あなたは「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という本を読んだことがありますか?
- どんなことが書いてあるの?
- 読むのは大変だから簡単に要約してほしい。
- どうすれば太らないの?
このような疑問にお答えします。わたしは、オーガニック食品が好きな栄養士です。「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」という本を読みまして、とても勉強になり面白かったので、分かりやすくかつ詳しくまとめていきます。
前編、中編、後編の3部作で、番外編でダイエットに関する研究の歴史もご紹介していきます。こちらは中編になりますので、よろしければ前編からご覧ください。
《参考》【要約】トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ:前編
大手食品会社の思惑
食事の時間以外にも、おやつなどをこまめに食べる習慣が加速的に広まっていったのは、大手食品会社が利益をあげるための戦略です。「間食」という新しい食事の時間をつくり販売促進を行いました。
大手食品会社が出資した研究
医療情報や健康情報を公表するにあたっては、中立性を保つことがとても重要です。
2007年ソフトドリンクについて調査を発表したハーバード大学のディヴィット・ラドウィグ教授は、研究対象となっている製品を製造している企業から研究のため資金提供を受けている場合、その製品の肯定的な結果が出る確率は「約700%」だと試算しました。
大手食品会社は栄養学を手がける多くの機関に資金提供していて、研究という名目でさらに狡猾な宣伝が行われています。食事を減らされたら儲からないから「食事の回数を減らそう」ということは、誰も宣伝してこなかったのです。
間食として食べるものは、高度に加工されたものが多いため「食品の質」そのものにも問題があります。これは大手食品会社の都合によるものです。
加工していない食べ物を売るよりも加工食品を売った方が利幅が大きいからです。手軽さと賞味期限の長さから、精製された炭水化物がよく使われます。
「朝ごはん=健康」は印象操作
日本やアメリカでは、しっかり朝食を食べることが健康的な食生活の第一歩だと考えている人は少なくありません。しかし、スリムな人が多いフランスでは朝はコーヒーだけ飲んで、朝食を食べない人が多いのです。
2013年、朝食に関する研究のシステマティック・レビューを行ったところ、ほとんどの研究が、得られた結果を自分たちの意向に添ったように解釈していたことが分かりました。
たとえば、1994年の研究です。14キロの減量に成功し、体重を1年間維持していたモニターの大半(78%)は、朝食を食べていたそうです。この結果で「朝食は減量に効果がある」という証拠だと言われました。
では減量できなかった人は、朝食を食べていないのか?それは明らかにされていません。もしかしたら減量に失敗し人の大半も朝食を食べていたとしたらどうでしょう?この情報では正当な比較ができませんよね。
朝食は不要
これから始まる1日に備えてエネルギーを補給しなければと考えがちですが、体が自然と行っています。
毎朝、目覚める少し前に体の概日リズムによって、成長ホルモン、コルチゾール、アドレナリンとノルアドレナリンといった興奮作用のあるホルモンが一斉に分泌されて体を刺激します。
こうしたホルモンたちが肝臓に新しいグルコースを産生するように促し、わたしたちは目覚めるのに必要な刺激を受けています。これは「暁現象」と呼ばれ、何十年前から知られているエネルギーチャージ現象です。
食べなくても、ホルモンの刺激によってグルコースが血中に放出され、すぐにエネルギーが使える状態になっています。
朝、わたしたちの体は活動をする準備をしていて、食べる準備はしていません。「夜に、おなかがすいたかな?」思ってそのまま寝ても、朝起きてすぐにおなかが空ていないなんて経験がある人もいるのではないでしょうか。
朝、おなかが空く人は、長年の習慣によるものです。
食事の摂り方
どんな食事の摂り方がいいのか、悪いのか、ご紹介していきます。
「朝食をしっかり食べる人」は太りやすい
いくつかの研究によれば、朝食でどれだけのカロリーを摂ろうと、昼食と夕食で摂るたんぱく質の量は変わらないことが分かっています。
それどころか朝食をしっかり食べると1日の摂取カロリーが増え、さらに1日の食事回数も増えます。
朝、起きたばかりでおなかが空いていないのに「健康のために」「痩せるために」朝食を食べるという人も多くいます。考えてみれば、痩せたいのに無理して食べているというのは、おかしな話ですね。
朝食抜きでも燃焼率は同じ
英国バース大学が朝食に関するランダム化比較試験を行ったところ、1日の総エネルギー消費量は、朝食を摂っても撮らなくても変わらないことが分かりました。
反対に、朝食を食べた人は、1日で平均539kcalも多く摂取していたそうです。
朝は時間がなく慌ただしいので、手軽に食べられて、安価で、賞味期限が長い加工食品を求めやすいです。たとえば、シリアル、トースト、パン、加糖ヨーグルト、デニッシュ、フルーツジュースなどです。
習慣によるものではなく、「本当におなかが空いているのか?」自分に問いかけてみましょう。「朝食は食事の中で最も大切な食事」なのは、あなたにとってではなく、大手食品会社にとってはです。
「野菜」の摂り方
野菜や果物は、ほかと比べて健康的な食べ物であることには間違いありません。しかし、不健康な食べ物を健康的な食べ物に置き換えなければ意味がないのです。追加してどんどん食べてばかりでは効果は期待できませんよ。
エネルギー密度は低いが食物繊維を多く含む野菜や果物を食べることで満腹感が増し、よりカロリーが高い食べ物を食べずにすむという考えです。
それであれば「もっと野菜を食べよう」ではなく「パンの代わりに野菜を食べよう」というアドバイスが適切です。
2014年、野菜や果物の摂取量を増やして体重を減らすことができるのかを調べたすべての研究結果を研究者たちが集めました。しかし、どの研究を調べても減量の効果を示すものはありませんでした。
つまり、プラスして食べても意味がないといいうことです。置き換えましょう。
「ちょこちょこ食べ」が糖尿病リスクを上げる
インスリンは、肥満を招くだけでなく2型糖尿病の原因にもなります。どちらも多量のインスリン分泌が長く続くことが根本的な原因です。
この2つの症状は似ているため「糖尿肥満」というひとつの症候群として捉えられるようになってきています。「糖尿肥満」は、インスリン値を下げるという治療が必要です。
これほど糖尿肥満が深刻な状況になったのは、1970年ごろから始まった誤った食生活の変化が原因です。
- ×もっと炭水化物を食べよう
- ×こまめに食べよう
- ×朝食や間食を食べよう
心臓疾患を減らそうとして食生活を変えたのに、結果的に増やすことになってしまいました。
「所得が低い」と太る
貧困は、肥満と密接な相互関係があると考えられています。アメリカの貧しい地域では、多く肥満が見られました。
しかも、身体活動がより多い仕事をしてる貧しい人の方が肥満率が高いという興味深い結果がでています。
低所得者ほど肥満が広がっていて、なぜお金持ちの方が痩せているのかというと、お金持ちは加工品でない食品を食べているが、低所得者は安価な加工品を食べて肥満につながるということです。
たとえば、ステーキやロブスターなどの従来のご褒美は高級品です。それに、肉や乳製品などのたんぱく質食品は、比較的に高価です。豆腐や豆類などたんぱく質を多く含む野菜などは比較的に安価だが北米の食生活ではあまり一般的ではありません。
そうすると炭水化物、しかも精製された炭水化物が安く手に入るので貧しい家庭の人々は手を伸ばすことになります。加工された炭水化物は桁違いに安いですから。
「精製された炭水化物」は安価
なぜこんなに精製された炭水化物は安価なのかというと、政府が高額な補助金を出して、生産コストを低く抑えられるからです。
2011年、アメリカのある公益調査グループが、農業への補助金の29%がトウモロコシの生産に対して給付され、12%が小麦の生産に対して給付されていると発表しました。
トウモロコシは、コーンシロップ、異性化糖(果糖ブドウ糖液)、コーンスターチなど、高度に精製された炭水化物に加工して販売されます。小麦は、小麦粉となり様々な商品に加工されて売られます。
一方で、精製されていない炭水化物は金銭的な援助をほぼ受けていません。
りんごと、食品添加物(コーンシロップ、異性化糖など)に対する補助金の額を比較すると、食品添加物の方が30倍も多くの補助金を受けています。
食べ物を「値段」で選ぶと太りやすい
政府は、肥満にする食べ物への補助金を国民から集めた税金で賄っているのです。政府の方針が肥満をうみだしたといっても過言ではありません。
トウモロコシや小麦の大規模生産を後押しし、それが様々な食品に加工されます。そして、できた食品は、はるかに安価なため消費が増えます。なかでも高度に精製された炭水化物を多く食べると肥満になり、今度は肥満対策の治療にも多額の資金が必要になります。恐ろしい悪循環です。
1970年代から熱心に行われてきた「食べ物をより安価にしよう」というプログラムが進められた結果です。
当時の大きな健康問題は、肥満ではなく「心臓病のまん延」でした。その原因は「脂質の摂りすぎ」と考えられていて、毎日食べるべきは、パン、パスタ、じゃがいも、米などの炭水化物でした。
化学調味料や添加物
社会の変化に伴い、レストランやファーストフード店などで外食することが増えていきました。こうしたお店では、化学調味料や添加物、人工的な調理法によって、素晴らしくおいしく感じられるように巧みにつくられています。
砂糖やグルタミン酸ナトリウム(MSG)などの調味料を加えることで舌にある味蕾に、よりおいしく感じさせることができます。昔より食べ物はおいしくなったのです。
また、ファーストフードが肥満を招いたと指摘する人もいるが、これは関連性が薄いとされています。
北米で肥満が急増したのは1977年のことで、そのころにレストランやファーストフード店が急激に増えたという事実はなく、何十年もかけて徐々に店舗数を増やしています。
「肥満児」現象
1997年~2000年にかけて、子ども肥満はすべての年齢層において爆発的に増えました。12~19歳は、たった3年で3倍以上に増えました。
《肥満率の変化》
1997年 | 2000年 | |
6~11歳 | 7% | 15.3% |
12~19歳 | 5% | 15.5% |
かつては2型糖尿病や高血圧症といった肥満に関連する疾病は、子どもにはほとんど確認されなかったが、今では一般的になりつつあります。
ボガルサ心臓研究では「肥満だった子どもは、思春期になっても肥満である」と結論づけました。
肥満児は短命
子どもの頃に肥満だった人は、寿命が短いとされています。しかし、子どもの頃に太っていても大人になったときに通常の体重になれば、これまで太っていた時期がない人とと同程度の寿命となるそうです。
研究によると、子どものころに肥満だった人が大人になってから肥満になるリスクは17倍以上だそうです。
妊娠糖尿病の母親のもとに生まれた赤ちゃんは、その後の人生で肥満や糖尿病になるリスクが3倍も高くなります。在胎週数に比べて大きな赤ちゃんは将来メタボリック症候群になるリスクは2倍です。
子の体重は「母親」で決まる
肥満に悩む子どもの年齢はどんどん下がってきています。2001年までに22年間にわたって行われてきたある研究では、0か月~6か月の赤ちゃんにも肥満の傾向があることが分かりました。
ちなみに、出生体重は過去25年の間に200グラムも増えています。
近年、ディヴィッド・ラドウィグ教授が51万3501人の母親と、その子ども116万4750人の体重に関連性があるかどうか調べた結果、母親の体重増加は、新生児の体重増加と強い関連性があることが分かりました。
胎児は母親の血液から栄養を摂りこむのでインスリン過多などのホルモンバランスの乱れが、胎盤を通じて胎児に伝わってしまうのです。
つまり、母親のインスリン値が高いと、子宮にいる頃から子どもはインスリン漬けになり、生まれてからも子どものインスリン値が高くなり、さらにはインスリン抵抗性が発現します。
そして、インスリン抵抗性によってインスリンの効果が得られず、インスリンが過剰分泌するというお馴染みにの悪循環に陥ります。
子どものダイエット
大人と同じように「低脂質・低カロリーで運動をする」という肥満解消プログラムに取り組んだ子どもは痩せることができませんでした。
残念ながら、大人と同じ結果になりました。やはり、カロリー理論では、大人も子供も瘦せられないのです。
2014年「米国医師会雑誌」が2歳~5歳までの子どもの肥満率が2003年から2012年にかけて43%減少したという統計を発表しました。しかし、これはダイエットの成功ではないと推察されています。
砂糖の添加が1977年から増えたことによって、肥満が増えていったが、1990年代の後半になる頃には砂糖が体重の増加に影響していることが注目され始めました。
2000年になって砂糖の摂取量が減り始めたために、その5年~10年後に肥満も減り始めたというのが真相だということです。子どもは高いインスリン値にさらされた期間が短いためインスリン抵抗性がそれほど強くないので、少し肥満になりにくい状態ということです。
痩せたダイエット例①
2004年~2008年にかけてオーストラリアのロンプ&チョンプ社が行った実験で、子どものダイエットの成功しています。
- 糖分が多く含まれている飲み物を大幅に減らし、水や牛乳を飲むこと
- エネルギー密度の高い間食を大幅に減らし、野菜や果物の摂取量を増やすこと
脂質やカロリーを減らすのではなく「間食と糖分」が減らされました。
この方法は「インスリン分泌」「インスリン抵抗性」に対抗できるものです。2歳~3歳半の実験群の子どもたちの肥満率は2、3%までに減少しました。
痩せたダイエット例②
イギリスの南西部では、6つの学校で「炭酸飲料を飲むのをやめよう」というプログラムが行われました。目標はただひとつ「7歳~11歳の子どもが飲む炭酸飲料を減らす」というものです。
このプログラムで、1日の炭酸飲料の消費量は150ml減り、肥満率も0.2%減少しました。わずかな数字に見えるかもしれませんが、加糖された飲み物を減らすことは、子どもの肥満予防に大きな効果があります。
「砂糖」の中毒化
1977年に発表された「米国人のための食生活指針」でも「食事で糖分を摂りすぎるのは危険」ともしています。しかし、脂質が危険だと注目をされすぎて糖分は見逃されがちでした。
1977~2000年頃にかけて砂糖の消費量がじわじわと増えていき、それに並行するように肥満率も上がっていきます。砂糖の消費が増え始めて10年後には糖尿病の患者数も増加し始めます。
砂糖を「飲む」のは最も危険
1970年代、一人当たりの加糖飲料の消費量はそれまでの倍になりました。1980年代に入る頃には水道水を飲むよりも加糖飲料を飲む方が一般的になり1988年までアメリカ人は年間212リットルもの加糖飲料を飲んでいました。
加糖飲料に含まれる糖分がアメリカ人の食事に占める割合は1970年に16%ですが、2000年には22%に増えていきます。
その後、2003年から2013年にかけてアメリカのソフトドリンクの消費量は20%近くも減りました。2014年、加糖された製品は健康に良くないとされ、コカ・コーラ社の売り上げは9年連続の減少となります。
今では政界で、炭酸飲料に税金を課すことが提案されるまでになっています。
「炭酸飲料」をアジアに展開
炭酸飲料業界は、欧米ではではなくアジアに活路を見出していきます。すると、アジアでの砂糖の消費量が年間5%ほどの増加となりました。
その結果、糖尿病という災害が起きます。2013年には中国人の成人およそ11.6%が2型糖尿病になり、アメリカの11.3%を抜く結果となりました。
2007年以降2200万人の中国人が新たに糖尿病と診断されたが、これはオーストラリアの人口に匹敵する数で、1980年に2型糖尿病を患っていた中国人が1%だったことを考えると、衝撃的な数字であることが分かります。
わずか1世代で、糖尿病の罹患率が1160%と伸びたということです。砂糖は、精製された炭水化物よりもはるかに太りやすく2型糖尿病にもなりやすいのです。
「甘いもの」が糖尿病リスクを上げる
加糖飲料を1か月に1本飲む人は、飲まない人に比べて糖尿病になるリスクが83%も高まります。さらに、ひとりの人が1日に摂る砂糖が150kcal分増えるごとに糖尿病の罹患率は1.1%高まります。
しかし、砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)は糖尿病に良くないとは言われてきませんでした。
たとえば、1983年に著名な内分泌科医のバントル医師が「ニューヨーク・タイムズ」紙で、「糖尿病患者も、摂取カロリーを一定に保ちさえすれば糖分を含む食べ物を食べてもいい」と主張していました。
他にも、1986年アメリカ食品医薬品局(FDA)の糖類研究班は1000件以上の研究結果をを統括的にレビューして「糖分の摂りすぎが危険なことを示す決定的な証拠はない」としており、1988年に「糖分は概して安全たと考えられる」と改めて肯定しています。
さらに、1989年に米国科学アカデミーの「食事と健康:慢性疾患を予防するために」では「糖分の摂取は、虫歯を除く慢性疾患のリスクと要因は認めれない」とされています。
医学界でも、長年かけて正しい情報が追求されてきたことが分かります。今の常識は、未来でも常識とは限りませんね。
「砂糖」は高度に精製された炭水化物
砂糖が高度に精製された炭水化物だから、砂糖と摂ると太るのです。砂糖を摂るとインスリンの産生が促され、体重増加を引き起こします。
砂糖は、他の炭水化物と砂糖には決定的な違いがあるため、より太りやすいのです。それは、砂糖の主成分であるスクロースに含まれる「フルクトース(果糖)」です。
「フルクトース」と「グルコース」
「グルコース(ブドウ糖)」 | これまで何度も登場してきた「グルコース(ブドウ糖)」は、血中に含まれる主要な糖で、体内を循環する脳にとって大切なエネルギー源です。グルコースは肝臓にグリコーゲンとして貯蓄されるなど様々な形で体内に蓄えることができます。 |
「フルクトース(果糖)」 | それに引き換え「フルクトース(果糖)」は、肝臓内のみで代謝可能で、血液を介して循環しません。脳、筋肉、他のほとんどの組織はフルクトースを直接のエネルギー源として利用できないのです。フルクトースを摂取しても血糖値には目に見えるほどの変化はなく、低GI値であることがポイントです。 |
グリセミック指数(GI値)
1980年代、トロント大学のディヴィッド・ジェンキンス教授が、血糖への影響という視点から食品群の再分類を行ったが、これは異なる炭水化物を比較するのに役立つものでした。
この先駆的な作業から、食後血糖値の上昇度を示す指数「グリセミック指数(GI値)」が生まれました。基準をグルコースを100として、他の食品の血糖値への影響度を数値で表します。
しかし注意点としては、GI値は血糖値を測定するものだが血中のインスリン値については勘定していません。
「フルクトース」は見逃されやすい
フルクトースのGI値は極めて低く、体内に摂りこまれると目に見えるほどの血糖値をあげることはありません。それに、果物に含まれる主要な糖分なので健康に良さそうというイメージを持たれていました。
しかし、フルクトースはグルコース(ブドウ糖)よりも、はるかに肥満や糖尿病の原因になりやすく健康には良くないのです。
フルクトースをスクロース(50%フルクトース・50%グルコース)から摂ろうとも、果糖ブドウ糖液糖(55%フルクトース・45%グルコース)から摂ろうとも、フルクトースの消費量が増えるにつれて肥満が増えていることが分かりました。
フルクトースを7日間とっただけでインスリン抵抗性は発現し、8週間後には前糖尿病の症状が出ます。詳しくご紹介していきます。
1週間で「肝臓が太り」だす
細胞内にグルコースを最大限摂りこむためにはインスリンが必要で、血糖値があがります。フルクトースを代謝できるのは肝臓だけで、インスリンを必要とせず血糖値はあまり上がりません。
これはグルコースはエネルギー源として体のあちこちに分散されるのに、フルクトースは肝臓だけを狙い撃ちにして負担をかけるということです。
つまり、過剰摂取されたフルクトースは肝臓の脂肪になり「脂肪肝」を引き起こします。すると次は、脂肪肝が肝臓に「インスリン抵抗性」を発現させ、太ることは免れません。
8週間で「糖尿病予備軍」
1980年、実験によってフルクトースが人間にインスリン抵抗性を発現させることが分かりました。
健康な被験者が1日に1000kcalのグルコースかフルクトースを与えられました。するとグルコースを与えられたグループのインスリン感受性に変化はなかったが、フルクトースを与えられたグループのインスリン感受性がたった7日で25%も減少しました。
2009年の実験では、健康なボランティアの被験者に1日の摂取カロリーの25%をグルコースかフルクトースで甘みが加えられた粉末ジュースで摂ってもらいました。多いように感じるかもしれませんが、実際に多くの人が普段の食生活で摂っているくらいの量です。
フルクトースはGI値が低いので血糖値をほとんど上げなかったが、たった8週間(2か月ほど)で前糖尿病の症状が出ました。インスリン値とインスリン抵抗性の値は、グルコースよりフルクトースの方が高かったのです。
※「前糖尿病」とは、糖尿病予備軍のことです。
「フルクトースは低GIだから安心」ということはありません。
スクロース(ショ糖)に注意
スクロースは、50%フルクトース(果糖)・50%グルコース(ブドウ糖)で、結合してできた糖であるため肥満の原因が2つあります。
似たような話になってきますが、グルコースは、インスリンの分泌を直接促す精製された炭水化物です。フルクトースの過剰摂取は脂肪肝の原因になり、インスリン抵抗性を引き起こす直接的な原因となり、これが続くとさらにインスリン抵抗性を高めていくことになります。
つまり、スクロース(ショ糖)は、グルコースの倍、体に悪いのです。グルコースの影響はGI値に表わされているが、フルクトースは血糖値を上げないのでGI値だけで見ると影響が隠蔽されてしまいます。
砂糖は「インスリンの分泌」と「インスリン抵抗性」を同時に引き起こします。
数年前に摂った「砂糖が脂肪に変わる」
実験期間が1週間未満という多数の実験を解析してみると、フルクトースの影響はカロリー以外に特筆すべきものがないと結論づけられていました。これは、喫煙に関する研究をほんの数週間行って、喫煙は肺がんを引き起こさないと結論づけてしまうようなものです。
体重を落としたいなら砂糖を極力取り除くことが大切です。これぐれも人工甘味料に置き換えてはいけません。
果糖ブドウ糖液糖(55%フルクトース・45%グルコース)
ところが「果糖ブドウ糖液糖」が開発されてから、フルクトースの消費量は2000年までじわじわと増えていき、総摂取カロリーの9%を占めるまでになりました。特に若者の摂取量が多く、1日に72.8グラムを摂取しています。
※「果糖ブドウ糖液糖」(55%フルクトース・45%グルコース)とは、1960年代にスクロース(50%フルクトース・50%グルコース)に変わる液体甘味料として開発されました。
「スクロース」 | 50%フルクトース・50%グルコース。サトウキビとテンサイから加工されて値段は安くも高くもない。 |
「果糖ブドウ糖液糖」 | 55%フルクトース・45%グルコース。アメリカ中西部で大量に生産された安いトウモロコシを使って加工することができ、とにかく安い。 |
果糖ブドウ糖液糖+加工食品
果糖ブドウ糖液糖は、液体なので加工食品に混ぜやすく、加工食品の最適なパートナーとなりました。他にも次のような理由があげられます。
- グルコースより甘未がある
- 冷凍焼けを防げる
- 焼き目をうまく付けられる
- 簡単に混ぜることができる
- パンが柔らかくなる
- GI値が低い(健康そうに見える)
安くて扱いやすい果糖ブドウ糖液糖を加工食品会社が使わないはずもありません。
こうして加糖ブドウ糖液糖は、ほとんどの加工食品に使われるようになりました。ピザソース、スープ、パン、クッキー、ケーキ、思いつくままに挙げればほとんどのものが該当します。
「ダイエット飲料」と「人工甘味料」
世界で最も甘い人工甘味料「サッカリン」は、もともと糖尿病患者が飲み物に加える甘味料として合成されたものだが、徐々に人気が広まり、甘くてカロリーの低い他の甘味料も合成されるようになっていきました。
1965年に人工甘味料「アスパルテーム」が発見されました。アスパルテームはスクロース(ショ糖)より約200倍甘いが、動物実験でがんを誘発する危険があることが分かっています。なのに、1981年から使用許可を受けています。
その後「アセスルファムカリウム」さらに「スクラロース」へと人工甘味料の人気が変化していきました。
ダイエット炭酸飲料やヨーグルト、朝食用シリアルなど、その他「無糖」とうたわれている加工食品にもこうした化学物質が含まれています。
ダイエット炭酸飲料の消費量は、1960年当初はわずかなものだったが、2000年には400%以上も増えました。2010年のコカ・コーラ社のアメリカにおける売り上げの42%はダイエット飲料によるものです。
調査では、回答者の64%が「人工甘味料により健康への影響を懸念している」と答え、44%は「人工甘味料を減らすように努力しているか摂らないようにしている」と答えています。
「アガベシロップ」
より自然でカロリーの低い甘味料を求める声が増え「アガべシロップ」が一時人気を博しました。アガベシロップは、アメリカ南東部、南米の一部に生育しているアガぺという植物から加工される甘味料です。
アガベはGI値は低いので、砂糖に代わる健康的な甘味料とされていました。しかし、アガベシロップの成分のほとんど(80%)がフルクトースだったのです。
日本人が大量消費する「ステビア」
続いて市場に出回ったのは「ステビア」です。ステビアは、南米に自生するステビアの葉から抽出される甘味料です。砂糖よりも300倍も甘いが血糖にはほとんど影響を及ぼしません。
日本では1970年から広く使われてきて、最近では北米でも使われるようになってきました。
ただし、「アガベシロップ」も「ステビア」も高度に加工された甘味料です。その点では、テンサイから抽出される天然成分である砂糖そのものよりも特段よいということはありません。
「人工甘味料」はダイエット効果なし
ひとり当たりのダイエット食品の消費量はここ数年で急激に増えています。もし本当に低カロリーの人工甘味料が肥満や糖尿病を減らしてくれるのなら、なぜまだまん延しているのでしょうか。
理論的に考えるなら、ダイエット飲料などの人工甘味料はそれほど効果がないと結論づけざるをえません。
「人工甘味料」を摂ると太りやい
アメリカがん協会が人工甘味料が減量に有効であると証明しようと、7万8694人の女性を対象に調査を行いました。
しかし期待と反対の結果になりました。1年後に当初の体重と比べたとろ、人工甘味料を摂っていた女性は、体重が増える傾向がとても高いことが分かりました。ただし、体重の上方は0.9キロ未満と比較的に緩やかでした。
また、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのシャロン・ファウラー博士は5158人の成人を対象に2008年から8年に渡って調査研究を実施しました。この研究から、ダイエット飲料は肥満を減少させることはなく、肥満リスクを47%も高めることを発見しました。
人工甘味料の使用は、肥満を助長させるのではないかと疑問が持ち上がりました。
「人工甘味料」は体に悪い
2012年、マイアミ大学のハナ・ガーデナー教授が、ダイエット飲料を飲むと脳卒中や心臓発作などの心血管イベントのリスクが43%高まるということを発見しました。
2008年に行われた地域における動脈硬化リスク研究(ARIC)では、ダイエット飲料を飲んでいる人はメタボリック症候群になる確率が34%高まることが分かりました。2007年に行われたフラミンガム研究でも50%高まるという結果が出ています。
2014年にはアイオワ大学病院のアンカー・ヴィアス医師が、5万9614人の女性を対象に8年余りわたって行った研究結果によると、1日に2杯以上のダイエット飲料を飲む人は心血管イベント(脳卒中や心臓発作)のリスクが30%高まるとのことです。
なぜ体に悪いのか
ダイエット飲料は、糖分を控えたものなのに様々病気のリスクがあがるのはなぜでしょうか。それは、肥満やメタボリック症候群を最終的に引き起こすにはカロリーではなく「インスリン」だからです。
人工甘味料は、摂取するカロリーも糖分も減らすことはできるが、インスリンを減らすことができません。
人工甘味料の「スクラロース」はカロリーも糖分も含まれていないがインスリン値を20%も上げます。他にも、人工甘味料の「アスパルテーム」や、天然甘味料の「ステビア」は血糖値は上げないものの砂糖よりもインスリン値を上げます。
こうした化学物質は、減量に効果がないばかりか、かえって体重が増える原因となります。
「人工甘味料」で脳は満足しない
脳はカロリーのない甘味料を感じ取ると、これでは十分な報酬とはならないと考え、食欲を増進させたり欲望を高めたりして「代償作用」を働かせます。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によると、脳の報酬系を十分に活性化させるのはグルコースで、人工甘味料のスクラロースではないことが分かっています。
報酬系が十分に活性化されないと、報酬系の活性度を上げようと甘い食べ物への欲望が刺激され、甘いものを食べる習慣ができあがってしまい、つい食べすぎてしまうのです。
実際に対象比較実験では、人工甘味料を使っても結果的にカロリーの削減にはつながらないことが分かっています。
研究者が、加糖飲料と体重増加に関する17種類の研究報告を調べたところ、食品会社がスポンサーになっている研究の83.3%が「加糖飲料と体重の増加に関係がある」という結論をしていていませんでした。
反対に、利害関係のないところから資金を受けて行われた研究の83.3%では「加糖飲料と体重の増加には強い関係がある」とされています。
「食物繊維」を摂ろう
炭水化物(糖質+食物繊維)は、食べた方がいいのか悪いのか結局どっちなのでしょうか。
白い砂糖や白い小麦粉などの精製された炭水化物はインスリン値を最も上げる食べ物なので太りやすいと言えるが、すべての炭水化物が悪いということではありません。
グリセミック負荷(GI値)
GI値は、食品の炭水化物を50グラム取り出し、それが血糖に与える影響を計測します。それを基準となるグルコース(ブドウ糖)と比べた数字がGI値です。
つまり、GI値が高い食品は血糖値が上がりやすく、GI値の低い食品は血糖値が上がりにくいということです。
だが、通常のひとり分の分量には炭水化物が50グラムも含まれていないこともあります。
たとえば、すいかはGI値が高く72だが、炭水化物は重量のわずか5%しか含まれていません。すいかのほとんどは水です。すいかで50グラムの炭水化物を摂ろうと思ったら1キログラムも食べなくてはならないのです。
一方で、トルティーヤのGI値は52で、重量の48%が炭水化物です。トルティーヤを104グラム食べれば、50グラムの炭水化物を摂ることになります。これは、普通に食事で食べる量です。
このGI値の歪みを正したものが「グリセミック負荷」です。すいかのグリセミック負荷は「5」と低く、トルティーヤは「25」と高いです。
欧米の精製された食べ物は、GI値もグリセミック負荷もとても高いです。炭水化物は本来は太るものとではなく、加工されることによって有毒になるのです。
「精製」されると吸収が早い
炭水化物が精製されると純度が高くなり濃縮されるため、GI値が高くなります。脂質、食物繊維、たんぱく質が除去され、糖質は素早く消化・吸収されるようになります。
たとえば、小麦は昔は石臼で挽かれていたが、今はほとんど機械で製粉されているので、非常に細かく製粉され、今までの小麦よりずっと早く血中に吸収されます。そして血糖値を急上昇させ、インスリン値も急上昇します。
食べ過ぎやすい
精製された炭水化物は食べすぎやすいという点も「精製」がよくない理由のひとつです。たとえば、オレンジ5個ほどでつくれる1杯のオレンジジュースを飲むのは簡単だが、オレンジを5個食べるとしたらどうでしょうか。
食物繊維も含んだオレンジ5個を食べるのは簡単ではありません。その他の穀物や野菜にも同じことが言えます。精製されると凝縮され、食べやすくなります。
小麦粉の安全性
小麦は米やトウモロコシと並んで人類史上、初めて栽培された穀物です。しかし最近はグルテン過敏症や肥満が問題となり、小麦がよくないといわれています。
※「グルテン過敏症」とは小麦の成分に異常に免疫が反応する症状です。
1950年代に、人口増加と世界的な飢饉が再び起こるのではないかと懸念し高収量品種の小麦「矮小小麦(わいしょうこむぎ)」が生まれました。これは後にノーベル平和賞を受賞することになるノーマン・ボーローグが開発をしました。
今では、世界で生産されている約99%の小麦が矮小小麦あるいは、半矮小小麦です。その安全性は検証されていません。
矮小小麦(わいしょうこむぎ)
現在の矮小小麦と、50年前の小麦の栄養成分は別物です。穀物の収穫量は急増しましたが、微量栄養素は急激に減りました。
※「微量栄養素」とは、わずかながらも人間の体に必要とされるミネラルやビタミン類のこと。
石臼で挽くやり方から機械に代わって、ふすま、胚芽、油などが効率よく取り除かれ、その結果、純度の高い「でんぷん」が残りました。すると、ビタミン、たんぱく質、食物繊維、脂質のほとんどは外殻やふすまと共に取り除かれるようになりました。
そして小麦は細かい粉末になり、腸への吸収スピードがとても速く、グルコースの吸収率があがり、インスリンの影響が急速に増幅されます。
全粒粉や全粒穀物には胚芽やふすまが残っているが、細かく粉砕されているので、それでも腸への吸収スピードが速いという問題は同じです。
「食物繊維」とは
食物繊維とは、食品のなかの消化されない部分のことです。通常、炭水化物から糖質を引いたものになります。
食物繊維は「水溶性」と「不溶性」に分類されます。
「水溶性食物繊維」 | 豆、オート麦のふすま、アボカド、ベリー類など |
「不溶性食物繊維」 | 全粒粉、小麦胚芽、アマ、葉物野菜、ナッツ類など |
さらに「発酵性」と「非発酵性」に分類することができます。腸内細菌によって発酵された食物繊維は、短鎖脂肪酸の「酢酸」「酪酸」「プロピオン酸塩」に変えられ、エネルギー源として使われます。
これには、よいホルモン効果があり、肝臓からのグルコース放出を抑えることができます。つまり、インスリンの抑制につながります。
一般的に水溶性食物繊維は、不溶性食物繊維より発行しやすいと言われています。
「食物繊維」を食べると起きること
食物繊維は食べ物をおいしさを減少させ、結果的に食事量が減るとも言われています。
また、食べ物の嵩(かさ)をますのでエネルギー密度が低くなります。さらに、水溶性食物繊維は水を吸収してゲル状になり、さらに嵩が増すします。その効果でおなかが満たされ満腹感が増します。胃が膨張して、満腹であるという感覚信号が出されるということです。
食べ物の嵩が増すことによって空腹になるまでの時間がかかり、血糖値の上昇もインスリンの上昇も緩やかになります。
食物繊維を摂ると大腸からの排出量が増え、体に吸収されずに排出されるカロリーも増えます。ある研究では低食物繊維の食事をすると、カロリーの吸収率が8%上昇するという結果が出ました。
つまり、食物繊維を食べれば、食事量を抑えることができ、胃や小腸における吸収も緩やかになり、大腸を通って素早く排出される、ということです。
食物繊維を摂ると痩せやすい
10年にわったって行われた冠状動脈疾患進展への寄与に関する長期的観察研究で、食物繊維を多く摂取する人は太りにくいことが明らかになっています。
また、短期の研究でも、食物繊維により満腹感が増し、空腹感が減り、カロリー摂取量も減ることが分かっています。食物繊維のサプリメントに関するランダム化比較試験では、緩やかに体重が減少する効果があり、12か月以上で1.3~1.9キロ減ることが分かっています。
食物繊維は「栄養阻害物質」
食品から受ける恩恵として、ミネラルやビタミンなど体に栄養を与える成分のことを思い浮かべますが、食物繊維の大きな特徴は「栄養阻害物質」であることです。栄養を与えるのではなく、取り除く力も恩恵のひとつです。
実際にある研究で、2型糖尿病の患者が2つのグループに分けられ、濃度を一定にした流動食を与え、もうひとつのグループには食物繊維を加えた流動食が与えられました。
食物繊維を含んで食べていた方のグループの被験者は血糖値もピーク時のインスリン値も減少したという結果が出ています。
食物繊維は、与える栄養ではなく「解毒剤」のような働きがあります。精製されていない自然のままの植物性食物に食物繊維が含まれているのは、毒と一緒に解毒剤がセットになっているようなものかもしれません。
加工食品だと「食物繊維」が摂れない
何百年という間に、食物繊維の摂取量は減ってきました。旧石器時代の食事では、1日におよそ77~120グラム摂られていたと考えられていて、伝統的な食事で1日50グラム摂れると推測されています。
それに対して現在のアメリカの食事に含まれる食物繊維は1日わずか15グラムです。「健康な米国人のための食生活方針」では1日に25~39グラムの食物繊維を摂ることが推奨されています。
だが、食品に含まれる食物繊維を除去することは、加工食品において大切な要素です。舌触り、味、食べやすさなどを改善することが食品会社の利益に直結するからです。
「冷凍食品」の食物繊維
冷凍食品や加工品の食物繊維は、食感をよくし、おいしくするため精製される過程で取り除かれてしまいます。脂質は、時間が経つと腐るので賞味期限を長くするために取り除かれてしまいます。
わたしたちが食べる食品の多くは、食物繊維の解毒効果が取り除かれています。
食事からたんぱく質や脂質を除くと食べすぎにつながります。もともとたんぱく質や脂質に反応する満腹ホルモン(ペプチドYY、コレシストキニン)というものがあるためです。
つまり、炭水化物だけを食べていても満腹ホルモンが反応せず、「別腹」の食べ過ぎ減少につながります。
「病気の予防」になるのか
食物繊維を多く摂っても「がん」「心臓病」を減少させるという結果は得られませんでした。
1989年に行われた「Diet and Reinfarction Trial(食事と再梗塞試験)」では、初めて心臓発作を起こした2033人の男性を無作為に選び、3種類の異なる食事をしてもらいました。
すると、「低脂質ダイエット」も「食物繊維をたくさん摂る食事法」も特に効果はありませんでした。これに対して「高脂質な地中海食」は、数年前にアンセル・キーズ博士が睨んでいた通り、効果がありました。
近年行われた「PREDIMED」などの試験では、ナッツ類やオリーブ油などの天然油脂を摂取するのが効果的であるとの結果が出ています。脂肪をもっと摂ることは有益なのです。
「精製された炭水化物」が糖尿病のリスクが上がる
食物繊維がインスリン値の上昇を防いでくれるという研究結果があります。
- GI値の高い食事をしても、同時に穀物から食物繊維を多く摂った人は2型糖尿病に罹患しませんでした。
- GI値の低い食事で、食物繊維の摂取量も少なかった人も2型糖尿病に罹患しませんでした。
- GI値の高い食事で、食物繊維の摂取量は少ない人は、恐ろしいことに2型糖尿病のリスクが75%も上昇しました。
この恐ろしい組み合わせが何度もお伝えしてる「精製された炭水化物」なのです。加工することでGI値が上がり、食物繊維の含有量が減ります。
加工され化学物質が添加されることにより、食品は人間の体では処理できないようなかたちに変わってしまいます。
その他の研究
1977年に行われた大規模な男性医療従事者の疫学研究では、6年にわたって4万2759人の男性が調査されました。GI値の高い食事と食物繊維の少ない食事の組み合わせは、2型糖尿病の発症リスクが217%も高まりました。
黒人女性の健康研究でも、GI値の高い食事は2型糖尿病のリスクを23%上昇させることと関連があるとされました。一方で、食物繊維を多く摂取すると糖尿病のリスクが18%減少するとされました。
「お酢」も高インスリン対策になる
ワインは長い間放っておかれると酢(酢酸)になります。昔の人々は、この酢の用途が広いことにすぐに気づきました。
現在も酢は洗剤として使われていますし、抗生物質がまだ開発されていない時代には治療者は酢の抗菌作用を利用して傷を消毒していました。昔から酢は食品に漬け込んで保存するのに使われてきました。有名な話で、クレオパトラが真珠を溶かした酢を飲んでいたという説もあります。
薄めた酢は昔から「減量に効く薬」とされてきました。酢に浸した食べ物を食べたり、食前に摂ったり、寝る前に希釈して飲んだりする方法があります。
「小さじ2杯」で減量効果
酢の減量に対する有効性は、長期的な観察データは存在しません。だが、やや短期的な研究で、酢はインスリン抵抗性を減らすという結果が示されています。
高炭水化物の食事と一緒に「小さじ2杯の酢」を摂れば、血糖値を低くすることができ、インスリン値も34%低くすることができます。食事の5時間前に摂るより、食事の直前に摂る方が効果的だそうです。
「GI値」が下がる
酢飯は、白米よりもGI値が40%も低く、野菜のピクルスや納豆と一緒に食べると白米のGI値が低くなるそうです。生のきゅうりでなはく、酢漬けにしたきゅうりを一緒に食べると白米のGI値が35%も低くなります。
じゃがいもも、酢をまぜて冷やしたサラダにして食べると、そのままのじゃがいもよりGI値は43%減少、インスリン値も31%減少します。
「2型糖尿病の患者」にも効果あり
2型糖尿病疾患者が、寝る前に水で希釈したりんご酢を小さじ2杯飲んだところ、空腹時血糖値が下がりました。酢の摂取量が増えると満腹感が増すので1日に摂るカロリーが約200~275kcalほど減るという効果もあります。
これと同じ効果があるのが「ピーナッツ食品」です。おもしろいことにピーナッツも血糖反応を55%も削減します。
酢が、なぜこのような効果を発揮するのかは、実のところ良く分かっていません。唾液(アミラーゼ)を抑えることによって、でんぷん質の消化(=血糖の増加)を妨げるのではないかと考えられています。
「ドレッシング」で心血管疾患の低下
油と酢を使ったドレッシングは、心血管疾患の低下と関連があります。この効果は「αリノレン酸」と呼ばれる物質によるものとされています。
だが、ハーバード大学のフー博士は、マヨネーズにも同じくらいのαリノレン酸が含まれているが、心臓病への効果はないと思われる指摘をしました。これは恐らく使われる酢の量の違いだろうと考えられています。
ただし、酢を摂ったからといって急激な体重の減少は期待できないので、注意してください。減量には、とにかく「インスリン値を下げる」ことが重要です。なお、人工的に加工されたドレッシングの摂取はおすすめできません。
「たんぱく質」への期待過剰
人間の体内で合成できない栄養素は食事で摂る必要があります。オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸のどの「必須脂肪酸」、フェニルアラニン、バリン、トレオニンなどの「必須アミノ酸」などです。
しかし「必須炭水化物」や「必須糖分」というものは存在しません。生きていくための必要不可欠なものではありません。そんな中、高たんぱく質ダイエットは腎臓にダメージを与える可能性があるのでは?という懸念が多く寄せられていました。
だが、最近の行われたいくつかの研究で「高たんぱく質ダイエット」は腎臓の機能に目立った悪影響を及ぼすことはないと結論づけられています。
「高たんぱく質ダイエット」はあまり痩せない
精製された炭水化物を減らせば血糖値もインスリン値も下がります。しかし、血糖値とは無関係にどんな食べ物を食べてもインスリンの分泌は促されます。
1997年にスザンヌ・ホルトが考案した「インスリン分泌指数」は基準分量の食品を摂ったときのインスリン上昇値を測定するものです。
なんと、GI値とまったく異なる結果になり、精製された炭水化物だけでなくたんぱく質も同じくらいインスリン値を上昇させていることが分かりました。全般的には、血糖がインスリン反応の変化に寄与する割合はわずか23%で、インスリン反応のほとんど(77%)は、血糖とは関係がありません。
「高たんぱく質ダイエット」は、血糖値は上がらなくてもインスリン値を上げるので、ダイエット効果としては弱いのです。
「GI値食事法」の難点
インスリンは、血糖値に影響されるという仮定に基づいて、血糖反応だけをターゲットにした考え方がGI値の食事法です。
しかし、これでは血糖反応を低くすることができても、インスリン反応を低くできるとは限りません。インスリン反応を決める要因は、血糖の他に「インクレチン効果」と「頭相(とうそう)」です。
「インクレチン効果」
「インクレチン」は、インスリンの分泌を増加させるホルモンです。
インクレチンは、食べ物に反応して胃や小腸から分泌されます。脂肪、アミノ酸、グルコースはどれもインクレチンの分泌を促し、それよりもインスリン値も上昇することになります。
インクレチン反応は栄養成分が胃に到達すると数分のうちに起こり始め、約60分後にピークに達します。そして、インクレチンには、胃の内容物が小腸に届くのを遅らせて、グルコースの吸収を遅くする働きがあります。
グルコースを静脈に投与する場合は、胃を通過しないためインクレチンの効果は現れません。一方、グルコースを経口摂取したあとのインスリン分泌には、インクレチンの影響が50~70%関わっています。
「頭相」
頭相(とうそう)とは、視覚や聴覚、味覚によって反射的に起こる胃液の分泌です。これは、インスリンの分泌を促す経路です。口に食べ物が入ると、栄養素が胃に到達するはるか前から体が食べ物を受け入れる準備を始めます。
たとえば、スクロースやサッカリンの液体で口をすすいだだけでもインスリン値は上昇します。頭相の重要性はまだ良く分かっていないが、グルコースに関係なくインスリンの分泌を促す経路が複数存在するという重要な事実を浮かび上がらせています。
つまり、どんな食べ物を食べても太ります。しかしそれはカロリーが原因ではなく「インスリンの分泌効果を促す効果」によるものということです。
脂質は、インスリンの分泌を促す効果が最も弱いということも分かっています。
「牛乳」はインスリンを多く分泌する
乳製品のGI値は15~30と極めて低いが、インスリン分泌指数は90~98と極めて高いのが特徴です。
牛乳は「カゼイン」80%と「ホエイ」20%のふたつの乳たんぱく質が含まれています。チーズに含まれるのは、ほぼカゼインで、ホエイは、よくホエイプロテインとして親しまれています。
乳たんぱく質、特にホエイは、全粒粉のパンよりもインスリン値の上昇を促します。これは、インクレチンの働きによるところが大きいです。
ホエイプロテインを摂ると、インスリン誘導物質が298%も増えます。
「インクレチン・ホルモン」の効果
インクレチン・ホルモン「GLP-1」は、胃が内容物を排出するのを遅らせる作用があります。すると、栄養素が吸収されるスピードも遅くなり、結果的に血糖値をとインスリン値を低くすることができます。
さらに、この効果により「お腹いっぱい」であるという満腹の感覚も生み出されます。
2010年に行われた研究で「卵」「七面鳥」「マグロ」「ホエイプロテイン」の4つのたんぱく質を摂取した4時間後に、ホエイプロテインを摂ったグループが1番ブッフェ形式の食事を食べる量が少なかったという結果が出ています。
インスリン値が上がり「お腹いっぱい」だったのです。インクレチン・ホルモンは、インスリンの分泌量の増加を招き体重増加につながるが、満腹感が増すので食欲が抑制されるという、反対の効果を生むことになります。
乳製品と低脂肪牛乳
スウェーデン・マンモグラフィ・コホート研究で、乳製品は体重増加の予防になることがわかっています。特に、全乳、酪乳(乳製品)、チーズ、バターなどは体重の減少に関連があります。
ただし「低脂肪牛乳」では体重減少の関連がありませんでした。
10年にわたって行われた若年者の冠状動脈に関するコホート研究では、乳製品を多く摂取することと、肥満や2型糖尿病への罹患率が低いことには関連性があると確認されています。
「肉」と体重増加
1992年にヨーロッパで行われた、がんと栄養に関する大規模なコホート研究は、10か国から52万1448人のボランティアを募って行われました。
5年にわたる追跡調査の結果、赤肉、鶏肉、加工肉などの肉全般は、総カロリー摂取量を調整しても体重増加と深い関わりがあることがわかりました。
北米のデータによると加工された赤肉、加工されていない赤肉の両方とも体重増加に関係があり、毎日肉を余分に摂取すると約400グラム体重が増加しました。体重増加には、いくつかの要因があります。
- ほとんどの牛が「穀物」で飼育されている。本来の草を食べてきたころの牛とは肉質が変わっているかもしれない。
- 飼育場で育てられる牛には「抗生物質」が多量投与される。
- 内臓以外の食用部位のみを食べすぎていて、たんぱく質を多く摂っている。(内臓肉は脂質が多い)
「肉」と「乳製品」の違い
お肉をたくさん食べるのは簡単だが、同じ量の乳製品を摂るのは難しいです。ステーキやローストチキンをたくさん食べられても、牛乳を何リットルも飲んだり、ヨーグルトを何箱も食べるのは難しいですよね。
なので乳製品は、インスリンの分泌を促すとしてもコップ1杯の牛乳くらいの少量であれば、たいした影響力はないのです。
ダイエットのために炭水化物を控えて、脂肪分の少ない肉や加工された肉を摂るのは減量には効果が薄い戦法です。結局は、インスリンの分泌を促すことになっていたのです。
太らない食べ方
最終的にとてもシンプルな話になりますが下記の2つがポイントです。
- 「おなかが空いたときだけ」食べるようにする
- 加工されていない「自然な食べもの」を選ぶ
また、乳製品は体重の増加とは関連性がないので、たくさんたべても大丈夫です。本質的には悪い食べ物など存在しません。悪いのは「加工された食品」です。本物の食べ物から遠ざかれば遠ざかるほど危険度が増します。
たとえば、プロテインバー、シェイク、加工肉、加工された脂肪、加工された炭水化物、これらは食べるべきではありません。
とはいえ、全ての加工品を避けた食生活をすることは現実的ではありません。できるところから気を付けてみるのが良いでしょう。本記事の後編で、現実的な対策を提案していきますね。
「いい脂肪」なら痩せて健康的になる
いい脂肪も悪い脂肪も分類上は「脂肪」です。たとえば、同じ脂質でもトランス脂肪酸の入ったマーガリンと、アボカドでは、成分が全然違います。マーガリンは「食べられるプラスチック」とも呼ばれています。
植物性油脂に含まれる「オメガ6脂肪酸」は多価不飽和脂肪酸と呼ばれる物質の中まであり、炎症物質に変換されます。多く摂取すると、心血管疾患が悪化する可能性があります。
一方、「オメガ3脂肪酸」は、主に抗炎症性の多価不飽和脂肪酸の仲間で、アマ、くるみ、サーディン、サーモンなどの脂ののった魚に多く含まれます。
オメガ3脂肪酸は、血栓症を減らし心疾患の予防になると考えられています。
「植物油脂」が健康という勘違い
1869年にバターの代わりになる安価なものとしてマーガリンが登場しました。当初は牛脂とスキムミルク(無脂肪乳)から作られ、黄色く着色されました。
健康と言われた「トランス脂肪酸」をたっぷりと含んだマーガリンは人間の命を脅かすものでした。
「コレステロール」は悪くない
血中のコレステロールの80%は肝臓で合成されていて、20%は食事から摂取されています。コレステロールは有害なものだとされていますが、体中の細胞を覆う細胞膜の主な構成要素です。
脳を除くすべての体内細胞が細胞膜を形成するのにとても重要なことで、食事に含まれるコレステロールを削減すると、体はコレステロールを肝臓で合成するようになります。
どんなに注意深く研究を進めても食品に含まれる脂質と血中のコレステロールにが関係が認められませんでした。
悪い脂肪「トランス脂肪酸」
飽和脂肪酸は、化学的に安定している物質です。一方、多価不飽和脂肪酸は水素が欠けているため、化学的に不安定で、腐りやすく賞味期限が短いです。
それを解決するために人工的な「トランス脂肪酸」がつくられました。特徴は、安くて、製造業者の多くは動物のえさに使われなかった大豆を加工して植物油をつくっています。
少しの水素と化学の力で、トランス脂肪酸がつくれます。トランス脂肪酸が心疾患で何百人という人の命を奪っていたと分かったのは何年も後のことでした。
「トランス脂肪酸」の危険性
1990年、オランダの研究者が、トランス脂肪酸を摂取すると体に悪いLDLコレステロールが増え、体にいいHDLコレステロールが減ることに気づいてから、トランス脂肪酸の終わりとなっていきました。
さらなる研究でトランス脂肪酸の摂取量を2%増やすと、心疾患のリスクがなんと23倍も上がることがわかりました。恐ろしいです。
その後、2000年になる頃には、消費者のほとんどがトランス脂肪酸を避けるようになり、デンマーク、スイス、アイスランドではトランス脂肪酸の摂取が禁じられました。
脳卒中の予防には「動物性脂肪」
トランス脂肪酸の認識が正しくなると、脂質を多く摂っても健康に害はないという研究結果が示されるようになりました。
トランス脂肪酸の影響がを除外すると脂質の摂取量は冠状動脈性疾患のリスクとそれほど関係がないと結論づけられています。食品にふくまれるコレステロールも安全だとされました。
飽和脂肪酸は、わずかながら脳卒中の予防効果があることが分かっています。一方で、マーガリンの消費は心臓発作との関りが深いことが分かっています。ちなみに、バターを消費しても心臓発作にはあまり関係がないことが示されています。
「低脂肪乳」より全乳の方が痩せる
全米コレステロール教育プログラムでも、摂取カロリーの量に関わらず、食事に含まれる脂肪の割合と体重増加には関連性があるという証拠はないと認められています。
高脂肪の乳製品に関する包括的レビューでも、肥満との関係性は見られず、全乳、サワークリーム、チーズは、低脂肪の乳製品よりも有益であると分かっています。
脂質と一緒に他の食品を摂るとグルコースの量が減り、インスリンの分泌を防いでくれます。乳製品に含まれる脂肪分は肥満を予防する働きが期待できます。
さいごに
どのように太らないカラダにしていくかの具体的な内容は、後編でご覧ください。