あなたは普段、「たまご」をよく食べますか?
- たまごの価格はなぜ上がったの?
- どんなことが起きているの?
- 価格が安定する見通しは?
わたしは、ファスティング(断食)指導や食事アドバイスをしている栄養士です。半熟たまごやエッグベネディクトが大好きで、平飼いたまごをよく購入しています。
そんなわたしが、ここ最近のたまごの価格高騰について、簡単にまとめてみました。
たまごの価格高騰
※東京全農M基準 – 鶏卵相場(H17.7.31迄) ※JA全農たまご東京M基準(H17.8.1〜) 単位:円 / kg
《参考》JA全能たまご株式会社
「物価の優等生」とされる卵の卸売価格が上昇しています。グラフを確認すると2022年11月頃から最高値を更新していっていることが分かります。
わたしが行く都内のスーパーマーケットでは、たまごが売り切れで購入できない日もありました。
普段は売り切れどころか、ほぼ全種類のたまごが並んでいるのに、10種類以上もあるたまごが売り切れになっていたときは驚きました。
卸売価格の推移
販売会社大手の「JA全農たまご」によると、卵の卸売価格の目安とされている東京地区のMサイズ1キロあたりの価格は16日に335円となりました。
これは統計が公表されている1993年以降で最も高く、175円だった去年2022年2月の平均価格の2倍近く、先月の平均価格と比べても55円高くなっています。
《参考》NHK
最新のたまご相場
《2023年2月24日9時発表》
鶏卵卸大手のJA全農たまごによると、卵Mサイズ1キロあたりの出荷価格(東京市場)は2月24日に335円と過去最高を記録しています。
《参考》JA全能たまご株式会社
価格が高騰した理由
たまごの値段が高騰し、不足している主な理由は以下が考えられます。
- 鶏の餌代や輸送費が高騰
- 鳥インフルエンザの影響
- コロナ禍で落ち込んだ外食需要が回復
①鶏のエサ代や輸送費が高騰
ロシアによるウクライナ侵攻や、円安の影響などで、ニワトリの餌となるとうもろこしなどの価格が高騰していることが背景にあるとみられています。
ウクライナはトウモロコシの輸出量が世界第4位、ロシアは世界第11位です。
また、エサ代のほかにも電気代など施設の光熱費、燃料費・輸送費の高騰も影響しています。
飼料の自給率
家畜の飼料は、主に以下の2つからなります。
- 「粗飼料」牧草など
- 「濃厚飼料」とうもろこしや大豆油かすなどを混ぜ合わせたもの
どのエサをどれくらい食べるかは、家畜の種類などによって異なりますが、濃厚飼料は、家畜の成長スピードに大きく関わります。
これらの自給率は、2020年度時点で、粗飼料が76%、濃厚飼料は12%です。
濃厚飼料は9割近くを輸入に頼っており、国際市況に大きく左右されやすい構造となっているのです。
JA全農が、2022年6月22日に発表した、7~9月期の供給価格は、前の期に比べて平均で1トン当たり1万1400円の値上げと、過去最高の上昇幅となっています。
濃厚飼料に使われるトウモロコシ、その国際的な取り引きの指標となる先物価格は、高値傾向が続いています。
2021年に中国で流行したアフリカ豚熱によって減った豚の生産が回復したことに加え、原油価格の高騰や新型コロナからの回復にともなう物流の混乱で、海上輸送費が上昇し、先物価格は上昇しました。
自給するのは難しい
「濃厚飼料」の原料のおよそ半分を占めるのがトウモロコシです。2021年度には70%をアメリカから輸入しています。
トウモロコシはもともとは湿気に弱く、日本に多い湿田での栽培が難しいとされています。
農林水産省は自給率向上のため、トウモロコシや牧草などの生産を支援する対策を打ち出しています。
しかし、アメリカなどの大規模生産によるコスト競争力には、輸送費を入れても到底太刀打ちできず、家畜のエサ向けにトウモロコシの生産を行う農家は多くないのが現状です。
《参考》NHK
②鳥インフルエンザの影響
農林水産省によると、鳥インフルエンザが猛威を振るい始めた去年10月以降の今シーズン、2023年2月の時点で処分されたニワトリなどの数は、およそ1478万羽です。
2020年の秋から2021年の春にかけてのシーズンに記録したおよそ987万羽を大きく上回って、過去最多となっています。
《参考》NHK
鳥インフルエンザの感染は2月10日時点で25道県で確認されています。感染拡大は春ごろまで警戒が必要です。
また、ニワトリはヒナからたまごが産めるようになるまで半年間ほどかかります。その間はたまごの高値が続く可能性があるという風にも言われています。
ひとつの養鶏場でたった2~3羽でも感染したニワトリがでてしまうと、養鶏場のすべてのニワトリを殺処分しなければならず、たまごが生産できなくなるそうです。いつ頃に、価格が安定するのかは不透明な状況です。
③コロナ禍で落ち込んだ外食需要が回復
旅行や外食、出社も控える日々が続いていましたが、だんだんとマスク対策の緩和、食事会も復活のムードが漂っていますよね。
2022年4月時点
リクルートの外食市場調査・研究機関である「ホットペッパーグルメ外食総研」が、2022年4月度の外食市場調査結果を発表しています。
外食市場規模は5か月連続で前年同月を超えています。同報告によると、2022年4月の外食市場規模(東名阪3圏域計)は2,460億円だそうです。これは同年前月比+850億円で、コロナ禍以前の2019年4月と比べても71.8%まで回復していることを示します。
また業態別の統計で見ても、主要な16業態全てにおいて2か月連続で前年同月を超える結果となっています。
特に居酒屋・バー・カラオケ・ナイトクラブなど飲酒を主体とする業態は、前年同月比2倍以上の伸びを記録しています。
《参考》Foodist
2022年10月時点
一般社団法人日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、2022年10月の業界全体の売上は前年同月比で114.8%です。
さらに、コロナ禍前にあたる2019年対比でも105.5%となり、初めてコロナ禍前の売上水準を上回りました。
好調要因としては、客数の増加と価格改定による客単価アップが挙げられ、飲食業界全体に活気が戻りつつあります。
《参考》au PAY magazine
外食産業への影響
たまごの価格高騰によって、大きな影響を受けているのが外食産業です。どのような動きが起きているのか紹介していきます。
すかいらーくホールディングス
すかいらーくHDグループのレストランで提供している、卵を使った一部のメニューの販売を休止することなどを決めました。卵を使用する一部商品の提供を2月中旬から中止しています。
「ガスト」ではパンケーキやガパオライスなど、「バーミヤン」では天津飯や卵とあんかけをのせたチャーハンといった商品あわせて10品です。
また、傘下のしゃぶしゃぶ専門店「しゃぶ葉」では、これまですき焼き風のだしを注文した客に無料で提供していた卵を、今月13日からは1個税込み55円と有料にするとしています。
「通常量の使用を継続すると、卵の在庫が尽きてしまう。ガストでも看板メニューの提供を継続するため、他の商品の提供を中止している状況。春のメニュー改定でも鶏卵の必要量に留意した変更を行うつもりだ」(広報)
《参考》NHK
大戸屋
全国に約300店展開する定食チェーン大手の「大戸屋」では、看板メニューのチキン南蛮を2月15日から販売休止しています。
チキン南蛮は、タルタルソースにゆで卵を使っています。
串カツ田中
居酒屋チェーン「串カツ田中」では、一部店舗で味付き煮卵を使用したメニューの提供を停止しています。
いずれの会社も今後は、他のメニューでも卵の使用量の削減や代替品を使うことを検討しているという。
《参考》東洋経済
キユーピー
大手食品メーカーの「キユーピー」は、鳥インフルエンザの感染拡大の影響や、飼料の高騰で、卵の価格が急騰しているなどとして、主力商品のマヨネーズなどを値上げすると発表しました。今年2023年4月1日の出荷分から対象です。
発表によりますと、値上げの対象となるのは、家庭用ではマヨネーズ類やタルタルソースなど合わせて36品目で、参考小売価格でおよそ3%から21%引き上げます。
代表的な「キユーピー マヨネーズ」の450グラム入りの商品の場合、税込みで、これまでの475円から520円に引き上げられます。
また、業務用では、マヨネーズ類や卵の加工品合わせて259品目について、出荷価格でおよそ1%から17%引き上げるとしています。
《参考》NHK
セブン‐イレブン
コンビニエンスストア大手のセブン‐イレブン・ジャパンは、鳥インフルエンザの流行の影響で卵の供給が滞っているとして、卵を使った一部の商品について、31日から販売の休止や商品の規格の見直しを行ったと発表しました。
セブン‐イレブン・ジャパンによりますと、31日から全国の店舗で、半熟の煮卵などの商品およそ15品目の販売を休止しました。
また、サラダやサンドイッチなどおよそ10品目について、ゆで卵の量を減らし、ハムや野菜などほかの具材の量を増やすといった商品の規格の見直しを行ったとしています。
《参考》NHK
学生食堂
横浜国立大学の学生食堂では、13日から「スンドゥブ」や「豚キムチ丼」など5種類のメニューの提供が休止となる予定です。韓国料理の「スンドゥブ」は豆腐を使ったスープで半熟卵がのっているのが特徴です。
また、佐賀大学の学生食堂は6日から、野菜に半熟卵をのせた「巣ごもり玉子」など人気のメニューの提供を休止しました。
さらに、80年あまりにわたって学生の食生活を支えてきた、東京・港区にある慶応大学の学生食堂「山食」は、卵の品薄感が高まり新年度が始まる4月からは卵料理を含めた一部のメニューについて10円から20円程度の値上げを検討しています。
食堂には親子丼やオムライスなど4種類の卵料理があり、多いときで1日100個ほどの卵を使いますが、この1年で仕入れ価格は4割以上あがりました。
《参考》NHK
アメリカで「エッグフレーション」
たまごの価格上昇は日本だけでなく、海外でも起きています。米国の放送局「CBS NEWS」(電子版)では、「たまごの価格が1年で60%上昇」と題して特集記事を掲載しています。
「米国での卵の価格の上昇が家計を圧迫している」として、「鳥インフルは米国史上最悪の流行となっています。感染した鳥は殺処分しなければならず、卵の供給が減少し、価格が急騰している」と指摘した。
一部の米国メディアでは、卵とインフレーションを融合させた「eggflation」エッグフレーションといった造語を使用するケースも出ています。
《参考》産経新聞
【まとめ】たまごの価格高騰
鳥インフルエンザは日本で越冬する渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるとされていて、例年、秋から春ごろにかけて発生します。
少なくとも春頃までは、この高価格・不足状態を維持するのではと見受けられます。これ以上に高値を更新する可能性も十分に考えられます。
たまごは、完全栄養食ともいわれ、ひとつでバランスの取れた食品です。卵かけご飯や目玉焼き、オムレツ、お弁当のおかず、たまごサンド、炒め物など活用バリエーションが広く、普段から常備しているご家庭も多いことでしょう。
お財布と相談して、たまごの購入頻度を調整していきましょう。
また、これをきっかけに「平買いたまご」にチャレンジしてみてほしいなと思います。
平飼いたまご
通常、出回っているリーズナブルなたまごは、ニワトリが狭いゲージに入れられて身動きが取れずに育てられるそうです。1羽辺りに与えられる面積はタブレット一つ分ほどしかないそうです。
1日2回の周期で光を当て、あたかも2日きたように勘違いさせて卵を1日2回うませることもあるそうです。寿命も縮み、病気になりやすく、色んな薬を打たれるそうです。
動物としての尊厳を与えられない厳しい生活を余儀なくされているそうです。
一方で、わたしもよく購入している「平飼いたまご」というものもあります。殻を割れば、プリっと大きくお箸でつかめそうな黄身にわくわくしますよ。
「平飼い」とは、鶏舎内を自由に動き回れるようにして飼育する方法です。自然に近い環境の中で、親鶏たちは自らの足で地面を歩き、飛び回って育つので、余計なストレスを感じることなく育ちます。
病気にもなりにくく健康なので、ホルモン剤や抗生物質など余計な薬も少なくて済みます。薬漬けの鶏やたまごを食べるということは間接的にわたしたちが摂取することになります。
皆さんも、たまごが安いのには安いなりの理由があるということは知ってほしいなと思います。
《参考》蓮ヶ峯農場 平飼いたまご 24個入 非遺伝子組み換え
《参考》発送日当日の朝どり 平飼いたまご 国産鶏 手作りの餌
アニマルウェルフェア(Animal Welfare)という考え方があるのでは良ければ以下の記事でご覧ください。家畜に、感受性を持つ生き物として心を寄り添わせる飼育方法をめざす畜産のあり方です。
《参考》【アニマルウェルフェア】AW認証:世界・山梨県の取り組みと現状飼育
そもそも、たまごや鶏肉などの動物性食品を食べるのは、健康や飢餓で苦しむ人々、地球環境などを考えると、どうなんだろうという議論もあります。
わたしはヴィーガンではありませんが、ヴィーガンの方がを尊敬していますし応援しています。話が長くなってしまいそうなので、良ければ以下の記事をご覧ください。