【ゲノム編成食品とは】遺伝子組み換えとの違い・問題点や危険性・例

あなたは、「ゲノム編成食品」をご存知ですか?
  • ゲノム編成食品とは何のこと?
  • 遺伝子組み換え食品と何が違うのか。
  • その問題点や危険性は?
わたしは、オーガニック食品やオーガニックコスメが好きな栄養士です。本記事では「ゲノム編成食品」について分かりやすく解説していきます。

【ゲノム編成食品】とは

まずは「ゲノム」とは何なのか、そして「ゲノム編成」技術とはどういうものか、最後に「ゲノム編成食品」についてお話していきます。ゲノム編成の話を中心として、似ている遺伝子組み換えについても併せてご説明していきます。
また、以前「遺伝子組み換え食品」について詳しく解説した記事もあるので、良ければご覧ください。
では、早速「ゲノム」からご紹介していきます。

【ゲノム】とは

全ての生物を構成する1つ1つの細胞には、DNA(デオキシリボ核酸)という物質があります。DNAは、ACGTで表現される4つの物質がたくさんつながってできています。
このDNAの全ての情報を「ゲノム」と呼び、ゲノムの中でも生物の性質を決める部分を遺伝子と呼びます。育種の過程では、遺伝子の変化によって生物の性質が変わります。

タンパク質の性質変化

生物の性質を決定するのは「遺伝子」ですが、実際にはタンパク質の作用により生物の性質が変化しているとも言えます。遺伝子のDNA配列が変わると、タンパク質の性質が変化したり、タンパク質ができなくなり、その結果として生物の性質が変化します。

「生物の性質」とは、たとえば身長が高い・低いや、髪の色など、様々な特徴を指します。それらの特徴がタンパク質の作用により変化するということです。

【遺伝子組み換え】とは

遺伝子組み換え作物は、他の生物から取り出した遺伝子をゲノムに組みことで作られます。その結果、作物は新しい性質を持つようになります。

「遺伝子組み換え作物」は、本来持っていない、他の生物の遺伝子を組み込まれることがポイントです。

この技術は、既に育種技術として応用されていますが、いわゆる遺伝子組換え食品「組換えDNA技術応用食品」の利用には、安全性審査が義務付けられています。

たとえば、特定の除草剤に強い作物や外注に強い作物などがこの方法で開発され、海外では1996年から実用化されています。

他には「ゴールデンライス」といって、発展途上国で問題となっているビタミンA欠乏症を解決されるために開発された稲もあります。トウモロコシから取り出した遺伝子を組み込んで作られたイネ(ゴールデンライス)は、ビタミンAの素となるβカロテンを米に多く含みます。

《参考記事》【遺伝子組み換え食品とは】メリット・デメリット・任意表示制度の改正

【ゲノム編成技術】とは

細胞の中のDNAは、自然界または人工的な放射線などにより切断されることがあります。生物は切断されたDNAを修復する仕組みを持っていますが、修復に失敗すると、塩基の挿入、欠失や置換となり、DNAの配列が変わって突然変異が起こります。

「ゲノム編成技術」は、DNAを切断する人工酵素を使ってDNAに突然変異を起こす技術です。

放射線によるDNAの切断はランダムに起こるので、計画的に突然変異を起こすことはできません。一方、ゲノム編成では、決まったDNAの配列を切断できる人工酵素を細胞の中で働かせるので、狙った遺伝子の突然変異を起こすことができます。

つまり、自然にも起こりえることを狙って起こすのが「ゲノム編集技術」なのです。

この技術を用いて得られた食品が「ゲノム編集技術応用食品」となります。

【オフターゲット変異】とは

基本的に「ゲノム編集技術」では、高い確率で特異的に標的遺伝子に変異を起こすことができます。それでも意図しない変異が起こることがあり、その変異は「オフターゲット」と呼ばれています。

しかし、都合の悪い性質は、交配と選抜を経て取り除くことができるので、健康への悪影響が問題になる可能性は非常に低いと考えられています。

健康への影響はなさそうに思えますが、やはりオーガニックや自然なものが好きなわたしとしては安全性が気になるところです。栄養士であり、生物や化学的な新技術も興味はあり、発展の為にはどんどん開発して実験して食べていくうちに新しい発見を経て、さらに知見をためていくしかないのかなと感じています。

個人的には研究が進むのが楽しみでもあります。生態系を壊したり、なにかその生物に影響がなければ良いなという点は気になるところです。

ゲノム編集食品の例

ゲノム編成技術を活用した食品の例をご紹介していきます。今後も様々な食品に技術が活用されていくでしょう。

攻撃性を抑えたサバ

九州大学大学院では、攻撃性を抑えたサバを開発しています。もともとサバは攻撃性が高く、サバの稚魚は共食いをしていまします。水槽を飼育すると生存率は、わずか1割です。

それをゲノム編成技術で攻撃性を抑えて共食いしない性質を目指しています。現在、1割だった稚魚の生存率が4割にまで上昇したそうです。

実用化されれば、安くサバが手に入るようになりそうですね。ただ、攻撃性を抑えたサバがまた海に戻ってしまうようなことがあると、生態系に影響を及ぼさないかなどは心配な点でもあります。

《参考》NHK記事

栄養価の高いトマト

筑波大学の研究チームが、栄養価の高いトマトを開発しました。「園芸作物の重要形質を制御する分子機構解析とその分子育種学的利用」を研究テーマとしているチームです。

当研究グループでは果実の肥大性、機能性成分含量、着果効率(単為結果性:受粉無しで果実が肥大する性質)、日持ち性、糖度が向上したトマト変異体を多数有しています。これらを利用することで果実分化・発達に必要な遺伝子を単離して、効率的多収生産が可能な品種や高機能性成分が高蓄積するような、時代に求められている品種の開発に産学連携で取り組んでいます。

血圧を下げる働きがあるGABAという成分を多く含みます。GABAの生成に関わるGADという酵素の遺伝子を編集し、GADが持っている自身の働きを弱める部位をなくすことでGADの働きを活性化させることに成功しました。

《参考》筑波大学:遺伝子実験センター

肉厚マダイ

京都大学では肉厚マダイを開発しました。筋肉の成長を抑制するミオスタチンの遺伝子をなくすことで、野生のものよりも肉付きが良くなるという仕組みだそうです。肉厚マダイは、和歌山県にある共同研究先の近畿大学水産研究所の水槽で飼っています。

味はエサの違いによりますが、食感は柔らかく、味も天然に引けを取らない新食材のマダイです。なお、消費者の理解を得ることもも大切だと考えているそうで下記のように記載されています。

科学的な検査の結果、「問題ありません」といっても、それは世間にはなかなか通用しない。最終的には誰かが食べて、「大丈夫です」という結果を積み上げるしかない。理論的に安全でも、まず動物で実験・実証し、ボランティアの人に食べてもらったり、血液検査をして正常であるというように、創薬と同じようなプロセスを踏まなければならないかもしれません。これがどうしてもネックになる。

肉厚マダイは、「マッスル・マダイ」と呼んでいたのですが、ドーピングの筋肉増強剤を連想させるのか、「化学物質のにおいがする」と、ことばから受けるイメージが良くありませんでした。なので、「肉厚マダイ」に呼び方を変えたそうです。

皆さんはどのように感じましたか?わたしも「マッスル・マダイ」より「肉厚マダイ」の方が、食べてみようかなという気がします。しかし、「マッスル・マダイ」の方が、興味は持たれそうな気もしますね。

単に気持ちの問題ですが、名前や情報発信の方法によっても認知のされ方、受け入れられ方が変わりそうです。

《参考》京都大学:肉厚マダイ



安全性について

どのような基準で安全性をチェックしているのか、健康への影響などをご紹介していきます。

《参考》厚生労働省:新しいバイオテクノロジーで作られた食品について

安全性のチェック

次のようなチェックポイントを科学的なデータをもとに評価し、総合的に安全か判断をしています。新たな科学的知見が生じた場合は、再評価を行います。

つまり、現段階で明らかになっている科学的知見をベースに評価を出すので、まだ気づいていない重要な要素が後から出てくる可能性があります。

ゲノム編成食品

「ゲノム編成食品」を流通する際の届出については、下記のようなポイントをチェックします。

  • 新たなアレルギーの原因(アレルゲン)が作られていないか、有害物質などが作られていないか。
  • 毒素をなくす、ある成分を増やすなどの改変をした場合、食品中の栄養素などがどう変化したか。

遺伝子組み換え食品

「遺伝子組み換え食品」を流通する際の安全性審査では、下記のようなポイントをチェックしています。

  • 組み込む前の作物(既存の食品)、組み込む遺伝子、ベクター(遺伝子の運び屋)などは、よく解明されたものか、人が食べた経験はあるか。
  • 組み込まれた遺伝子は、どのように働くか。
  • 組み込んだ遺伝子からできるタンパク質は人に有害ではないか、アレルギーを起こさないか。
  • 組み込まれた遺伝子が間接的に作用し、有害物質などを作る可能性はないか。
  • 食品中の栄養素などが大きく変わらないか。

ゲノム編集技術を使った遺伝子組み換え食品

ゲノム編集技術と、遺伝子組み換え技術を別の技術として紹介してきましたが、両方の技術を使用することもできます。

ゲノム編成では、人工酵素で決まったDNA配列を切断し、そこに遺伝子を組み込むことも可能です。この方法によって、従来の遺伝子組み換えより正確に遺伝子を組み込むことができます。

この場合、遺伝子組み換え食品として扱われ、安全検査などをする必要があります。

健康への影響

科学的知見を駆使してチェックをしていますが、健康への影響がないか心配ですよね。2020年(令和2年)3月作成の厚生労働省から出された資料による情報をご紹介していきます。

《参考》厚生労働省:新しいバイオテクノロジーで作られた食品について

食べたら害虫は死んでしまう作物

害虫に強い作物が開発されています。その作物を害虫が食べると死んでしまうが、人間が食べても大丈夫なのかと心配になります。

今まで、害虫に強い農作物が食料品や飼料として消費されてきましたが健康被害は確認されていません。害虫に強い農作物には、殺虫性タンパク質(Btタンパク質)が含まれています。このタンパク質はヒトや家畜には無害なので、食べても問題がないそうです。

  • 害虫が食べる →消化管(アルカリ性)で活性化して消化管の粘膜とくっつき、細胞が破壊される →死んでしまう
  • ヒトや家畜が食べる →胃の中(酸性)で分解される →大丈夫

食べ続けても大丈夫か

遺伝子組み換え食品は食べ続けても問題ないとされています。様々なデータに基づき、組み込んだ遺伝子によって作られるタンパク質の安全性や遺伝子が間接的に作用し、有害物質などを作る可能性がないことが確認されていますので、食べ続けても問題ないそうです。

ただ、現時点で出ている知見でそのような結果ということになるので、ご自身で判断されてください。

ゲノム編成食品の届出が義務でない訳

ゲノム編成食品には、安全評価が義務付けられず届出が義務ではありません。ゲノム編成でDNAに起こる変化は、自然界や従来の品種改良でも起こり得る変化です。したがって、安全性もそれらと同程度と考えられ、安全性審査は必要ないと判断されました。

しかし、新たな技術であることや消費者への配慮も必要なため、届出と一定の情報公表を求めることになりました。

基本的には、厚生労働省がそのように判断している以上、問題ないのだろうと思いますが、なんらかの科学的な最新情報によりルールが改定することもありますし、各自でアンテナを張って判断する必要がありそうです。

【まとめ】ゲノム編集食品

ゲノム編集技術と、遺伝子組み換え技術を簡単にまとめると、次のようになります。

  • ゲノム編集技術:DNAに突然変異を起こす技術
  • 遺伝子組み換え技術:他の生物のDNAを組み込む技術

比較的、遺伝子組み換え食品より、ゲノム編集技術食品の方が、安全性が高いということが分かりました。とはいえ、まだまだ新技術なのでこれからどのような扱いになるか楽しみです。

数十年後、ゲノム編集技術によって改良された食材が当たり前のように並ぶ日がくるのでしょうか。

本記事では、ゲノム編集技術についてメインに紹介しましたので、遺伝子組み換え食品については次の記事をご覧ください。

《参考記事》【遺伝子組み換え食品とは】メリット・デメリット・任意表示制度の改正

個人的には、無添加やオーガニックな食品が好きなので、「疑わしきは使用せず」「遺伝子組み換え・ゲノム編成技術によって生産されたものは主原料にしない」という方針のSL Creationsの食品はおすすめです。

《参考記事》【SL Creations】オーガニック食材・料理へのこだわり

他にも、遺伝子組み換えの大豆などは使用せず、食品添加物の使用を最低限に抑え、化学調無料は不使用な冷凍おかず・弁当もあります。電子レンジで加熱するだけでお手軽です。商品については下記の記事よりご覧いただけます。

《参考記事》【FIT FOOD HOME】無添加、化学調味料・遺伝子組み換え不使用

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