの原因にもなります。

今後、全粒粉トーストや全粒粉クッキーを食べる際はぜひこのことを思い出してください。

適度なストレスは必要

小麦胚芽凝集素(WGA)を避ける以外で、腸壁を正常に保つ方法は「ホルミシス」です。

「ホルミシス」とは、大量に晒されると有害になるものを低量だけ晒すことで、そのストレスに対して生物が好反応を示すことです。ホルミシスは長寿の実現に大きな役割を果たしています。

細菌は、脅威が迫っていると判断すると、感染症や腫瘍、さらには死から身を守るための反応を開始します。

ある研究では、低レベルの放射線を生涯にわたって浴びたマウスが、放射線に晒されていない兄弟マウスよりも平均30%長生きしたという結果が出ています。

暑さや寒さ、栄養不足、紫外線、毒素などの環境ストレスを用いた他の実験でも同じように驚くべき結論が得られました。適量であれば生存を促すのに役立ちます。

アルコールもその代表例です。アルコールの影響を調べた研究では、ある程度の量を飲むことは健康に良いが、たくさんは良くないことが分かっています。

500人以上の健康な男性を16年間にわたって追跡調査したある研究では、1日平均小さなグラス2杯のアルコールを摂取した人は、禁酒した人、ほとんど飲まなかった人、飲みすぎた人に比べて長生きし、心臓病の発症率も低かったそうです。

ストレスに耐えられない弱い細胞は、白血球に食べられたり、アポトーシスやオートファジー(自食作用)と呼ばれるプロセスで死ぬように指示されたりします。その結果、強い細胞だけが残ります。

《参考》【オートファジーとは】ダイエット効果・16時間断食・ルビコンとは

「長寿パラドックスプログラム」ではカロリー制限というホルミシストレッサーを利用します。これはヒトに近いアカゲザルも含めたあらゆる動物の寿命を延ばすことがこれまでの調査で明らかになっています。

実際に食べる量を減らさなくても、断食や厳しいカロリー制限をしていると体に思わせる方法がありますのでご安心ください。

「オートファジー」

オートファジーとは、細胞のリサイクルプログラムのことで、細胞の弱い部分や機能しない部分を取り除いて、細胞全体をより強くするプロセスです。

特定の食品に含まれる化合物によって引き起こされる自然なことだが、細胞に一時的なストレスを与えた場合にも起きます。

困難な状況が迫っているという信号を受け取ると、細胞は「強い者だけが生き残る」という考え方を身に着け、強靭になります。

腸の表面を覆う細胞がこのようなプロセスを経ると、腸管バリアが強化されて、異物を侵入させないように留めておけます。そうすると、炎症や病気が減り、健康的に長く生きられるようになります。

《参考》【オートファジーとは】ダイエット効果・16時間断食・ルビコンとは

カロリー制限が寿命を延ばす

2018年フランスで10年間にわたって行われた研究の結果、カロリー制限が霊長類の寿命を延ばすことが初めて決定的に証明されました。

人間と多くの類似点を持つハイイロネズミキツネザルが対象となりました。

この研究では、カロリー制限をした方が寿命が約50%延びました。健康寿命も延びていて、病気にかかることなく若い動物を同等の運動能力と認知力を持っていました。

寿命を延ばす仕組み

寿命を延ばすメカニズムは以下の2つが大きな要因となっています。

  1. カロリー制限をすると微生物叢のエサが減り、子孫を残す数が減る。つまり細菌の成長と繁殖が劇的に減る。
  2. 食べる量を減らすということはレクチンを含む食品をあまり食べなくなるということ。

腸壁を通過する細菌やレクチンの量が劇的に減り、炎症が抑えられます

また、カロリー制限によって腸内のオートファジーを促進して腸壁の機能を向上させます。これにより、たくさんあった腸内細菌は健全性を保つために働く最強メンバーに絞られていきます。

腸内細菌「アッカーマンシア・ムシニフィラ」の働き

腸管上皮細胞は、粘液を分泌しています。その粘液を好んで食べる腸内細菌が「アッカーマンシア・ムシニフィラ」です。

「アッカーマンシア・ムシニフィラ」は、カロリー制限をしても飢えることなく粘液を食べて生きます。レクチンや他の細菌から体を守るために粘液が必要なので、大問題のように思えます。

しかし、彼らが粘液を食べると、もっと粘液を作るように信号を送ります。つまり、粘液を食べるにも関わらず、正味の効果は粘液の増加につながります

粘液が多いほど、侵入者から守る壁は厚くなります。つまり、カロリー制限は腸壁の健全性を向上させることにも役立ちます。

「マウス」による実験

「アッカーマンシア・ムシニフィラ」を補給したマウスの炎症や心臓病の発生が減少しました。

太ったマウスにアッカーマンシア菌を与えたところ、マウスの体重が減り、血糖値も低下しました。

年齢とともに減少

「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という重要な腸内細菌の数は、年齢とともに自然に減少するという問題があります。

そのため、長寿パラドックスプログラムでは、この腸内細菌の欲しがるものを与え、長きにわたって維持できるようにします。

「プーアール茶」

緑茶を発酵させた「プーアール茶」には、多くの健康効果があることが何世紀も前から知られています。

なんとプーアール茶には、アッカーマンシア・ムシニフィラ菌の増加を促す効果があるのです。

先ほども記述した通り「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という腸内細菌が腸管上皮細胞の粘液を分泌を促してくれます。

このような食品を食べたり飲んだりして、定期的にカロリー制限を実践すれば、「アッカーマンシア・ムシニフィラ」の数が飛躍的に増え、腸管バリアが強化されます。

カロリー制限を受けた細胞は、少ない食料でより多くのエネルギーを産生できるようになります。

《参考》有機JAS認定 オーガニック プーアール茶

「幹細胞」で体を再生

「幹細胞」とは、分裂・増殖してできたさまざまな細胞になる可能性を秘めた未分化の細胞です。長寿研究をしている人の多くは、乾細胞が長寿の要だと考えています。

細胞に一時的なストレスを与えると、スイッチが作動して体中の幹細胞が再生されるようになります。

マウスの研究では、24時間絶食すると、細胞が糖の代わりに脂肪を燃焼して使い始めることが分かっています。

このプロセスを「ケトーシス」と呼ばれています。ケトーシスは体にストレスを与え、幹細胞に再生のシグナルを送ります。

健康な「免疫細胞」

南カルフォルニア大学のヴァルター・ロンゴ博士が行った研究では、月に1度、野菜だけを食べるカロリー制限を5日間、水だけの断食を数日間行った参加者の幹細胞が、休眠状態から自己複製の状態に移行しました。

また、断食によって免疫細胞のオートファジーが引き起こされることも発見しました。古く傷ついた免疫細胞が死滅すると、幹細胞が群がってきて、健康な新しい免疫細胞に分化しました。

《参考》【ファスティングとは】断食との違い・ダイエット&デトックス効果

《参考》【オートファジーとは】ダイエット効果・16時間断食・ルビコンとは

健康な免疫細胞は、若々しい長寿の要です。免疫細胞は、がんや細菌などあらゆるものから体を守ってくれます。

一般的に高齢になるほど免疫力は低下するので、「長寿パラドックスプログラム」では年齢を重ねても免疫細胞が働くよう健康で活力のある状態の維持を目指します。

腸にある幹細胞

テニスコートほどの大きさの腸の表面には、微絨毛の根元には細菌や幹細胞が棲んでいます。

腸の表面は驚くほどのスピードで成長と死滅を繰り返しています。腸管上皮細胞は栄養吸収も関わる「重労働」を行うため、絶えず排出され、腸の幹細胞は常に新しい腸管上皮細胞に微絨毛を補充しています。

カロリー制限をすると、一部の細菌が腸内膜を破壊し始めます。それから、微絨毛にいる細菌が援軍が必要だという信号を送ります。

すると、幹細胞が微絨毛を増殖させて腸内膜を再構築します。つまり、断食が体にいいのは「体に悪い」からなのです。

《参考》【事例】-5.4kgダイエット!3日ファスティングの効果(男性41歳)

「ビタミンD3」で活性化

ビタミンD3が十分にないと腸内膜が劣化しても幹細胞が活動しません。腸内膜の劣化が進むと、テニスコートくらいあったものが卓球台のような大きさにまで縮小してしまいます。そうすると、十分な栄養を吸収できず、栄養失調になってしまいます。

《参考》ビタミンD-3 サプリメント

ある最新の研究では、重度の栄養失調の子どもたちに1日20万IUという大量のビタミンD3を投与しました。IUとは、脂溶性ビタミンなどに使用される単位です。

その結果、子どもたち全員がそれほどカロリーを摂らなくても体重がきちんと増えるようになりました。腸壁が若返ったことで、食べたものの栄養を吸収できるようになったのです。

体内でのビタミンDの生成には太陽光が必要なので、わたしたちが自然と太陽を求めるのも不思議ではありません。

「テロメア」を延ばす

テロメアとは、染色体の末端部分のことで、大切なDNAが損傷するのを防いでいます。

最近の長寿研究で、テロメアはの短縮が認知機能の低下や老化の促進の原因であると考えられています。

加齢とともにテロメアが短くなり、染色体の保護機能が低下し、損傷し、がんやアルツハイマー病などの病気を引き起こすことが分かっています。

血中のビタミンD3濃度が最も高い人ほどテロメアも最長に、逆に最も低い人はテロメアも最短になります。ビタミンDは、幹細胞の働きを助け、テロメアを延ばす手助けをします

ある有名な研究では、1日に4万IUを摂取しても毒性はないとされました。平均的な人間は、1日に9600IUのビタミンDを摂取すれば十分だそうです。

《参考》厳選原料 ビタミンD カプセル



季節や昼夜の「サイクル」

腸内細菌は、成長と退化のサイクルに耐えられるように進化してきました。それは、宿主であるわたしたちが季節に合わせて異なる食材を食べるように進化してきたからです。

旬の食材を食べることは単なるトレンドではなく、DNAに組み込まれているのです。

「ハッザ族」の腸内細菌

カルフォルニア、ロンドン、カナダの研究者グループが協力して世界に残る数少ない狩猟採集民のひとつであるタンザニアの「ハッザ族」を調査したところ、彼らの腸内細菌叢には季節ごとに顕著な違いが見られ、周期的な構成になっていました。

どのような食物が手に入るかによって、特定の種類の細菌が増殖・繁栄していたのです。

1年中いつでも好きな食べ物が手に入る現代の都市部に住む人々には、季節による腸内細菌の変化が見られませんでした。

「チンパンジー・ゴリラ」の腸内細菌

チンパンジーやゴリラのマイクロバイオーム(微生物叢)も季節ごとの降水パターンや食生活に応じて変動します。

果物がたくさん採れる乾燥した夏の時期と、葉や樹皮などの繊維質の多い食事をするそれ以外の時期では、顕著な変化が見られます。

わたしたちは季節の変化に合わせて生きるようになっています。春と夏は成長と繁栄の時期で、秋と冬は退行と縮小の時期です。

ところが、現代社会では365日の成長サイクルで生活しており、あらゆる種類のカロリーが豊富にあるため、自然にリセットする機会がありません。

その結果、わたしたちの腸内細菌の数は1年中同じ状態になっています。

「長寿のための食事」

長寿のための食事とはこの重要なサイクルとのつながりを取り戻すことです。そのためには食材を変えたり、定期的にカロリー制限をしたりする必要があります。

人間は、本当は断食が得意ですし、少なくとも食事量の制限くらいはできます。そのおかげで、飢餓の時代や、食料を求めて長距離を移動することにも耐えられたのです。

食料が不足すると、ミトコンドリアが活性化し、免疫システム全体が本腰を入れて異常な細胞や機能不全の細胞などを殺すようになります。

食料不足のとき「脂肪」が使われる

食料が不足しているときに脂肪がエネルギーとして使われます。

わたしたちは、余ったブドウ糖とタンパク質をグリコーゲンとして蓄えています。食料が手に入る前にグリコーゲンを使い切ってしまうと、ミトコンドリアはブドウ糖の分解から「ケトン体」という脂肪由来の分解に切り替えることができます。

しかし、365日の成長サイクルによって、人間の多くはこの能力を失ってしまったのです。食べ物が不足することもなく、季節に関係なく食べているため、ミトコンドリアが糖分の燃焼から脂肪の燃焼へと切り替えるチャンスがありません。

ミトコンドリアは糖質をエネルギーにする半分のパワーで脂肪をエネルギーにすることができます。ミトコンドリアは自分が使いたい燃料を使わずに細胞内に次々と投入される糖分の処理に追われています。

「昼夜のサイクル」

季節のサイクルに加えて昼夜のサイクルも、長寿と健康寿命の重要な要因です。すべての動物は24時間周期の概日リズムを持ち、暗闇と光の期間に基づいて睡眠と覚醒のサイクルを繰り返しています。

2012年に行われた研究では人間が4日間、5日間の睡眠に制限されたところ、インスリン抵抗性が現れました。

人間をはじめとする多くの動物には、視交叉上核(しこうさじょうかく)SCNと呼ばれる脳内の一対の神経核があり、ここで目の網膜から入ってきた光の信号を受けています。

驚くことに、年老いた動物が若い動物から視交叉上核(SCN)を移植されると寿命が延びます。

「サーチュイン遺伝子」

たくさん食べる時期と、あまり食べない時期を繰り返すことのメリットは、サーチュイン遺伝子(Sirt1)と呼ばれる必須遺伝子が活性化されることです。

この遺伝子は睡眠中にも活性化されます。なぜなら、睡眠中は食事をしないからです。

サーチュイン遺伝子は、視交叉上核(しこうさじょうかく)SCNを制御しています。

マサチューセッツ工科大学の研究者たちが、若いマウスのサーチュイン遺伝子の活動を阻害したところ、循環リズムのコントロールが損なわれ、老化が促進されました。

人体は、睡眠と覚醒、食事と断食の間で、見事に調和のとれたダンスをするかのように設計されています。

起きてから食事をするまでの時間を長くすることで、生き延びるために重要な遺伝子を活性化することができ、それが健康寿命を延ばすことにつながります。

「腸の壁」を強化

細菌は、メラトニン以外にも重要なホルモンを分泌して、365日の成長サイクルを補い、腸壁を強化しています。

腸壁を強くするために注目すべき成分について解説していきます。

  1. 「酪酸」
  2. 「ポリアミン」
  3. 「ポリフェノール」

①「酪酸」

たとえば、短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」です。特定の細菌が酪酸を産生します。

その酪酸はミトコンドリアの機能を向上させ、ミトコンドリアにおける脂肪とグルコースの代謝を調整し、抗肥満作用と抗糖尿病作用を発揮します。

また、がん細胞の増殖を抑制し、脳のミトコンドリア活性を高めて脳の健康を促します。

このような研究結果もあります。アルツハイマー病が進行したマウスに酪酸を投与したところ、学習機能が著しく向上しました。

細菌が酪酸を生成することで、ミトコンドリアの役に立っています。特定の細菌が好む食品「プレバイオティクス」をたくさん食べるほど、細菌が酪酸を生成するようになります。

プレバイオティクスとは、オリゴ糖、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維などを多く含む食品です。詳しくは以下の記事でご覧いただけます。

《参考》【リーキーガット症候群とは】症状と原因、悪化させる食品、治療方法

②「ポリアミン」

腸壁の保護に役立つ有機化合物は酪酸の他にもあります。

特に「ポリアミン」は腸壁を保護するだけでなく、強い抗炎症作用、オートファジーの促進、脳機能の調節、多くの動物で長寿を促すことが明らかになっています。

ポリアミンのレベルが高いと、オートファジー亢進と、長寿を促すという研究結果が一貫して出ています。

マウスの研究

日本の研究者がマウスにポリアミンを産生する腸内細菌のサプリメントを与えたところ、マウスの炎症が抑えられ、寿命が延び、加齢による記憶障害から守られました。

別の研究では、生涯にわたってマウスにポリアミンを含むサプリメントを与えたところ、寿命が25%伸びたそうです。

晩年になってからポリアミンを与えたネズミでも10%の寿命延長が見られました。

これは、ポリアミンが細胞のオートファジーを促進し、弱った細胞や異常な細胞を死滅させて、生体を強化する役割を果たしているからだと考えられています。

「ポリアミン」を多く含む食材

  • イカ、牡蠣、カニ、ホタテなど
  • 納豆などの発酵食品
  • アブラナ科の野菜(ブロッコリー、小松菜、カブ、大根、水菜、キャベツ、白菜、チンゲン菜など)
  • 葉物野菜(レタス、春菊、ほうれん草など)
  • キノコ類
  • 抹茶
  • ナッツ・種子類(ヘーゼルナッツ、クルミ、ピスタチオなど)
  • 鶏レバー
  • 熟成チーズ
  • レンズ豆

《参考》ポリアミン サプリメント

③「ポリフェノール」

ポリフェノールは腸内細菌に栄養を与えたり、オートファジーのような有益なプロセスを促したりする植物化合物です。

有名で、協力なポリフェノールは、ブドウや赤ワイン、ベリー類に含まれる「レスベラトロール」です。

レスベラトロールは、ポリアミンと異なる経路でオートファジーを促進します。

《参考》カカオ豆ポリフェノール サプリメント

さいごに

リーキーガットを予防して腸内環境を整えることが、病気の予防になります。人は、季節や昼夜のサイクルにあわせて生きてきました。それは食べるものも含まれています。

そのサイクルにあわせて腸内細菌も変化しているとは驚きですね。

プーアール茶を飲んだり、食物繊維を摂取して細菌が酪酸を生成するように促したり、ポリアミンやポリフェノールを多く含む食品を摂取してみましょう。

また、何を食べるかも大切ですが、野菜しか食べないカロリー制限の期間を作ったり、断食をすることが適度なストレスとなり、健康に良いという話もありました。ファスティングをした事例の記事もありますので、良ければ参考にご覧ください。

《参考》【事例】-5.4kgダイエット!3日ファスティングの効果(男性41歳)

《参考》【10日ファスティング体験談】-4.7kg!スケジュール・やり方

本記事では「要約② 腸で病気予防」を解説してきましたが、続いては「要約③ 7つの迷信」ご紹介していきます。

《参考》【本の要約③】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:7つの迷信

また、以下の記事では、要約①~⑨までの概要をまとめています。もくじ代わりにご覧いただき、気になる項目から読んでいただくのもおすすめです。

《参考》【本の要約】死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事:まとめ(目次)

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