あなたは、オートファジーをご存知ですか?
- オートファジーとはどんな仕組み?
- どんな効果があるの?
- どうすれば活性化するの?
栄養士とファスティング指導の資格をもつわたしが解説していきます。
わたしは、定期的にファスティングを実施して体をリセットしていて「オートファジー経験者」でもあります。
「オートファジー」とは
「オートファジー」とは、ギリシャ語でオート(自分自身)+ファジー(食べる)=「自食作用」という意味です。
オートファジーによって老化を止める研究は加速しています。最近では、2019年にオートファジーを研究するベンチャー企業なども設立されています。
通常時でもオートファジーは機能しているのですが、飢餓状態に置くとオートファジーの自食機能がより活性化するということが分かっています。
マウスの実験では、絶食させ細胞が飢餓状態におかれると、12~24時間後にオートファジーの活動が最大になることが確認されています。人の場合は、16時間後といわれています。
「タコは、飢えると自らの足を食べる」と言いますが、わたしたちの細胞も飢餓状態になると積極的に不要になったミトコンドリアなど自らのタンパク質を自食して退場させます。
劣化して不良品となったミトコンドリアは、エネルギーをつくるどころか、活性酸素を生み出す有害なものに変化します。
そのような不良品をオートファジーの自食機能により分解し、分解されて残ったアミノ酸などの分子で有用なものは、新たに再利用していくという合理的な仕組みです。リサイクルや、家でいうリフォームのような機能ですね。
このような細胞の自食機能以外にも、細菌やウイルスから体を守る免疫機能にも関与していることが新たに分かってきています。
健全な細胞環境を維持するために必要な機能を活性化・維持するために、定期的な、正しいファスティングを実施することが推奨されます。
「オートファジー」のメカニズム
オートファジーのメカニズムを簡単に解説します。興味がない方は飛ばしていただいて問題ありません。
人間の細胞内に膜が出現して、細胞内になるタンパク質や有害物質などを包み込んで、玉のような「オートファゴソーム」を作ります。
そのオートファゴソームに、たくさんの分解酵素が入った「リソソーム」という袋がくっついて、ひとつになります。すると、中身のタンパク質や有害物質が分解されるということです。
ノーベル生理学・医学賞を受賞
2016年に「オートファジーの仕組みと解明」により、大隅良典教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この賞は「ファスティング」が引き起こす有効性が、細胞・分子レベルで認知されたできごとです。
それまでは、ファスティングが身体にもたらす現象を目に見える身体の変化や個人の体感でしか伝えることができませんでした。
しかし、オートファジーの解明によって、そのような目に見える現象の仕組みのひとつが解明されました。
「アポトーシス」とは
「アポトーシス」とは、あらかじめDNAに寿命がプログラムされていて、それに従い細胞が消滅していくことです。
わたしたちの身体を構成する細胞も含め、形あるものは劣化していきます。
人間に寿命があるように、細胞内の細胞小器官(ミトコンドリアなど)も同様の寿命があり、劣化した細胞は消滅し、また新しい細胞が誕生するといった「新陳代謝」が絶えず行われています。
「オートファジー」 | 必要な細胞は再利用して再構築。家をリフォームのようなもの。 |
「アポトーシス」 | 細胞を消滅させ、新しい細胞をつくる。古い家を解体して、新築に建て替えるようなもの。 |
病気に対する万能薬ではない
オートファジーは、健康な正常細胞ではがんの腫瘍を抑制するが、完全にがん化した腫瘍細胞ではがん細胞を逆に生かしてしまいます。がん細胞増殖に寄与するとも言われています。
健康とは、普段から予防して維持していくことが大切です。定期的にファスティングを行い「予防医学」として取り入れると良いでしょう。
「がん細胞」
本来、がんは不要な細胞として、細胞内小器官の「ミトコンドリア」などによる細胞死(アポトーシス)誘導によって除去されます。
しかし放射線治療や抗癌剤投与によって、ミトコンドリアが傷つけられると、オートファジーが活発になりミトコンドリアを処理してしまいます。つまり、がん細胞はオートファジーを巧みに利用して治療から逃れていることになります。
研究が進めば、病気の画期的な予防法や治療法の解明につながると期待されています。
「オートファジー」の効果
オートファジーによる効果を活用した「オートファジーダイエット」や「アンチエイジング」「予防医学」として取り入れる方が増えています。
芸能人や、アスリート、アーティストも細胞の若返り効果を期待してファスティングを取り入れる人は多く存在します。体操の内村航平さんや、GACKTさんなど、普段から1日1食にしている有名人の方もいます。
オートファジーによって、古くなったり壊れた細胞新しく生まれ変われば病気を遠ざけ、老化の進行を食い止めることができます。
「16時間断食」
「空腹」こそ最強のクスリという本がヒットして、「16時間断食」という言葉も良く耳にするようになりましたね。本の内容を要約した記事があるのでよければ参考にご覧ください。
《参考》【要約】空腹こそ最強のクスリ:16時間断食の正しいやり方・ナッツの食べ方
オリエンタルラジオのあっちゃん「中田敦彦のYoutube大学」でも取り上げていて大反響でした。
基本的には、食べない時間を16時間つくるということで、どうしてもの場合はナッツだけはOKという方針です。
こちらの本でもファスティングによる筋肉の減少は懸念されており、やはりファスティング専用ドリンクを取り入れたファスティングが安心だと思います。
専用ドリンクを摂取することで最低限必要なエネルギーと、代謝を促進するミネラル・ビタミンを摂取するという方法です。
感染症に対する「免疫力」の向上
大阪大学栄誉教授の吉森氏によると、オートファジーが活発であれば、感染症に対する免疫力の向上も期待できるということです。
オートファジーは細胞内に侵入してきた病原体を殺す役割があるうえ、ウイルスに対する抗体を作る際にも必要となります。
吉森氏は以下のように述べています。
「まだ未解明な部分も多いが、老人はオートファジーが抑制されているため、免疫力や抗体を作る能力が弱まってくる。実験では、老化したヒトのオートファジーを活性化すると、抗体を作る能力が回復することが報告されている。オートファジーは新型コロナを含む感染症への抵抗力を高める可能性がある。」
「認知症」の予防
吉森氏によれば、認知症の予防にも役立つ可能性を秘めているそうです。
認知症患者の脳内では、「アミロイドβ」というたんぱく質が増えて塊を作り、神経細胞が死んでいくが、塊を作るタンパク質に対して選択的にオートファジーが起こり、正常な状態に戻そうとすることも分かっています。
アルツハイマー病は、脳の神経細胞に不要なタンパク質が蓄積して発症すると言われていますが、こうした神経系の病気はオートファジーの掃除・分解機能が正常に働かないためではないかと考えられています。
「高血圧症」を改善
「オートファジー」を活性化するには
オートファジーの細胞リフォーム効果により、身体に様々なことを起こすことが分かりました。
そのオートファジーは、どうすれば活性化させることができるのかを紹介していきます。
- 「ファスティング」を行う
- 「ポリアミン」を摂取
- 「レスベラトロール」を摂取
- 「アスタキサンチン」の摂取
- 「有酸素運動」を行う
各項目について詳しく解説していきます。
①「ファスティング」を行う
飢餓状態によってオートファジーの自食機能がより活性化するということが分かっています。人が最後に食事をしてから、16時間後と言われています。
ただし、水だけ断食など過度な断食を行うと、オートファジーで分解された筋肉が、栄養不足のため再合成されることなく細くなってしまうということが懸念されています。
それぞれの体に必要なミネラル・ビタミンを摂取して、筋肉の分解を防げる方法で、ファスティング行うことが大切です。ファスティングの効果をご紹介した記事があるので良ければご覧ください。
《参考》【ファスティングとは】断食との違い・ダイエット&デトックス効果
②「ポリアミン」を摂取
「ポリアミン」はオートファジーを促進すること明らかになっています。他にも、強い抗炎症作用があり、脳機能の調節、腸壁を保護など、多くの動物の長寿を促します。
《ポリアミン多く含む食材》
- イカ、牡蠣、カニ、ホタテなど
- 納豆などの発酵食品
- アブラナ科の野菜(ブロッコリー、小松菜、カブ、大根、水菜、キャベツ、白菜、チンゲン菜など)
- 葉物野菜(レタス、春菊、ほうれん草など)
- キノコ類
- 抹茶
- ナッツ・種子類(ヘーゼルナッツ、クルミ、ピスタチオなど)
- 鶏レバー
- 熟成チーズ
- レンズ豆
マウスの研究
日本の研究者がマウスにポリアミンを産生する腸内細菌のサプリメントを与えたところ、マウスの炎症が抑えられ、寿命が延び、加齢による記憶障害から守られました。
別の研究では、生涯にわたってマウスにポリアミンを含むサプリメントを与えたところ、寿命が25%伸びたそうです。
晩年(一生の終わりの頃の時期)になってからポリアミンを与えたネズミでも10%の寿命延長が見られました。
これは、ポリアミンが細胞のオートファジーを促進し、弱った細胞や異常な細胞を死滅させて、生体を強化する役割を果たしているからだと考えられています。
「スペルミジン」
タンパク質の合成を助ける物質「ポリアミン」の一種である「スペルミジン」には注目すべきです。
- 「豆類・発酵食品」納豆、味噌、醤油、チーズ
- 「食材」しいたけなど、きのこ類
上記の食品に、スペルミジンが多く含まれており、低脂肪の和食を食べる生活はオートファジーが活性化しやすいと考えられています。
スペルミジンは体内でも合成される物質ですが、加齢とともに作られる量が減るので、高齢な人ほど食事から摂取した方がいいと、吉森氏は述べています。
③「レスベラトロール」を摂取
ポリフェノールの一種「レスベラトロール」は、オートファジーを活発にし、寿命を延ばす働きがあることが動物実験で確認されています。ブドウや赤ワイン、ベリー類に含まれます。
ワインとチーズを食べる国の平均寿命が比較的長いのは、レスベラトロールとスペルミジンを豊富に摂取し、オートファジーが活性化しているからかもしれません。
他にはアーモンドもレスベラトロールが含まれています。
レスベラトロールは、ポリアミンと異なる経路でオートファジーを促進します。
④「アスタキサンチン」の摂取
サケやエビ、カニに含まれる「アスタキサンチン」を摂取することで、オートファジーが活性化するとも言われています。
まだ研究段階であり、どのくらいの量とれば効果があるのかなどの詳細は追って明らかになってくるでしょう。
⑤「有酸素運動」
有酸素運動であるランニングでオートファジーが活性化され、糖尿病になりにくくなったというマウスの実験が米国で報告されています。
一方で、筋トレによって筋肉中の「エムトール」という酵素が活性化すると、オートファジーを抑制してしまいます。
加齢が進み、オートファジー活性が落ちてきたときに過度な筋トレのみを行うのは避けた方が良さそうです。
「ルビコン」とは
2019年に、「ルビコン」と呼ばれるオートファジーのブレーキ役となるタンパク質が、加齢とともに増加することを大阪大学栄誉教授の吉森氏が発見しています。
オートファジーを促進するたんぱく質は以前からいくつも発見されていますが、ブレーキをかけてしまう発見は珍しいです。
ルビコンをコントロールすることで、老化を止められる可能性が出てきたと話題になっています。
「動物実験」
既に、動物実験ではルビコンの抑制によって寿命を延ばす効果が確かめられています。
遺伝子操作によりルビコンの働きを抑えた線虫を観察したところ、オートファジーの活性化が認められ、寿命が平均20%も延びたそうです。老いても活発に動き続けていたため、健康寿命も延びたと考えられます。
吉森氏は以下のように述べています。
「実験では、年老いた線虫が通常の線虫に比べて2倍の運動量を示した。人間に置き換えれば、80歳の老人がフルマラソンを容易に走りきるようなものだ。」
老化現象の軽減
寿命が延びただけでなく、運動機能の低下や、老人に多い慢性腎臓病の特徴である「腎臓の繊維化」、パーキンソン病の進行などの老化現象が軽減するということです。
脳のルビコンをなくすと最も効果があるそうですが、明らかになっていないことも多く、さらなる研究が進められているそうです。
【まとめ】オートファジー
オートファジーとは自食作用のことで、わたしたちの細胞をリサイクルしてくれる仕組みです。
健康的に若々しく歳を重ねていくには、オートファジーの力を借りない手はありません。歳をとるとオートファジーの機能が低下することも分かっていますので、自分自身の生活習慣でケアしてあげると良いでしょう。
まずは、マイナスの健康法「ファスティング」で脂肪にたまりやすい有害物質を排出し、オートファジーの活性化、そしてプラスの健康法「食べるものの質」を考え、オートファジーを促進させるようなものを取り入れると良いでしょう。
オーガニックや無添加な食品・コスメなどをまとめていますので、良ければ参考にご覧ください。
また、わたしの生徒さんがファスティングを行った事例や、ファスティングのメリットをまとめた記事もありますので、ぜひご覧ください。