あなたは食品添加物とどのように付き合っていますか?
- 賞味期限のルール
- 野菜ジュースやチルド惣菜の作られ方
- きれいな形の野菜の裏側
わたしは、ファスティング(断食)指導と、食事アドバイスをしている栄養士です。
「食品の裏側2 実態編」をまとめてきましたが、載せきれない細かいエピソードがまだまだありますので、ぜひ知ってほしい話を番外編としてまとめました。
「食品の裏側2 実践編」
2005年に出版された「食品の裏側」が60万部突破のロングセラーとなり、2014年に「食品の裏側2 実態編」が出ました。
これらの著書は、今まで知らなかった「食品添加物」の裏側について書かれた本です。
要約記事の紹介
まず、食品添加物についての概要を理解するのにおすすめな第一弾の著書「食品の裏側」について要約した記事はこちらです。
食品添加物の神様と呼ばれた、添加物を販売する営業の方が書いた書籍です。ミートボールが捨てられるはずのくず肉から作られたという話が話題になりました。
《参考》【本の要約】食品の裏側(食品添加物の神様、ミートボール事件の内容)
続いて、「食品の裏側2 実態編」については内容ごとに記事が分かれておりますので、気になる内容から読んでいただくのも良いでしょう。
最初に、激安ハンバーグ弁当に使われている添加物についてまとめたものです。なんとハンバーグには牛肉は使われていないものもあります。
《参考》【本の要約①】食品の裏側2 実態編:ハンバーグ弁当に使われる食品添加物
2記事目は、激安ハンバーグ弁当以外にも添加物なしには作れない食品についてです。コーヒーフレッシュ、マーガリン、マヨネーズもどき、激安ジャム、プリン、お好み焼きソース、清涼飲料水などについて解説しています。
《参考》【本の要約②】食品の裏側2 実態編:「添加物なし」に作れない食品
3記事目は、添加物の危険性や認定方法についてまとめています。添加物自体の安全性についても解説していますが、添加物によって舌がマヒして塩分・油分・糖分を摂りすぎてしまう心配もあります。
《参考》【本の要約③】食品の裏側2 実態編:添加物の危険性と安全性、認定法
最後に、どのように添加物と付き合っていくのが良いのかについて要約しています。食品の加工度が上がるほど、使われる添加物も増えます。詳しくは以下の記事でご覧ください。
《参考》【本の要約④】食品の裏側2 実態編:添加物との付き合い方・減らす方法
本記事は
ご紹介してきた通り、「食品の裏側2 実態編」について要約してきた上記の記事に入りきらなかった具体例や小話などをまとめた内容を「番外編」として、まとめています。
「食品の裏側2 実態編」の要約をご覧いただいた方向けの内容となっています。
では、説明はこのくらいにして「番外編」に入っていきましょう。
「野菜ジュース」は危険?
野菜ジュースの話に行く前に、国際的に問題になっている硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)のことを先に説明しておきます。
アメリカで離乳食としてホウレンソウの裏ごしスープを子どもに与えたところ、酸欠状態になり、全身が青くなる症状が出ました。ブルーベビー病と言われています。
日本では、井戸水が原因で発症した例があります。これらの原因が「硝酸態窒素」です。
発生する原因は、窒素系(アンモニア態)の肥料を大量に与えることにより、土中に硝酸態窒素が残り、地下水に流入するからです。
野菜が取り込んだ硝酸態窒素が、作物の成長の過程で、アミノ酸、タンパク質に変わっていくのですが、早めの収穫をすることから、硝酸態窒素のまま残ってしまうのです。
もっとも最近の研究では、有機農法(オーガニック)では、土を育てることができればアミノ酸として吸収されるという報告があります。
「基準」の設定
EUでは硝酸態窒素の含有量の基準があり、野菜100g当たり0.2~0.3gです。
残念ながら、日本では基準がありません。国内では、0.5~0.7gの硝酸態窒素が含有している野菜が流通することもあります。日本の野菜がEUに輸出できない可能性もあります。
ちなみに、日本の水道水の基準は1L当たり10mgに設定されています。
市販の野菜ジュースでは、民間の分析で1L当たり20~180mgが計測されています。
水道水の基準は「1L当たり10mg」なのに、野菜ジュースには「1L当たり20~180mg」の硝酸態窒素が含まれているのです。
これは果たして安全なのでしょうか。水道水に基準値をセットするなら、野菜ジュースにも基準値を設けるべきなのではと感じます。
野菜ジュースのメーカーは農薬分析の情報を公開してほしいものです。
食べ残し王国「日本」
日本の食品廃棄量が、世界でも1位2位を争うほど高いのをご存知でしょうか。
政府広報によれば、いま日本では年間1900万トンの食品廃棄物が出ているそうです。世界の7000万人が1年間食べていける量だそうです。(読売新聞コラム 2011年3月7日)
民間の調査では、2700万トンという報告もあります。そのうち、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が500~900万トンもあると言われています。
しかし、その実体がよく分からず調査団体によって数字がまちまちという状況です。
日本は、食料の多くを海外からの輸入に頼っていますが、その半分近くを捨てていることになります。金額にして11兆円で、米国の4.3兆円よりも多いと言われています。(食品化学新聞 2011年4月14日)
また、その処理費用は給食の食べ残しを例にとると、その焼却費は福岡県の場合だと1トン当たり約3万円ですから、仮に100万トンだと300億円という金額になります。
食べきれないほどの食料を輸入して、食べずに処理するのにも膨大な費用がかかって、なんだかバカバカしく思えてしまいますね。
値引きを許さない「コンビニ」
セブンイレブン・ジャパンが、消費期限の近い弁当を値引きして売った加盟店に圧力をかけ、安くして見切り販売をしないように強制したとして、公正取引委員会は独占禁止法違反で、同社に排除命令を出しました。(朝日新聞 2009年6月23日)
セブンイレブンの場合、一店舗当たりの廃棄金額は、年間平均530万円になります。2009年7月からは廃棄金額の15%を本部負担としました。(読売新聞 2009年7月18日)
セブンイレブンでは、たとえば消費期限午後7時の弁当の原材料ラベルの右上に「F17」と記号が入っています。これは消費期限の2時間前の午後5時(17時)に自動的にレジを通過しなくなり、商品として販売できなくなるということです。
コンビニは約5万軒はあります。各店が1日に弁当を20食廃棄したとすると、1日100万食を捨てることになってしまいます。
「買ってすぐ食べるわけではないから」と少し時間に余裕を持つ必要はあるかもしれませんが、その時点で食べられる弁当がたくさん廃棄されているのです。
あれだけの品ぞろえを維持するには、そのまま購入されず廃棄されてしまう食品を生み出してしまうことにもなりますね。
「賞味期限」への過敏さ
簡単に食品を捨てるコンビニやスーパーも問題ですが、消費者であるわたしたちにも問題があります。
異常なまでこだわり、賞味期限が近いものは避けて、少しでも賞味期限が遠いものを選ぼうとする、という消費行動です。
賞味期限は、製造するメーカーが決めますが、たいていはその食品が変質するまでの3分の2を目安にします。また、25℃の過酷な条件での保管テストのデータも参考にします。
たとえば「つくりたて10分以内しか提供しません」と宣伝するファストフード店は、10分以上たった食品は廃棄するということです。
「3分の1ルール」
小売店は、製造日から賞味期限までの3分の1の期間を納品期限とします。90日の賞味期限の場合、30日を過ぎた食品は受け付けないということです。
小売店は売り場で賞味期限が残り3分の1になると、返品あるいは破棄します。販売期限というい方では、実質60日しかありません。
小売店は、まだ3分の1の30日間の賞味期限が残っていても返品あるいは破棄するということです。
2011年度(財)流通経済研究所の推計によると「3分の1ルール」による納品期限切れで年間1139億円、「3分の2ルール」による販売期限切れで417億円がロスになっているそうです。
売る側も買う側も、食べ物を簡単に捨てることが当たり前になって、マヒひているのかもしれません。
「賞味期限」を「最良賞味期日」「最良賞味時期」などの言葉に変えてみれば、それまではおいしく食べられる期間という認識になるかもしれません。
「賞味期限」はあくまでおいしく食べられる期間で、「消費期限」とは違います。
「チルド惣菜」
チルドで販売されている真空パック入りのお惣菜は、コンビニでも大人気です。その食品の賞味期限欄に「保存方法の変更者」あるいは「保存温度変更」と表示されているものがあります。
これは、食品が加工され、そのまま冷凍保存され、冷蔵に戻される際に「賞味期限」を印字する仕組みです。
たとえば、サバの煮つけを作る場合、ノルウェーから中国にサバを運び、袋に切身と調味液を入れ真空パックにします。そのまま鍋で90℃で30分加熱すると調理と殺菌が同時にできます。
これを「冷凍品」として真空パックが一定数入れられたダンボールに1年後の賞味期限を打ちます。ただし、1つ1つの真空パックには賞味期限は記入されていません。別枠記載などと書かれています。
これを日本に冷凍で輸入し、解凍してから、新たに袋に「冷蔵」での賞味期限30日を表示するのです。
これを「保存温度変更」といい、パッケージに貼られた賞味期限のシールに「保存方法の変更者〇〇」と回答して販売した会社名が記載されています。
業界には「フロチル流通」という言葉があります。製造後の保管はフローズン(冷凍)で、販売はチルドという意味です。
冷凍品を解凍して冷蔵で販売するときに、賞味期限を印字するのです。
消費者は30日程度の賞味期限だと、作りたてだと思ってしまいます。気になる方は、賞味期限と製造年月日が表示されている惣菜を買うと良いでしょう。
農薬と環境汚染
農薬の使用と、環境汚染・健康問題はつきものです。
農薬の健康被害
著者は農家だったので農薬が身近にあったそうです。昭和30年代当時は、農業近代化の名のもとに色々な新しい農薬や化学肥料がどんどん使われ始めた時代でした。
稲の害虫であるウンカの殺虫剤に「パラチオン」というものがあるのですが、それをまくと田んぼに「近寄るな!」と警告した赤い旗が一斉に立ち、ロープで囲まれていました。学校からは「この1週間は川で遊んではいけません」との通達が出ました。
そして、この農薬をまいた後は、田んぼのまわりの川の魚が全部浮くのです。田舎だから川にはフナやコイがいっぱいいたのですが、魚が一斉に白い腹を上にして川面に浮いている光景は不気味そのものでした。今は使用禁止になっています。
著者のお母さんは、この農薬に弱く、まいた後に体調を崩して3日間くらい寝込んでしまうそうです。すると、お父さんが「そんなことで百姓がつとまるか!」と怒鳴るそうです。そういう価値観の時代でした。
飼い犬にノミがいたので、父親が何かの農薬を体に塗ったことがあるそうです。同じ殺虫剤だからいいと思ったのでしょう。
その後、犬は毛づくろいをしていたのですが、そのままハアハアいって倒れて、翌日には死んでしまいました。
農水省によると、2011年度に農薬の誤使用により、8人の方が尊い命を落とし、40人に中毒症状が出たとの報告があります。
農薬は、殺虫、除草など、農家の労働を軽減させ、著しく収穫量を上げてくれます。そのために、農業従事者の方の健康が犠牲になるのは仕方ないと当時はみんな思っていました。環境保全という言葉もなかったと思います。
農薬は、環境を汚染します。そして、使われる農薬にもそれなりの費用がかかるのです。「〇〇のおかげ」と「〇〇のせい」の〇〇に化学物質をあてはめて考えてみる必要があります。
リスクを承知でメリットをとるのか、あるいは、不便さを受け入れてリスクを減らすのか、という選択です。添加物に限らず、化学物質のメリットとリスクを考える必要があります。
「経済」と「健康」の優先順位
昭和35~36年頃、八幡製鉄所を有する北九州市は、日本の四大工業地帯として、戦後日本の近代化・高度経済成長の牽引役を担っていました。
当時、製鉄所から立ち上がる煙は「七色の煙」と言われ、繁栄のシンボルとさえ言われていました。
しかし、筆者が幼いころ見た八幡の空は煤煙で真っ黒、どんよりとしていたそうです。まだ、公害防止法ができる前のころです。繁栄の見返りは「ひどい公害」でした。
煤煙が入ってくるから小学校の窓は開けられませんでした。大人の背より高い大きさの活性炭入りの空気清浄機がありました。
側道のドブは赤茶け、臭いさえ出ません。海は臭くてヘドロそのものです。酸性雨も降っていたので、洗濯物は外に干せず、庭の植物は育ちませんでした。
まさに、「公害の町・北九州」を目の当たりにしました。その光景は、自然豊かない中で育った筆者にはあまりにも強烈でした。
筆者が「なんでみんな黙っているの?空は真っ黒だし、子どもは咳き込むし、こんなのおかしいよ!」と言うと、叔母さんが怒ったような顔つきで「しぃっ!わたしたちが食べていけるのは製鉄さんのおかげなんだよ!」と言ったそうです。
当時は、個人も家庭も町も全員が、公害問題よりも「経済優先」という価値観だったのです。市民の健康は二の次でした。
というのも、死人が出るわけではない、人がばたばた倒れている訳ではないから、緊急性がなかったのです。だから、健康・環境は経済より優先順位が低かったのです。
「公害の町」として知られた北九州市はその後、「青空がほしい」と官民が足並みをそろえて努力した結果、環境を著しく改善し、世界の環境モデル都市になりました。その取り組みは国内のみならず、世界的に評価されています。
しかし、その環境回復にどれだけのお金と時間が必要だったことでしょう。
キレイな野菜が売れる
著者が20年以上前の話です。知り合いのスーパーの社長に、こんな提案をしたことがありました。
「社長、にんじんの色や形の選別をゆるくすると安くなるんじゃないんですか。1袋の重さを計らず、だいたい同じにして、大きさ、形はきちんとそろってなくてもいいのではないですか。」
にんじんなどは、切って食べるので、形は不揃いでも、安い方が消費者に喜ばれるだろうと考えたのです。
社長に「それなら恐らく2~3割は安くなるんじゃないかな。このスペースを貸すから、やってみたらいい」と言われました。そのとき、社長がなぜか含み笑いをしていました。
著者は、よろこんで袋入りにんじんをつくりました。袋に入れるのは少しいびつなものもあるにんじん、大、中、小です。1袋の重さをおおよそ揃えるためには「大・大」の2本、「大・中・小」の3本、「中・中・中」の3本、「小・小・小・小」の4本という感じになります。
あくまで目分量です。重さと大きさをバラバラにしたことで、手間がかからず、結果として3割以上も安く設定できました。
お客さんには安いと喜んでもらえて、形の悪いにんじんも無駄にならずに済んですばらしいと著者は自信満々でした。
しかし、結果はさんたんたるものでした。お客さんは商品を手にとっては戻し、下から探し出し、気に入らないと棚に乱暴に投げ戻すのです。
売れたものは「中・中・中」と「大・大」くらいです。他のものは全然売れず、棚も乱雑になる一方です。
社長はこの結果になることが最初から分かっていました。「これが今の日本の消費者なんだよ。本当は野菜のトレーも袋もいらないんだ。トレーはゴミになるのは分かっているし、袋にも入れず必要な本数だけ買ってもらえればいい。でも、それをやると売り場が荒れる。しかも、売り場が1度荒れるとエスカレートして、そうすると買わなくなる消費者がいる。売り場には証明を必要以上に当て、きれいに見せないとダメなんだよ。」
よく考えてみると、まったく同じ大きさ・形で揃っているにんじんの方が不自然に感じますよね。クローンじゃない限り、植物や動物、人間も同じで、それぞれの個性があります。
曲がった「きゅうり」
とあるスーパーの話です。ここは地産地消を目指して、地場の野菜を置こうという取り組みを始め、著者もそれを手伝うことになりました。
最初に売ったのはキュウリとナスでした。だいたいのサイズは揃えましたが、選別を甘くしたので、曲がりがあったので形がいびつなものもあります。
売り方はダンボールをそのまま並べたバラ売りです。そばに、袋と軍手も置きました。
ところがこれを見たお客さんは取っては戻しを繰り返します。それは、なんとなく曲がっていない形の良いものを選んでいたのです。
1日が終わっての結果は、大きく曲がったもの、不格好なものは、鮮度が良くても売れませんでした。
みんな「安さ」「鮮度」よりも「形」なのです。形が悪いものは損をするという感情なのでしょうか。
消費者側も、意識を変えなくてはいけません。もちろん、まっすぐなにんじんと曲がったにんじんがあれば、誰だってきれいなにんじんを手に取りたいでしょう。
しかし、その裏側ではどれだけの農薬・化学肥料が使われ、色や形の選別が行われているのかということを考えてほしいのです。
虫食いがないのは「農薬」を使うからで、形が揃っているのは「選別」をするからです。1袋ずつ重さが揃っているのは手間をかけ「計量」しているからです。
これが日本の場合、ばかばかしいほど厳しく行われています。
過剰な美意識
日本人は「形」ばかりか「重さ」も気にします。
たとえば、むき栗はコンピュータの画像処理機能を使って重さを計ったり、たらこは「ベルト式ウェイトチェッカー」というベルトコンベア状の自動はかりの上に乗せて選別します。鮭も、コンピュータの画像処理で切身にして重さを揃えます。
重さが数グラム違ったり、形があまりにも不揃いだと業者からクレームがきます。エビのむき身は1グラム単位まで揃えるように要求されます。
玉ねぎの計量は、おたま風の容器がずらりと20個ほど横に並ぶ機械があって、そこに玉ねぎが転がってきて乗ります。3個600gと設定すると、3個のおたまの組み合わせをコンピュータが計測し、その玉ねぎの上のライトがパッとついてパタッと下に落ちます。その合計が600gになっているので、網の袋に詰められます。
このような選別にかなりの費用がかかります。この選別機だけで2000万円くらいします。その他の設備費もかなりのものです。このようなことをしているから野菜の単価がどんどん高くなるのです。
そして選別にもれた野菜は「規格外品」としてたたき売りされていまいます。これでは、生産者も問屋もたまったものではありません。
もともと自然のものなのに、規格外品の野菜を「わけあり野菜」と売っているのは、おかしいようにも思います。
割れてしまったクッキーが「わけあり」というのは分かりますが、野菜までも人間のつくる加工食品の工業的規格に当てはめようとするから、ゆがみが生じます。
野菜の形・重さ・色を重視して品質基準とするのはおかしいです。高く売れるブランドの農産物の裏側にも、ブランドゆえの規格外が増えるのも事実です。
消費者が野菜に求める「優先順位」は何なのでしょう。
虫入り給食
ある小学校で、子どもたちの給食を少しでも「地産地消」で、まかなおうという取り組みが始まりました。地元の農家の方の協力により、農薬を通常の5分の1以下に減らす「特別栽培」と、農薬を全く使わない「有機栽培」で給食用の野菜をつくってくれました。
学校に直接納入するので、傷ついたもの、腐ったもの以外は全部納品しました。皮むきの手間が大変ということはありますが、市価よりかなり安い値段で納品できました。
ところがある事件が起きました。給食に小さなアブラムシが1匹入っていたのです。
このとき担任の先生は「おいしくて安全だから虫も食べるんだよ」と子どもに説明し、虫が入っている子どものおかずを自分のものと交換し、虫を外して食べたといいます。
ところがこれが大問題となりました。保護者が学校まで乗り込んできて、「虫入りの給食を食べさせて!」「衛生管理はどうなっているのか!」と怒鳴りまくったそうです。
「農薬をもっと使えば虫はつかなかった、申し訳ありませんでした」と謝ればいいですねと著者は言ったそうです。
農家の方は、子どもたちを思って、手間をかけ、ギリギリの農薬で野菜を作ってくれたのです。農薬をたっぷり使えばアブラムシはつきません。
農薬をたっぷり使っていて虫もつかない野菜と、農薬を最小限に抑えて形が少し違ったり、たまに虫がついている野菜、どちらを求めるかということです。
日本で有機野菜が普及しない理由
有機野菜が高いのは、「選別、定貫、指定」の3原則のせいです。
「選別」は既に述べた通り、色や形を揃えることです。「定貫」(ていかん)は、1袋当たり同じ重さに揃えること、「指定」とは品名・数量を指定して買うことです。
農薬なしでおいしい野菜を作ろう、地球にやさしく子どもたちに安心できる野菜を食べてもらおうと夢に燃えて若い人が有機農法をはじめます。ところが、せっかく作った野菜が形が悪いという理由で出荷できないという現実に突き当たります。
虫がついているから返品する、大きさがそろっていないとダメ、そんなことが続いたら、誰だって意欲を失います。それで有機農法をやめていった人たちを著者は何人も見てきたそうです。
農薬・化学肥料を使った慣行栽培の野菜の基準で有機野菜を扱おうとするからおかしくなるのです。大量生産で安くきれいに作るため、農薬も化学肥料もあるのです。
それを使わない有機野菜が慣行野菜のように、きれいにできる訳がないのです。逆に言えば、それは野菜の本当の姿です。
食生活の影響
とある幼稚園では「穀物・発酵食品・根菜・海藻」を基本としたメニューが並びます。たとえば、玄米五分搗きごはん、みそ汁、煮物、漬物、納豆といった具合です。
昔に比べて、表情がない子、落ち着きのない子、座っていられない子、生気のない子、アトピーやアレルギーのある子が増えています。
問題を抱えた子をよく観察していると「食」に問題があると気づいたそうです。朝から菓子パン、ジュース、スナック菓子を食べている子どもたちもいます。
「このままでは子どもたちが壊れてしまう」と危機感を抱いて取り組んだのが伝統和食でした。
その成果は顕著なものとなってあらわれました。風邪や病気になる子供が著しく減りました。虫歯や肥満の子どもも激減し、アトピーも改善しているそうです。これらは園できちんとデータを取っています。
さらに驚くべきことに座っていられない子ども、奇声を発していた子どもたちが落ち着きを取り戻し、きちんと話せるようになったというのです。
食事を変えれば子どもが変わるとか、落ち着きを取り戻したというと、「科学的に実証されているのか」とか「因果関係が不明だ」という人が必ずいます。
しかし、理屈や科学はどうでも、食事を変えたら本当に子どもたちが変わったという事実があります。結果が物語っています。
手作り弁当
添加物について知ると、手作り弁当への理解も深まります。
汁がこぼれる
ある中学生の女の子は、著者の講演を聞いた後のアンケートにこんなことを書いていたそうです。
お弁当の汁がこぼれて、みんなに笑われたからお母さんお弁当は持っていかないと、お母さんと大喧嘩しました。
しかし、講演会で、ごぼうサラダの汁を増粘多糖類で止める実験をしたのを見て、お母さんが一生懸命に手作りしてくれたから汁が出るんだと。
帰ったら、お母さんに謝ることにしたそうです。
地味な弁当
ある中学生の女の子は、お母さんの手作り弁当を毎日学校に持って行っていたのですが、弁当の色が悪く、みすぼらしい気がしていつも引け目を感じて、フタで半分隠して地味な色の順におかずを食べていたそうです。友達の弁当は彩りも華やかで豪華に見えたからです。
ところが、その子が講演会で、たくあんを綺麗な真っ黄色に染める実験を見て、ハッと気づいたそうです。
冷凍食品や着色料を使った食品を入れていないからお母さんのお弁当は色が悪いのだと。明日からは、フタを全部空けて見せびらかしながら食べますと言ってくれました。
【まとめ】食品添加物
添加物は、とても便利で安くきれいな食品に仕上げてくれます。
市販されているお弁当が華やかに見えるのは、添加物が使われていることも要因です。また、安くてボリュームのあるお惣菜やテイクアウト食品も、添加物ありきで成り立っています。
大きさや形が揃っていなくても、苦労して育ててくださったオーガニック野菜を認めてくれる価値観の人が増えればいいなと思います。
そうすれば、どのスーパーにもオーガニック野菜が並ぶ日も来るかもしれません。
オーガニックや無添加の食品・スキンケアなどをまとめているので、もし良ければ参考にご覧ください。
《参考》オーガニックや無添加の商品一覧